第149話 正直に話した方がいいんじゃないかな?
『未確認生物X報告書』より抜粋
未確認生物(以降Xと呼称)は大陸南西の海中から、出現。
直立二足歩行型の巨大なドラゴン種と判明。
全長は五十メートル余り。
全身を覆うのは硬質の鱗ではない。
腐り落ちていく黒い肉塊に覆われたな奇妙な姿である。
海を黒く染めながら、進行は止まらず。
操業中のバノジェ船籍の漁船がこれに遭遇。
Xの口から放たれた謎の光により、漁船は大破沈没。
死亡九人、重傷一人。
重傷の生存者は精神に異常をきたすも貴重な情報を入手することに成功。
Xは南西海岸に上陸。
当地の竜ズメウ兄弟がこれを迎撃するも全滅。
侵攻方向は以前、東で変わらず。
知能が高いと判断出来る動きは見られない。
以降、このXを黒蝕竜ギータと認定する。
🐉 🐉 🐉
レオが後ろから抱き締めてくれるので安心出来るのはいいですけど、手がちょっと……手つきが執拗ですのよ?
気になって仕方がないのですけど、今はいけません。
集中! 集中ですわ!
「我、冥府の女王の名において命ずる。其は一つなり。汝が命は一つなり」
ニールに鉤爪を与えた時だったかしら?
それとも棘かしら?
翼かもしれないですわね。
記憶が
そして、気付きました。
レオのオイタが過ぎて、集中が途切れたのでちょっと魔力を込め過ぎたかも……。
「あっ!?」
「どうしたの?」
「レオも急いで転移を展開して」
「え!? あ、うん」
それだけなら、問題はありません。
ところがその球体は急激に大きくなっていき、勢いが止まりそうにないのです。
まるで成長でもするようにどんどんと大きく、巨大になっていき……このままでは地下施設が壊れますわ。
お祖父さま達がおられたら、すぐに対処してくれたのでしょうけど、この場で転移が使えるのは私とレオだけ。
🐉 🐉 🐉
「何とか、なりましたのね」
「そうみたいだね」
アルフィン湖の上空でさらに眩いばかりの金色の光を放ちながら、周囲に稲妻を纏い始めた球体を見て、ほっと胸を撫で下ろしました。
あと数秒、遅かったら地下施設の天井と壁が破壊され、かなりの被害が出ていたことでしょう。
「ねえ、リーナ。まさか、またやりすぎた?」
「な、なんのことですの? 私には何のことやら、分かりませんけど」
慌てて羽根扇を取り出し、口許を隠します。
淑女としての嗜みですけど、遅かったみたい。
真後ろにレオがいて、抱き締められたままとは思ってなかったんですもの。
「正直に話した方がいいんじゃないかな?」
レオの手は私が倒れないように支えてくれているだけ……
では絶対にないですわ。
違う目的というよりはそちらが本命だったみたい。
胸にかけられていた彼の手が下から、上へと押し上げるように揉みしだいてきます。
人目がなくて、二人きりなのをいいことに大胆ですこと。
服の上からなのに胸の頂の蕾を器用に探し出し、捏ねるように摘まんでくるんですもの。
よく知ってますのね?
どこが弱いか、どうすれば、落ちるのかも知ってますもの。
「ふぁっ……あんっ、言いますからぁ」
抵抗するだけ、無駄なので素直に従いますわ。
声が甘ったるくなってしまうのは仕方がありません。
不可抗力というものであって、決して気持ちがよかった訳では……
「それも嘘言っちゃ駄目だよ?」
レオはそう言うと蕾を摘まんでいた手に力を込めてきました。
それ、ダメなやつですわ!?
「あぁっ、やぁ」
「じゃあ、正直に言っとこうか」
もう返事を返す余裕すら、ありません。
昨夜の情事が激しくて立てなかったのとは別の理由でさらに立てなくなりました。
レオって、そういう責め方に慣れていたかしら?
快感で回らない頭で必死に考えますけれど、何も思いつきませんわ。
「
「あれって、大した問題じゃないのかな?」
レオにされるがままで気持ちいいのでこのまま、流されてもいいかしら?
ドレスも乱れてしまいましたし、お外で愛されるのも悪くないですし……
「ふぇ?」
そのようなことを考えながら、空を見上げると大きなドラゴンがその雄々しい翼を広げ、滞空していたのです。
その鱗はまるで太陽の光のように黄金色の輝きを放ち、飛竜と似た形状の前腕と同化した翼が太陽の光を妨げようとするくらいに大きなものでした。
レオに従う竜キリムに似たところがあるかしら?
違うのは首の数が三つである点ですわ。
それぞれに備わった瞳の色が緑、青、赤と異なっており、角の数が多い点も違いますわね。
それにキリムは単眼でしたもの。
「アウラールですのよね、あれ?」
「光輝竜って、ところじゃない? 残念だけどオアズケかな」
「え? ええ、はい……」
レオの熱情の籠った手が止まって、残念……ではなく!
私達も準備をしないといけませんわ。
ギータを迎え撃たないといけませんもの!
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