第107話 何だか、嫌な予感がしますわ
全身を襲う筋肉痛の痛みも回復魔法で治せるので問題ありません。
気付かなかったのもありますけど、レオが優しく介抱してくれますから、そこに甘えていたのかもしれません。
ですから、肉体的には心配いらなかったのですけど、問題が一つだけ。
寝不足ですわ。
こればかりは魔法でどうにか出来……ない訳でもないのだけど。
本当は出来ますのよ?
でも、疲労を無理矢理、抑えるのは間違っている気がしますの。
レオも同じ時間しか、寝られていないのに元気なんですもの。
体力の差なのかしら?
「まずはこっちから、調べる?」
「そうですわね。近接の武器ですし、レオにお任せしますわ」
今日は神殿から、回収した武装のテストを行う予定なのです。
フリアエの性能を測るべく、動かさないといけません。
敵と相対するにはまず、己を知るべきですもの。
手始めにテストするのは大鎌の形状をした
ケラウノスランサーは使うのにかなりの魔力を削られそうなのですけど、アダマスにはそういう要素がないように感じられます。
「それじゃ、行くよ」
「はい、問題ないですわ。遠慮なく、どうぞ」
フリアエが六枚の翼を羽ばたかせ、天を目指すかのように空高く、上がっていきます。
飛行している際は羽ばたかせていないのでこの羽ばたきは単なるポーズなのかしら?
レオは『その方がかっこいいからだよ』と力説していましたから、そういうことなのでしょう。
ロマンですわね。
それにしてもかなりの高速で飛行してもそれをまるで感じません。
どういう構造しているのかしら?
「じゃ、あの丘が丁度いいかな」
レオはそう言うと雲が間近に見える高度から、一気に眼下に見える丘陵へとフリアエを寄せていきます。
こんな動きをしたら、気持ち悪くなりそうなのですけれど……なりませんわね。
本当、不思議ですわ。
擦れ違いざまにフリアエがアダマスを振り抜くと耳をつんざくような轟音とともに丘が真っ二つに切り裂かれ、きれいな断面が顔を覗かせていました。
まるでケーキを切ったみたいですわ。
「は?」
「ええ?」
ちょっとだけ魔力を流しましたけど、あくまでちょっとですのよ?
地割れが怒るほどの破壊力って、どうなってますの。
うっかり、振るうと危ない武器ですわね。
「危ないね、これ」
「使いどころに困りますわね」
レオと顔を見合わせ、苦笑せざるを得ませんわ。
私が魔力を流したのが原因かしら?
違うと思うのですが確証はありません。
本当に私が原因だったら、どうしましょう。
「このケラウノスランサーっていうのは大丈夫だよね?」
「さぁ、どうかしら? 比較的、安牌と思われたアダマスがこれですのよ? 本当に大丈夫かしら?」
ちょっと魔力を流しただけであの威力が出たのなら、ケラウノスランサーはもっと危ないと言えますわ。
原理によれば、
本当に大丈夫なのかしら?
嫌な予感がするのですけど。
「でもさ、本番で使って、想定外のことが起こるより、今のうちに不安な点を解消した方がいいと思わない?」
「それはそうなのですけど。何だか、嫌な予感がしますわ」
「リーナの予感って、悪い方で当たるよね?」
そう言われてみるとその通りだったりしますから、ぐうの音も出ません。
でも、私の嫌な予感って、ほぼレオ絡みで夜の話じゃないかしら?
あまり、役に立つ予感ではない気がしてきましたわ。
「
「え……それ、大丈夫かな?」
「大丈夫ですわ。手加減しておりますもの」
「分かった。それじゃ、撃つよ」
いつも朗らかなレオが心無し緊張しているなんて、中々見られるものではありません。
つい記憶に留めておきたくて、見つめ過ぎてしまって。
彼と視線が交差すると途端に恥ずかしくなってしまうのはなぜかしら。
「コホン。はい。では
背中から展開されていた六枚の翼が抜け落ち、地表へと落ちていきますがフリアエには何の影響もありません。
別の翼が既に展開されているからです。
身体を覆い尽くせるほどの大きな翼は光り輝く粒子で構成された光の翼とでも言うべきもの。
フリアエはケラウノスランサーを両手で構えるとその先端から、白く輝く閃光が迸り、眼下に見える小高い丘陵地に向かっていきます。
「あら……思ったよりも」
「やばそうだね」
「えぇ……」
やってしまったかもしれません。
でも、レオの雷魔法も破壊力は高いですし。
ちょっと凍り付いたくらいで済んでいれば、いいですわね。
甘かったですわ。
私の判断がいかに誤っていたかと思い知るのはそれから、少し先のことでした。
🦊 🦊 🦊
その日、突如としてオルレーヌ王国の東部に広がる亜熱帯森林地帯の一部が氷に閉ざされ、年間平均気温0度の冷涼な気候に支配された極寒の地に変化した。
専門家はこの急激な気候変化は天変地異の前触れであると警鐘を鳴らすのであった。
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