第46話 いけないものを解放したようで Side レオ

 焼肉屋のロースターと換気システムはリーナの考えでほぼ正しかった。

 ロースターは炎魔法を応用して、炎の魔力を宿した魔水晶を内蔵したものだ。

 風魔法を応用して、室内が常時、換気されてるから、煙っぽいこともない。

 物珍しさも手伝ってるんだろうけど、味がいいんだろう。

 すごく繁盛しているように見える。


 しかし、これは閃きによるアイデアで作られたものとは思えない。

 僕があっちの世界で見た焼肉屋そのまんまだからだ。

 転生したのか、転移したのか。

 知識のある者が関与したと思って、間違いないと思う。


 これって、お座敷かな?

 靴を脱いで寛げるいわゆるのように落ち着いた部屋もあるようだ。

 ただ、リーナやアンさんは簡単に脱げるような靴を履いてない。

 何より、長いスカートが皺になると大変そうだ。

 ソファタイプのボックス席の方がいいね。


 僕も含めて良く食べるのがいるから、ファミリーセットを頼むことにする。

 質より量が売りの物でお腹を満たしておかないと危ないからね。

 ファミリーセットを多めに頼み、あとは好みで追加だ。

 特上のサーロインだとか、希少部位だとか、色々と食べたい物があって困る。

 リーナはあっさりとしたものが食べたいとスンドゥブチゲにしたようだ。

 なんでスンドゥブチゲがあるんだって、不思議だよ。

 いや、それよりもスンドゥブチゲはあっさりなのかな?

 あさりが入ってるから、あっさりはないな。

 うん、ない。


「あれ? 爺や、偶然、来たって感じじゃないよね」

「お二人にはお伝えしておいた方がいい情報が入りましてな」


 爺やがこんなところに偶然を装って来たってことは何か、面倒なことでもあったかな。


「なるほど、折角だから、爺やも一緒に食べようか」

「よろしいですかな」


 爺やまで加わると本当に家族で外食してるように見えるかもしれない。

 まあ、実質、家族みたいなものなんだから、間違ってはいないんだけどね。

 和やかに肉を焼きながら、食事を進める。

 あくまで食事のついでに爺やと共有したい情報について、話し合っているだけ。

 偶然、会っただけなのだ。

 会食で単にお喋りしただけ。


 もっともリーナはもっと慎重に行動するべきと主張した。

 風の魔法を応用すれば、音が遮断出来るので『周りに聞こえないようにするべきでは』と緩やかな言い方ではあったが。

 ただ、爺やが聞かれても困るような情報ではないと話し始めたから、諦めたようだ。

 そこで爺やから聞かされたのはあれだけ、周到に証拠を消していた転生者連続誘拐事件の犯人とは思えない意外な事実だった。

 何と乗船してきた船にすんなりと行きついたらしい。

 大陸最西端にある自治都市リジュボーに所属する商船で誘拐犯の人相や装束に覚えがあったと証言した。

 また、彼らは気を付けて、喋っていたようだが消しきれないオルレーヌ王国の訛りにも覚えがあるという裏も取れたようだ。

 オルレーヌか、リーナの夢に出てきた国だなぁ。


「ではオルレーヌ王国へ向かうのですかな?」

「そうなりますわ。放置をしておいていい問題ではないようですもの」

「そうみたいだね。明日の午後には出るよ」

「お帰りになるのを楽しみに待っておりますぞ」


 爺やはそう言って、金貨を置いてこうとしたけど、それはやんわりと断った。

 少なくとも一ヶ月は帰ってこれない。

 爺やは影で色々と便宜を図ってくれたんだから、これくらい奢っても足りないよね。

 それから、一時間ほど飲み食いを楽しんでお腹も心も満足して宿に戻った。


 🦁 🦁 🦁


 そして、僕とリーナはすぐ脱げる夜着に着替えて、ベッドの上にいる訳だ。

 暗黙の了解ってやつでお風呂は後にするのが僕達のルールになってる。

 じゃないとこれから、汗をかく激しい運動をするんだから、無駄になっちゃうしね。

 ただ、今日のリーナは汗が気になるらしい。

 お風呂に入りたいと珍しく、駄々をこねた。

 「レオが気にしなくても私が気にするのですわ」って、頬をちょっと赤らめながら、視線を逸らして、そう言うリーナはかわいい。


 でもさ。

 これから、汗や他ので汚れるんだよね。

 そうだ。

 今日の僕は一味違う。

 夕食を何、食べるのかリサーチしたって言ったがアレは嘘だ。

 実は本屋に行ったのさ。

 こそこそ一人で行くなんて、エッチな本を買いに行ったに違いないって?

 違うって、そんなのじゃない!

