第106話 俺達は戦っちゃいけない

 昨日はそれはもう、とても激しくて。

 何がどう激しかったのかを口にすることは出来ませんけど。

 思い出すだけでも顔が火照って、熱くなってきますし、今日一日、ちゃんと立っていられるのかも怪しいくらい、足腰にきてますの。

 幸いなことにどうにか、普通に動くのに支障がないようですわ。


 そこでまだ完全に損傷の修復が終わっていないヤマトとク・ホリンは軽く調整を行い、私とレオはフリアエで再び、地下の神殿に赴くことに決めました。

 地上ではターニャによるヤマト第二形態の調整とエルのク・ホリン起動実験を行い、地下では私とレオによる探索を行うのです。

 フリアエを操るくらいでしたら、足腰にそう負担がかかりりませんもの。


「レオ、別に手を握っていないくても平気ですわ」

「リーナは嫌なの? 僕はずっと、こうしていたいんだけどなぁ」


 そう言って、しゅんとするレオの様子がまるで耳と尻尾が垂れ下がって落ち込んでいる仔犬みたいに見えますわ。

 錯覚かしら?

 あまりにかわいいが過ぎるので指を絡め合って、繋いでいる手にちょっと力を入れてみました。

 それで彼は分かってくれたみたいで途端に満面の笑みを浮かべているところは単純……いえ、とても素直ですわね。


「まだ、ここに何か、あるってことかな?」

「ええ。この建物、装いこそ神殿のようですけれど、実際には何らかの研究施設であったと考えた方がしっくりくると思いますの。あの計画で廃棄されたり、凍結された物がどこへ消えたのか。恐らく、この神殿こそがその終着点ではないかと思いますのよ?」

「ふぅーん、何か、いい物があるといいなぁ」


 レオの考える『いい物』が良く分かりませんけど、フリアエ専用に開発されたケラウノスランサーなる武装が保管されていると思いますの。

 他にも魔動騎士アルケインナイトの装備として、開発されていたものの途中で凍結された物がそのまま放置され、消えたことになっていますから、あるのではないかしら?


「それにしても巨大な建物だよね。フリアエで楽々、中を行き来出来るってすごいよ」

「レオ、あれは?」

「ああ。あれが正解ぽいね」


 そこには頑丈そうな金属で組まれた台座に安置された巨大なライフルらしき物体がありました。

 え? ライフルをなぜ、知っているかですって?

 前世はほぼ病院生活とはいえ、あちらの世界で生きていたんですもの。

 銃火器の存在くらい、実物を見たことがなくても知ってますわ。

 ええ、そうなのです。

 こちらの世界にそういった兵器はございませんの。

 短銃も長銃も存在しませんから、手持ちの携帯出来る投擲武器といえば、小型のクロスボウか、投石器が一般的かしら?

 つまり、このライフルもどきを考えたのは間違いなく、ライラの仕業ですわ。


 🦊 🦊 🦊


 地下神殿で回収出来たのはライフル型の特殊兵装ケラウノスランサーと大鎌の形をした特殊兵装サイズ・オブ・アダマス。

 それに大型盾の形状をした汎用兵装ハヤトでした。

 ケラウノスとアダマスはフリアエの専用武装と見て、間違いありませんわね。

 それというのもサイズがフリアエと同じなのでヤマトやク・ホリンでは使えませんもの。

 彼らが使えそうなのはハヤトかしら?

 開発段階では防御ではある程度の高い評価を得ていたようなのだけど、求められた性能はそれを上回るものだったみたい。

 攻撃にも転じられる仕込みの武装を内蔵しながら、防御性能までも追求するなんて、無茶なことをするから、結果として開発中止になったようです。

 結局、試作品一点のみが残っただけですのね?


「ほへでぇ、ふぇおはほおもひまふほ?(それでレオはどう思いますの?)」

「うっ…だから、リーナ、咥えたまま喋るのやめよっか」

「ほおひてえふの?(どうしてですの?)」


 真面目なことを考えながら、私は何をしているのでしょう?

 えっと……そうですわ。

 ルーチンワーク!

 いつも通りのことをこなしているだけなのです。

 ただ、レオの分身を咥えながら、喋るとちょっと焦るのがかわいいのでやめられませんの。

 それでここを舌先でチョンって、すると……


「駄目だって、リーナ……うっ」


 すごい勢いで彼のモノから、放たれた白濁が私の口内を満たしていきます。

 濃いですわね。

 今日、一回目ですから、当然ですけど。


「んっ……くぅ」


 飲み干しましたけど後味があまり良くないですわ。

 ネバネバしてますし、少々の生臭さに加えた青臭さ?

 海鮮物のゲテモノに似ているのかしら?

