第148話 それこそ、蟹にしか見えない
昨日の夕食は危うく、レオの精だけで終わるところでした。
最悪、それでも耐えられますけど、私は
さすがに毎日は無理ですわ。
身体を動かすエネルギーとしては十分なのですけど、やや味気ありませんし……。
それに育ちざかりのレオが食べないままというのが良くありませんもの。
幸いなことにアンが夕食の残り物を夜食にアレンジして、持ってきてくれたので助かりました。
『これくらいのしか、出来なかったんですけどぉ』と言いながら、出してくれたのはおむすびだったのです。
余ったライスを握って、夕食のメインディッシュだったハンバーグやオードブルのスモークサーモンとオニオンスライスの和え物が具として入っています。
その為、現代の日本を彷彿とさせる和風な食事でありながら、食べ進めると違った食感が楽しめるのです。
これはもしかしたら、商品として売り出せるのではないかと考え、アンにそれとなく振ってみたのですけども、『え? あっ……でも、あたし、その』となぜか、煮え切らない態度で目が泳いでましたから、普段の業務が忙しくて、無理なのかしら?
🤖 🤖 🤖
「トリトンはもう修理が終わりそうですのね?」
「そうだね。損傷個所がはっきりしていたし、単純な物だからだってさ。歩行もバランサーを見直したから、今度は大丈夫だと思うんだ」
研究施設で技術者の最終チェックを受けているトリトンはライトグレーを基調とした塗装が施されました。
赤系統の塗装を施す予定もあったのです。
ところが技術者の方々から、『それこそ、蟹にしか見えない』という声が出たようでライトグレーに変更されました。
ややずんぐりむっくりな体型と鋏を思わせる腕部の形状がそう思わせてしまうのでしょう。
オデュッセウスとペネロペは未だ、フレームが剥き出しの状態で未調整です。
件のドラゴンに対するには間に合わないでしょう。
駆逐戦車もパトラさまの試験走行で思わぬ欠陥が露呈しましたし、防衛に出せるのはある程度の量産に成功した自走砲になりそうですわね。
「それで
「それなんだけどさ。うーん、見つかったことは見つかったんだよね。ただ……」
「ただ? どうしましたの? 何か、問題でもありましたの?」
「男の子なんだ」
「へ?」
アースガルドには精霊の落とし子と呼ばれる四種族がいます。
大地のグノーメ、水のアンダイン、風のシルフィード、火のサラマンドル。
彼らは四元素と呼ばれる地水風火の精霊の影響を強く受けており、それぞれ特徴的な容姿と習俗を有していることで知られているのです。
アンダインは女性しか生まれないとされる水の加護を受ける種族。
海を思わせる青系統の髪色と美しい容貌でも有名で……おかしいですわね、男の子?
生まれないはずとされていただけで実は低確率で生まれるのかしら?
「そ、それよりさ、リーナ。アレをどうにかすべきじゃないかな?」
「誤魔化そうとはしてませんよね?」
「し、してないよ。さあ、行こうか」
行こうも何も横抱きに抱えられているので、拒否権がないのですけど?
文句を言う代わりにちょっと上目遣いで睨みつける方が効果あるということを学習した私です。
レオは微妙に目を逸らしましたが、頬が色付いたので多少なりとも効いているみたい。
効果がバツグンではないかもしれませんけど。
🐉 🐉 🐉
研究施設の一角ではお祖父さまと爺やによって持ち込まれた三体のモノが医療班の手によって、延命措置を受けています。
レオの言っていたアレとはこの子達のことかしら?
「リーナなら、どうにか出来るんじゃない?」
「このままでは無理かもしれませんわ」
命の炎が消えかけているんですもの。
これでは三人とも助からないでしょう。
皆を助けようとするのなら、手段は一つしかありませんけど……。
「
「それ、大丈夫なヤツ?」
「さぁ?」
命そのものを
出来るかも分かりませんし、命そのものを融合させることが倫理的に許されるのかしら?
でも、この子達を助けるにはそれしか、ないですわ。
「やらないで後悔するよりはやるだけ、やってみますわ」
「そうだね。僕に出来ることは?」
「まともに立てませんので」
「あ……うん、分かったよ」
支えられるというよりは抱き締められてますわ。
後ろから、力強くギュッと抱き締められると胸の鼓動が勝手に早くなって、困ります。
無意識でわざとではないのでしょうけど、自己主張の激しいのがアタッているのも気になりますわね……。
『これでは動けませんわ』と
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