第60話 このまま、無事に十八歳の誕生日を迎えられるのかしら?

 結局、朝までに何度、意識が飛びかけたことでしょう。

 意識が朦朧とした状態ですから、レオが何回、精を放ったのかなんて、分かりません。

 覚えているのは抱き合ったままの体勢でずっと愛してもらえて、物凄く気持ち良かったことだけ。

 心まで温まるようで気持ちいいのです。


 それが心地良くて好きなのですけど、レオはそれだけでは満足してくれないみたいで……。

 私の意識が朦朧としているのをいいことに繋がったまま、体勢を変えられました。

 いくら霞みがかった意識でもそれだけは覚えているのですからね?

 それではなくても深いところまで挿入はいっていて、少し動かれただけでも達しそうになっていたのに腿を強い力で掴まれて、思い切り股を開かれたのです。

 そのまま、体重を掛けられて押し倒されたら、私に出来ることなんて何もなくて。

 自分でも信じられないくらい深く、レオ自身を呑み込んでいたから、あれは危なかったですわ。

 本当に意識を失ってしまいそうだったもの。

 その時、どうにか耐えられましたのよ?

 でも、その後、レオの腰使いが激しくて、壊れちゃうかもって思うくらいに突かれて。

 胸も好きなように弄ばれるしで散々、貪られましたわ……。


 だから、朝なのに疲れが取れておりません。

 まるで身体中の筋肉が悲鳴を上げているかのようです。

 不思議なことに肉体的にとても辛い状況なのに心は満たされています。

 もっと愛されたい、愛したい。

 そう思えて、なりません。


 ふぅ……そうは言いましたけど、全身にかけられたレオの白濁とした精の残骸を見ると複雑な気分ですわ。

 既に乾いてますから、まるで乾燥状態のパックのようになって、肌がきれいに……はなりませんのよね?


「んっ……え?」


 上になったり、下になったり、目まぐるしかったですから、意識を失った時、どうなっていたのかという記憶がありません。

 どうやら、私が上に騎乗ったまま、終わったようですわね。

 重い腰を無理して、上げると私と彼の分泌物が混じり合った愛の証がドロリと垂れて、ベッドを汚しました。

 ほぼ毎日ですのよ?

 それなのに特に月のものには変化は見られません。

 出来ないのを喜ぶべきですの?

 それとも出来ないことを悲しむべきですの?

 分からないですわ……。


「レオはどちらがいいのかしら?」


 あれだけ激しく、愛してくれたんですもの。

 さすがに静かな寝息を立てて休んでいることでしょう。

 レオの寝顔はかわいいんですもの。

 そう思って、愛しいあの人の顔を確認しようとして、心臓が止まりそうになります。

 レオったら、しっかりと両の眼を開けているんですのよ?

 あのルビーのように美しい瞳に見つめられて、ドキッとしないなんてありえないですわ。

 起きてましたのね?

 どこから、知ってらっしゃるのかしら?

 もしかして、さっきの呟きも聞こえてしまったの?


「リーナは欲しいんだよね?」


 無言で頷いて、肯定します。

 私とレオには確かに子供がいました。

 遠い遠い過去のことです

 正確にはバールとアスタルテと呼ばれていた頃、愛の結晶とも言うべき愛し子を授かったのです。

 しかし、二人でその子に愛情を注ぎ、育むことが叶いませんでした。

 幼い子一人を残して、現世を去ることになったのですから。


 我が子を育てられなかった贖罪。

 そんな意味合いもあって、ブリュンヒルデやニーズヘッグを娘として、育てたと言われてもはっきりとは否定出来ないでしょう。

 しかし、これだけは言えるのです。

 例え、血がつながっていなくても私の大事な娘であるのに代わりがないということを。


「ニールも妹が欲しいのですって」


 レオの胸板に爪を立てて、腰の上にもう一度、ゆっくりと馬乗りになりました。

 全身の骨と筋肉が軋むような錯覚を受けるほど、痛いですわ。

 でも、この姿勢の方が彼と目を合わせられて、顔を見られて、より幸せを感じられますの。

 嘘でしょう?