 でも、喉をコクンと白濁が通るのをレオが凝視していて、飲むのを喜んでくれますから、嬉しかったりするので複雑な気分ですわ。

 だから、いつも最初は口でするのがルーチンなのです。

 それにこれで少しでも発散しておかないと抱き潰されてしまうのが確定ですもの。

 ん?

 どちらにしても抱き潰される可能性が高いのですけど。


「ケラウノスの試射は明日でよろしいかしら? あんっ……ちょっと待って」


 あれだけの量をたっぷりと口に出したのにまだ元気なレオのレオが天を向いて屹立しています。

 その方が私も騎乗りやすいのですけど……


「いいと思うよ。ここだよ、しょっと」

「ひゃぅ!?」


 レオに腰をしっかりと掴まれて、一気に貫かれました。

 深いところまで彼のモノで満たされて、はくはくとようやく息をしながら、彼に縋りつくようにしなだれかかると胸とお尻を同時に責められています。

 三点同時に快楽を与えられるともう何も考えられなくなりそう。

 レオったら、胸ばかりを執拗に入念に揉む!から、最近はお尻までも愛でるようになってきたのです。

 私の方がついていけなくて、翻弄されているばかりなのですけど、気のせいかしら?


 結局、口から出る言葉が『あんっ』だけになって、扉をノックされ、奥深くでレオの熱が迸るのを感じる頃にはもうヘトヘトなのですけど。

 口であれだけ出したのにどうしてなのかしら?

 ぐったりしている私とは対照的にレオは元気ですわ。

 繋がったまま、膣中なかでまたさっきよりも元気になったレオと激しくキスを交わしながら、今度は抱き合って、何度も……。


 今日もいつも通り、抱き潰されました。

 もう、いいですわ。

 抱き潰されてもいいのです。

 レオが気持ち良くなって、子種をたくさん下さるんですもの。

 それに……私も気持ちいいですし、心がポカポカして、幸せなんですもの。

 そう、ちょっと疲れる……だけでと静かに意識を手放すのでした。


 🤖 🤖 🤖


 オルレーヌ王国南西に既に廃城となって久しい古城があった。

 王国譜代の臣にして、王族でもあるシャルンホルスト家の居城シャルンホルスト城である。

 シャルンホルストは武門の誉れ高き孤高の家として、その名を知られていた。

 代々の当主が武勇に優れ、何よりも王家への忠義を尽くす義士として、名を轟かせていた。

 王の剣と称され、王の盾と称されるグナイゼナウ家と『王国の双璧』とされたシャルンホルスト。

 しかし、十年前、その名は突如として、歴史上から消える。

 かつて堅牢を誇った居城は荒れ果て、人々の記憶から忘れ去られていった。

 まるで最初から、存在していなかったかのように消え去ったかに見えたシャルンホルスト。


 荒れ果てた古城シャルンホルストが熱気に包まれていた。

 薄汚れた衣を纏い、傷ついた姿をしていても集う人々の目は生命力に満ち、熱意が溢れていた。

 彼らの見つめる視線の先には二体の巨人の姿がある。

 ダークグレーの色調をした魔動騎士アルケインナイトサオシュヤントとインディゴブルーとホワイトの鮮やかな色調の魔動騎士アルケインナイトジークフリート。


 数日前のことだ。

 砂漠を離れ、単機行動を取っていたサオシュヤントはに基づき、戦車ルークが多数、配備された砦を襲撃した。

 思わぬ抵抗と魔力切れに苦しめられ、特殊兵装フェイルノートが使えなくなるほど追い詰められていた。


「弾切れか。案外、呆気ない。俺の命は安かったか」


 覚悟を決めた人間は存外しぶといものらしい。

 不得意な近接戦をこなし、辛うじて砦の破壊に成功したサオシュヤントだったがその前に自らの駆る巨人と似たような姿をしたジークフリートが現れる。

 両者ともに同型の騎士の姿に困惑し、一触即発の事態に陥るがそこで先に動いたのはサオシュヤントだった。

 胸部が開かれ、中から両手を頭の上に揃え、無抵抗の意思を示した少年が現れる。


「俺達は戦っちゃいけない!分かり合えるはずだ。俺は……俺達は!」


 そう呼びかけ、戦う意思がないことを明らかにしたサオシュヤントにバルムンクを構えていたジークフリートも折れるしかなかった。


「変なやつだな。俺はテオドリック。こいつはジークフリートだ。お前は?」


 かつて隔たれた道が再び、同じ道を歩むべく第一歩が刻まれた瞬間であった。

 そして、刻は動き出す。

 王の剣が再び、その刃を振るう刻が近付いてきたのだ。


「俺はテオドリック……テオドリック・フォン・シャルンホルスト。俺はここに誓う。俺が……俺達が取り戻す!」


 大歓声が沸き起こり、十年振りに故郷ふるさとへと戻った若き英雄を迎えるのだった。

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