第51話 もふもふは抱き心地が最高です

「んっ……レオ? あらら?」


 え?

 この手触り、何ですの?

 何だか、とても毛深いのですけど。

 モフモフしていて、温かくて、柔らかくて、落ち着きますわ。

 まだ、気怠さが取れず、妙に重く感じる瞼を開くとそこにいたのはいつものレオじゃなくて。


「ね、猫ちゃんではない? 大きくなってません!?」


 抱き締めていたのは濡れ羽色のビロードのような美しい毛並みの猫でした。

 猫?

 猫にしては大きいですわ。

 でも、レオなのよね?

 下手な大型犬よりも大きくて、狼くらいありそうですし。

 まだ、大人になり切れていない若い獅子ライオンと言った方がいいのかしら?

 前にレオが変身したのはかわいい子猫ちゃんみたいな感じでしたから、主導権を握れましたけども。


「これは無理ですわ。逆に襲われそうですもの」

「誰が襲うって?」

「し、しゃべりましたわ!?」


 目を閉じていたレオがパチッと目を開くと爛々と輝く、ルビーのように鮮烈な紅の瞳が露になります。

 見つめられているだけなのに激しい鼓動で心臓が破れそうなくらい苦しいですわ。


「うん。喋れるようになったんだ。僕は進化した!」

「進化って。レオったら、たまに変なこと言いますのね?」

「そのうち、翼が生えたり、空を飛んだり。楽しみだなぁ」


 獣の姿でも嬉しそうに語っているというのが分かってしまいます。

 私がレオのことを好きだから、理解出来るのかしら?

 愛の力は偉大ですわ。


「ねぇ、レオ。前に猫ちゃんになったのはあの時ですのね?」

「そうだね。大人になった時だよ」


 にゃんこなのに得意気な顔をされると微妙に心がざわつくのですけど、気のせいかしら?


「ええ、そうですわね。ではお風呂で……」

「出せば、治るかな?」


 治るという保証はありません。

 『治るかもしれない』程度の認識ですもの。


「一晩寝ないと治らないかもしれませんわ。次の日の朝には戻れるのではなくって?」

「じゃあ、今日一日この姿なのかぁ」


 しゅんとしてしまった大きな黒にゃんこ姿のレオがかわいいですわ。

 どうしましょう。

 もう気持ちを抑えられません。


「と・こ・ろ・でレオ! はぁ……これですわ! この手触り! この感触!」


 仔猫ちゃんの時より大きくなって、より感を楽しめるようになってますわ。

 夜の闇を纏ったような身体に顔を埋めて、匂いを感じるだけで幸せをいっぱい感じられます。

 何も着ていない素肌で抱き付いてますから、毛の感触がとても気持ちいいのです。

 癖になりそうですわ。


「気持ちいいですわ。ねぇ、レオ。これから、寝る時はいつも、この姿……は嫌ですのよね?」

「それは複雑な気分だって! リーナが気持ち良さそうにしてる顔はエロくていいけど、この姿だよ? 無理じゃないか」


 抱き心地が最高ですし、体温も感じられますし、捨てがたいのですけど……そうです、大事なことを忘れていました。

 このままでは無理ですわ。

 この姿のレオに抱かれるのはちょっと違う気がしますもの。

 愛さえあれば、出来ないことはないと思いますのよ?

 でも、本で読んだのですけど早くて、痛そうなのよね……。


「アンに言付けますわね。その姿では部屋の外に出れませんでしょう?」

「うん」


 三日月のイヤリングを介して、アンに事情の説明をします。

 あまり深く話し込んでしまうとぼろが出そうですから、『レオが部屋を出られない』ことを強調するのを忘れません。

 これで食事の心配をしなくても良さそうですわ。


「それで試してみますの? お風呂まで行くとバレるでしょうから、シャワーで……その……あの……手でしてあげることになりますけど」

「お、お願いしますですだ」


 レオったら、私以上に緊張しているみたいね。

 焦っている大きなにゃんこちゃん、かわいすぎて辛いわ。

 このまま、ずっとモフモフを堪能したい極上の気持ち良さですもの。

 でも、約束は約束ですから、確認はします。

 ええ、確認はしますのよ?

 実行に移すのか、移せるのか、疑問点が多いですけど。


 やはり、備え付けのシャワーですから、簡易型ですわね。

 狭いですし、とてもやりにくそうですわ。

 ええ?

 洗いにくいという意味ですのよ。

 変な意味ではありませんの。


 それにしてもレオのレオが猫ちゃんの時はかわいい感じでしたのに……。

 触ったり、手でするのにそれほど、抵抗がなかったのですけど。

 アレは大分、勝手が違いますわ。

 まず、大きさが違いますもの。

 形状もグロテスクですし、凶悪ですわ。

 手で触るのもちょっと躊躇ってしまうくらい。


「ねえ、リーナ。ベッドでいいじゃん」

「ふぇ? どういう意味ですの?」


 逡巡していると不意打ちのように襲ってくる彼の言葉。

 そうなのですけれど、まだ覚悟出来てませんの。


「リーナは仰向けに寝て! 僕もリーナに奉仕するから」

「ええ!?」


 言ってる間にちょんと肉球で押し倒されてしまいました。

 軽くタッチされただけなのにとても自然に押し倒されたので嫌な感じは全くしません。

 ただ、彼の戦闘態勢が整ったモノが急に目の前にきたので思わず、『ひぁっ』って軽い悲鳴を上げてしまいました。

 約束は約束ですから、守りますのよ?

 掌で優しく、撫でたり、指で軽く握ったりしてあげるとレオの息遣いが段々、荒くなってきました。

 その熱い息が大事なところにかかってくるのでドギマギしてきます。

 でも、熱っぽい息を吹きかけらるだけなら、まだ良かったのです。

 レオったら、何を考えているのでしょう。

 舌先で秘裂をなぞるようにチロチロと優しく、舐めてくるのです。

 これでは私の手の方がおろそかになってしまいそうで困りますわ。

 彼の舌はザラザラしていて、ちょっと舐められただけでもすごく気持ちいいんですもの。


「レオ、ダメだったらぁ」


 そう甘えるように言ったのがまずかったのかしら?

 入口を優しく舐めるだけだった舌先が中の様子を探るかのようにゆっくりと挿入はいってきたのです。


「ふぁ、あんっ。だからぁ、レオのをするのにダメだってばぁ」


 最初から、レオはこのつもりだったのね。

 そうとしか、思えないほどにただ、ひたすらに弄ばれています。

 結局、息が切れて、声が枯れるくらい、ずっと啼かされたのは言うまでもありません。


 え?

 もちろん、レオに白濁を出させることには成功したのです。

 成功は成功なのですけどシャワーで洗い流すのがあんなに大変だとは思っていませんでした。

 レオが『ごめんね』と素直に謝るくらいにベタベタでドロドロだったのですから。

 顔にかけられたのはまだ、いいんですのよ?

 ちょっと青臭いような生臭いような匂いのする、妙な顔パックをしたと思えば、許せます。

 それにレオが感じて出してくれたのですから、愛おしいくらいですもの。

 問題は髪にかかった方だったのです。

 中々に厄介できれいに洗い流すまでかなりの時間を要しました。

 その間、しょぼくれているレオの様子がまた、かわいらしくかったのですけれど、次は自重してくれるのかしら?

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