 昨晩、あんなにも激しくて、もうこれ以上出ないくらい注いでくれて。

 さすがのレオも疲れて、アレもかわいらしくなってましたのに!

 また、元気になってますわ。

 彼の怒張が自己主張でもするように背中にピタピタと当てられています。

 抑えきれない熱を直接、感じてしまうとレオがどれだけ求めてくれているか、実感出来て嬉しいのです。

 でも、ちょっと待ってくださいな。

 このまま、無事に十八歳の誕生日を迎えられるのかしら?

 ちょっと不安になってきましたわ。


「出来るまでしよっか?」

「ふぇ!? そ、それはちょっと無理で……んっ」


 出来るまでなんて、分かりますの?

 それって、つまりはレオが満足するまで終わらないってことではありませんの?

 気付いた時には時すでに遅しですわ。

 身を起こしたレオに激しく唇を奪われ、身を任せて何も考えられなくなっているうちにしっかりと腰を掴まれました。

 怖いと思うよりも感じる力強さに不覚にも感じていたのです。

 心も体も逃げ場のなくなって、無防備なところを晒した私をレオが見逃してくれるはずもなくて。

 彼の準備が出来上がった熱杭を一気に突き上げられ、奥深くまで貫かれました。

 既に敏感になっている部分が互いの粘膜で刺激されて、押し寄せてくる強い快感にほんの少し残っていた理性もかき消されてしまいます。


 結局、レオの上でひたすら跳ねさせられて、啼かされて。

 『もうダメだからぁ」と意識が闇の底深くに沈んだのはお日様が真上に来る頃でした。


 🦊 🦊 🦊


 重く感じられる瞼をどうにか開くと、いつものようにレオとアンの顔が見えて、ほっとします。

 身体中を彼のものでドロドロにされて、お膣内なかいっぱいになるまで満たされて、かなり酷い状態だったと思うのです。

 いつの間に着せられたのかしら?

 レースとフリルをあしらったブラウスとミモレ丈のフレアスカートは今日、着る予定だったものですわ。

 着た覚えありませんけど!

 身体もきれいになっていますし、シーツもきれいになってますわ。

 不思議なこともありますのね?


「起きれる?」

「殿下、節度を守っていただくようにとお伝えしましたよねぇ」


 アンの背後から、メラメラと効果音が聞こえそうなくらい激しく燃え上がる炎が見えるのですけど、気のせいかしら?


「大丈夫ですわ」


 疲労感と倦怠感、それに体の節々の痛み。

 決して、大丈夫ではないのですけど、そう言っておかないとアンの収まりがつかないでしょう。

 声も掠れていますし、自分で思った以上に出せませんわね。

 心配かけたくないのですが、さすがにまずいですわ。


「とりあえず、食べないと駄目だよ」


 レオの手を借りて、どうにか体を起こすと枕を何個か、腰に当てがいます。

 これでどうにか、上体を起こせそうですわ。

 落ち着いたとは言い難いですけど、我慢しましょう。


「リーナ、口を開けて。あーん」


 彼の差し出してくれたスプーンを口に含み、ゆっくりと味わうとトマトソースベースのひき肉と小麦の香りがするのでミートソースのパスタであることが分かります。

 遠いところで微かに感じるワインの香りもしてきますわ。

 とても奥の深い味わいが漂うパスタですのね?

 これは後で厨房に差し入れをしないといけませんわね。


「美味しいですわ」


 声が掠れすぎですわ。

 こんな状態では心配をかけるばかりですから、あまり声を出すべきではないのでしょうね。

 下手にレオに噛みつくのは危ないですし……。

 ええ?どちらの意味の噛みつくですって?

 それは御想像にお任せ致しますわ。


 また、気遣うようにスプーンがそっと差し出されました。

 餌付けをするのは私であって、餌付けをされるだなんて。

 不本意ですわ。

 でも、甘えるのも悪くないですわね。

 レオはとても優しくて、こんなに大事に扱われると溶けてしまいそうですわ。


 んんん?

 何か、大事なことを忘れているような気しますわ。

 気のせいかしら?

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