第4章 麗しのアルフィン

第125話 夜のは激しいけど運動じゃないですからねっ!

 オルレーヌ王国を騒がせた大事件が収束してから、一ヶ月くらいかしら?

 間もなく、リントヴルムの月ですから、私は十八歳になれるのです。

 長かったですわ。

 今まではいつも十八歳になる前に何らかの理由で死んでいました。

 病死なら、まだいい方です。

 色々な死に方、殺され方を経験したので感覚がやや麻痺してますもの。

 でも、今回は無事に誕生日を迎えられそうですわね。


 勿論、まだ油断は出来ませんから、打てる手は打っておきますけど。

 まず、アルフィンとオルレーヌの城にお祖父さまと爺や主導のもと、大規模な転移門を設置しました。

 有事の際の協力体制を考えた強固な盟約というのは表向きの理由ですわ。

 折角、有効利用が出来る物を捨て置くなんて、勿体ないと思いますの。

 ニールにも手伝ってもらい、回収したアレらの残骸と破片を転移門を使って、アルフィンに運び込みました。

 ええ、有効に使わせていただきますわ。

 基本的な構造は理解出来ましたし、アルフィンには優秀な人材が揃ってますもの。

 問題なく、実現可能な計画ですし、必要な受容者レシピエントも確保の目処が立っていますし、いけますわね。


 アレらの構造はドラゴンの骨や部位が基本の骨格フレーム

 動力にはその魂を素にした魔石が使われているのです。

 だから、竜の血を引く者の命令しか聞かないという特徴が厄介な点ですわ。

 ただ、他に突破方法がない訳ではありません。

 力で抑えられる存在であれば、従えられるのです。

 竜には強い力を持つ者に従うという抗いがたい本能があります。

 それを利用するだけなのです。

 その点では私とレオは言うまでもありませんでしょう?

 ニールでも可能ですし、アルフィンにその手の人材は事欠きませんもの。

 でも、完全修復にはまだまだ、時間がかかりそうですわ。

 その日が楽しみですわね。


 そのようなことを考えながら、ベッドに横になって、お気に入りの本を読んでいます。

 ふふっ、優雅に過ごせるのって幸せですわ。

 晴れて領主代行という面倒な立場から、解放されたんですもの。

 正式なアルフィン領主は辺境伯に任じられたレオであって、私はその婚約者に過ぎません。

 従いまして、公務を執る必要もなく、怠惰に過ごせ……


「でも、何もないのって、それはそれでつまらないですわね」

「お嬢さま、そう思うなら、少しは外に出ましょう」

「……明日ね。明日、出かけますわ」

「それ、昨日も言ってましたよね?」


 アンはそう言いながら、私が読もうとベッドの上に広げておいた本を片付けていきます。

 その本は次に読もうと思っていましたのに!


「運動はしているから、平気ですのよ?」

「お嬢さまが言ってる運動って、違いますよ! 夜のは激しいけど運動じゃないですからねっ! ちゃんと日の光を浴びてくださいよ」


 激しいのをどうして、知ってますの!?

 あっ……ええ、そうよね。

 朝、ベッドから出られないくらい、ぐったりしているのを知ってますものね。

 あれでバレていないと思っていた私が迂闊でしたわ。


「太陽の光で灼けるから、嫌ですわ」

「灼けませんって! お嬢さまは吸血鬼じゃないんですよ!?」

「似たようなものでしょ?」


 そんなやり取りをアンと交わしてますとドアが勢いよく開けられました。

 この開け方はレオでしょう?

 折角、怠惰な昼下がりを満喫しておりましたのに。


「リーナ! 僕だけじゃ、無理」

「きゃっ」

「お嬢さま、いってらっしゃいませ!」


 一直線に向かってきたレオに抱き抱えられて、そのまま執務室へと連れていかれました。

 アンったら、こういう時はレオの味方をするなんて!


「はい、あ~ん」


 書類と睨めっこしているレオの口にローストビーフのサンドウィッチを突っ込むだけの簡単な仕事ですわ。

 ただ、レオの膝の上に乗せられているのが問題ですわね。

 周囲からの視線がちょっと痛いのです。

 これは私の気のせいに過ぎないかもしれませんけど。

 自意識過剰な訳ではないと思いますのよ?


 でも、現在、執務室にいるのはレオだけ。

 視線は気にならない環境ですわね。

 つまり二人きりなのですから。

 何の問題もな……大ありですわ!

 レオを止める人が誰もいないんですもの!


「あむあむ。うーん、リーナの愛が足りないよ」


 レオって、たまにこうなるのよね。

 仕方ないのでサンドウィッチを一口、口に含んでから、彼の首に腕を回します。

 口付けを交わして、口移しで栄養補給しないといけませんの。


「ちゅっ……んっ」


 口移しでレオにサンドウィッチをあげる。

 これだけで済めば、特に問題がないのですけど……。

 いつしか、舌を絡め合って、互いの唾液を交換し始めてしまう自分が怖いですわ。

 こうなったら、もう止められませんもの。


 気付いたら、もう服を脱がされてますし!

 最初から、このつもりで連れてこられたのではと思いますでしょう?

 でも、意外なことに違いますわ。

 思い付いたら、すぐ動く。

 正しいレオですわね。

 そんなことを考えている間に机の上で組み敷かれて、ちょっと背中痛いですわ。

 あっという間に下着まで……。

 相変わらずどころか、どんどん手際が良くなっていて、怖いですわ。


 🦁 🦁 🦁


 えっと、おかしいですわ。

 執務室に連れて来られたのは太陽がまだ、真上にあった頃。

 ランチタイムに差し掛かろうとしていた時間だったはず。

 部屋に射し込むオレンジ色の光に部屋がきれいな夕焼け色に染められてますけど。

 レオは昼から、頑張り過ぎですわ。

 もうお腹いっぱいですもの……なんて、照れている場合ではありません。

 だって、さすがにレオもちょっと疲れているんですもの。

 彼は椅子に腰かけていて、今は私が上なのです!

 見られたら、私から無理矢理求めているって勘違いされますわ。


「レオ、もうそろそろ……あんっ。やぁ、だからぁ」

「リーナがかわいいから、まだいいよね?」

「ふぇっ!? まだ」

「うん、まだまだ!」


 前言撤回ですわ……全く、疲れてませんわ。

 また、レオのレオが元気になってますもの。


 結局、晩餐間際までレオに愛され続けました。

 お風呂できれいにしないと人前に出られない姿だったので二人で……そう二人で向かったのも間違でしたわ!

 晩餐に遅れたのは言うまでもありません。

 見えるところまであちこちにレオの痕があって、バレバレなのでした。

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