閑話8 とあるドラゴンの悲劇
黒渦の森の主である緑竜マラクが登場しますが言葉遣いはかなり適当かつゆるめの設定です。
何となく、そんな感じのふわっとした少年キャラとだけ。
なお、
◇ ◆ ◇
かつて鬱蒼と茂る木々に覆われていたその地は一夜にして荒野と化した。
雄々しい
荒野に残る大きな切り株に腰掛け、天空に輝く赤く大きな星を憎々し気に睨みつける少年の姿があった。
「死ぬかと思っただ」
深い緑色の髪は肩辺りで切り揃えられ、星明りの下で金色の瞳は爛々と輝いている。
ただし、その目は片方は瞑られたままで殴られたように青紫色に腫れあがっていた。
着ている服は簡易のチュニックに膝丈までしかない短めのパンツだがボロボロになっており、見えている肌はあざだらけになっている。
何より、首筋に見られる傷がもっとも酷いようだ。
🐉 🐉 🐉
オッス、おらマラク!
おら、ドラゴンの中でも上から数えた方がはええ、
おらあ、十二竜将の一人だ。
えれえ
そこいらのもんはおらの姿を見れば、震えあがって、崇め奉るもんだ。
おらあ、住処を黒渦の森っちゅう森に決めただ。
陰気で魔物がぎょうさんおる住みにくい森だ。
妹(半妹のヘイグロト)が山に住むっちゅうから、おらにはここしかなかっただ。
じゃけどおら、ここを案外気に入っとるだ。
弱い上に小さくて、ぎゃーぎゃーうるせえ人間が来ねえからだ。
大地から発生する毒性の気体と液体で色んな毒の沼があちこちにあって、おらにはもってこいだ。
おらはこの地で生きている間にどんどん新しい力を身に付けただ。
おらは元々、図体でかくて何の取柄もないただの頑丈なだけの男だっただ。
それが吐くだけで相手を腐らせたり、面白いことになる息を吐けるようになっただ。
毒の沼様様って訳だあよ。
さらに長い間、生きていると体つきにも変化が出ただ。
何の特徴も無いただ長かっただけの尾の先端が二股に分かれて、自由に動かせるようになっただよ。
こいつは便利で腕の代わりにもなっただ。
使っていればいるほど便利になっただよ。
そのうち、この尾は自在に伸ばせるようになっただよ。
おら、この森の王様のようになっただ。
動物はおらを尊敬のまなざしで見つめてくれただ。
魔物はおらを見るとすぐに逃げ出すほど怖がってただ。
おら、無敵になったと思っただ。
そんなある日、そいつが現れただ。
そいつはおらよりも遥かに小っちえくせに見ているだけで冷や汗が伝うようなやべえやつだっただ。
四本の足で大地を掴み、真っ黒な身体は引き締まって、筋肉の鎧みたいだ。
おっそろしいのはその顎から伸びてるなげえ牙だよ。
あんなので刺されたら、おらでも無事では済まねえだ。
目が合っただ。
血の色のように真っ赤な目でおら、心臓が止まるかと思っただ。
肝が冷えるっちゅうのはああいうもんだべな。
おら、喧嘩は好かねえだ。
威嚇でどうにかなれと思っただがおらが甘かったんだべ。
おらの唸り声なんて、そいつには意味なかっただよ。
気付いた時にはおらの胸元はそいつの爪で切り裂かれてただ。
めちゃんこいてーんだ。
死ぬ死ぬ、おら死にたかねえだ。
おら、適当に手足をじたばたさせて暴れてみただが何の効果もなかっただ。
ゴキャとか、バキャとか、嫌な音が聞こえただ。
めちゃんこ痛かっただ。
おらの手足は曲がっちゃいけない方に曲がってただ。
そりゃ、いてーわけだ。
だけんどそんなのまだ、序の口だっただ。
そいつはおらの尾に牙を突き立てるとおらの身体を軽々と持ち上げて、おらを何度も地面に叩きつけただ。
おらよりもちっちぇのにおっとろしい力だっただ。
もうおらはそれだけで心はバッキバッキだっただよ。
そいつは容赦なかっただ。
傷だらけでへばって動けないおらの首筋にそのおっとろしい牙を突き立て、「なあ、どちらを選ぶ?」って聞かれただ。
おら秒で応えただよ。
「おら、一生ついてきますだ」
🦁 🦁 🦁
「原石って感じか。磨けば、使えるかな?だけどこの力は……使えるね」
レオンハルトはニヤリと口の端を歪め、不敵な笑みを浮かべる。
「夜が楽しくなるかもね」
彼の呟きに応える者は誰もいない。
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