第113話 これで終わりにするよ、ヤマト

「思ったよりも期待外れだね」


 レオは大司教ビショップが苦し紛れに放ってくる光条を軽々と避けると無防備になったその胴体を蹴上げます。

 バラバラと破片を撒き散らしながら、浮き上がった身体を先回りして、両拳をその背に叩きつけました。

 あれは痛いですわね。

 原形を留めているだけ、凄いとも言えますし。

 大地に叩きつけられ、ほぼ半壊状態と化した大司教ビショップの姿を興味を失った玩具でも見るような冷めた目で見てますわ。


「ではもう終わらせますの?」

「その方がいいかな。アレ、再生能力だけは一級品みたいだし」


 レオの言う通り、大司教ビショップの再生能力は尋常の物ではないみたい。

 切断された部分はさすがに直らないようですけど、穿たれた胴はもうほぼ塞がっていますし、あれだけボロボロの状態でも立ち上がれるのは驚異的な性能と言えますわ。


「ではアダマスの大鎌サイズ・オブ・アダマスを使ってみます?」

「大丈夫かな?」

「レオが手加減してくださいな」

「そこはリーナが手加減するところだよ?」


 そんな会話をしながらも指を絡め合って、キスが出来ないもどかしさを解消しています。

 本当はもっとしたいのですけど、神経回路でフリアエと繋がっていますから、ある程度、動きが制限される以上、仕方ないですわ。


「「え?」」


 私とレオが指だけでやりとりして、見つめ合っているとガラガラとけたたましい音を立て、大司教ビショップの身体が崩壊していくではありませんか。

 どうやら、注いだ毒が回り切ったようですわ。

 それに加えて、レオが力いっぱい、殴ったり、蹴ったりしましたもの。

 活動限界を迎えただけなんて、すっきりしない幕切れですわね。


「帰りましょうか……」

「そうだね。帰ってから、続きね」


 さっきまで二人であんなに盛り上がっていたのに許せませんわね。

 今度、会ったら容赦なく、消し去ることにしましょう。


 🤖 🤖 🤖


 ヤマトの背中から伸びる翼は四枚。

 鳥の羽を模したような意匠が全体に施され、全身を覆える大きな主翼と尾羽のような形状をした副翼二枚の二対で構成されている。

 その翼を広げ、大きく羽ばたかせるとヤマトが大空へと舞い上がっていく。

 陽光を一身に受け、煌めく白き巨人はあっという間に雲の上に到達していた。


「は、速い……でも、これならいけそう。行くよ、ヤマト」


 雲の隙間から、敵影を捉えるとヤマトは身体を一回転させ、翼を優雅に羽ばたかせながら、一気にその間合いを詰める。

 上空から勢いを付け、一息に放たれたムラクモの強烈な突きはずんぐりとした大司教ビショップの肩口を捉え、右腕を完全に破壊している。

 さらに擦れ違いざまにムラクモを一閃させ、背を切り裂くと再び、翼を羽ばたかせて、空へと離脱していく。

 大司教ビショップは何とか、動きを捉えようとするが上空から舞い降りては腕や足を壊し、高速で離脱するヤマトに翻弄されるがままで見るも無残な姿になっていった。


「これで終わりにするよ、ヤマト」


 陽光を再び、身体に受けたヤマトは全身を煌めかせながら、翼を羽ばたかせると左のハヤトを前面に押し出し、一気に大司教ビショップとの間合いを詰めていく。

 そして、接敵するや否や思い切り、ハヤトを叩きつける。

 凄まじい衝撃音とともに光を伴った衝撃波が発生した。


終の誅罰ファイナル・パニッシュメント!」


 大司教ビショップに密着したハヤトの表面に描かれている奇妙な紋様から、七色の光条が凄まじい光の奔流として放出される。

 高濃度のエネルギーを破壊力として、まともに浴びた大司教ビショップは跡形もなく消し飛んでいった。


「終わった……疲れた…………よ」


 大きく広げられていた美しい四枚の翼が急に力を失ったかのように動かなくなり、ヤマトの身体は大地に向けて、落下していくのだった。

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