 必要ないよ、リーナがいるからね。

 そうじゃない。

 ちゃんと出来るように役立つ本を買ったんだ。

 『これでお悩み解決!催眠入門』

 ばっちりだ。


「ねえ、リーナ。明日から、船に乗るんだし、あまりその……出来なくなるよね」

「ええ、最西端の港町ですから、一週間弱くらいで着くと思うのですけど。その間は我慢した方がいいですわね」


 そう言って、小首を傾げながら、ちょっと悲しそうな表情を見せるリーナはとてもかわいい。

 何してもかわいいって言ってる気がするが気のせいだろう。

 こんなかわいい彼女がいて、船の旅で我慢出来るのか。

 正直、自信はまるでない。

 彼女を前にしたら、秒で襲いそうな自分が簡単にイメージ出来る。

 これはいけない。

 部屋を別にしてもらうしかないか。

 そうしたら、リーナのことが心配になって、寝れないなぁ。

 ああ、それよりもまずは集中だ。


「だからさ。ちょっと試したいことがあるんだけど、いいかな?」

「なんですの?」


 蝋燭に火を付けて、リーナの目の前でゆらゆらと揺らす。

 この炎の揺らぎに効果があるらしい。


「この蝋燭の火をじっと見つめて」

「それだけでいいんですの?」


 基本的に僕の言葉も行動も全面的に信じてくれるリーナだけど、さすがにおかしいと思ったんだろう。

 半目でジトッと見つめられた。

 そんな表情かおすら、かわいい。

 今すぐ押し倒したくなってくる衝動をどうにか、抑えつける。


「ゆっくり呼吸をして、火を見つめて。あなたは段々、楽になる」


 そんなのを五分ほど続けているとリーナが突然、カクンと俯いて、動かなくなった。

 催眠が効いたのかな?


「あれ、リーナ? 大丈夫? もしもー!?」


 そう声をかけた僕の目に映る景色は天井と僕を組み敷いて、腰の上に跨るリーナの姿。

 どうやら、押し倒されたみたいだ。

 あれ、押し倒すのは僕のはずなんだけどな、と考える間もなく、リーナの顔が至近距離にあった。

 唇に当てられた柔らかい感触にリーナがキスしているって、今更のように気付く。

 ただ、唇同士が触れるくらいの軽いキスから、彼女の舌が味見でもするように遠慮がちに侵入してきて、僕も我慢出来なくなった。

 舌を絡め合って、互いの体液を交換するとゆっくりと彼女の顔が離れていって…やばい。

 完全に目が据わってるよ。

 これ、前に間違えて、お酒飲んだ時と同じじゃないか?

 にへらとやや、だらしない笑みを浮かべながら、羽織っていた薄着を脱ぎ捨てると僕の夜着を剥ぎ取った。

 押し倒されて、跨られてるから、僕の方が襲われているようなのに彼女はまるで助けを求めるかのように僕と両手を繋ごうと手を伸ばしてくる。

 僕は彼女を不安にさせたくなくて、手を繋いだ。

 指を絡め合わせて、決してほどけないように。


 僕のモノはもうここまでの行為で興奮状態なんて、とうに突破している。

 おまけに生まれたままの姿のリーナが上に跨ってるんだ。

 直接的な刺激まであって、暴発寸前だよ。


「ふぅ……はぁ……」


 何だか、リーナの息遣いが荒くて、心配になってくる。

 でも、手はほどけないくらいにお互いにぎゅっと握り合っているから、出来ることは限られそうだ。

 僕のモノはもう今にも爆発しそうで違うことを考えてないと今にも危ない。

 それなのに彼女は腰をゆっくりと落としてくるもんだから、僕の元気になった先端が彼女の大事なところに当たってしまった。

 もしかして、濡れてる?

 『あっ』と思った時にはもう遅かった。


「うっ、出ちゃうよ、リーナ」

「ふぁ、熱い」


 リーナに触れた瞬間、今までにないくらいの滑りを感じて、僕は果てていた。

 彼女の中じゃなくて、外に出してしまって、申し訳ない気持ちでたくさんだ。

 そんな僕の思いとは裏腹に僕のモノはまだまだ、元気だ。

 あれだけ、欲望に満ちた白濁をリーナの体にかけたのに収まろうとしない。

 リーナも慣れていないからか、位置を再確認している。

 いや、まずいって、そのままだと挿入はいっちゃうよ。

 はち切れんばかりに膨張した僕のモノを入口にあてがった。

 肉を分け入っていく感覚とともに僕は彼女の中にゆっくりと挿入はいっていく。

 僕自身がリーナに包まれているような……気持ち良すぎて、もうダメだ。

 ちょっとでも気が緩んだら、我慢出来ずに彼女の中に吐き出してしまいそうになる。


「くぅ……ふぅ……」


 リーナの息遣いはやっぱり、荒くて、辛そうな表情をしているのにやめないのは僕のせいだ。

 催眠術なんて、かけたからだ!

 でも、彼女の中に包み込まれているようなこの感覚はとても気持ちが良い。

 もうダメだ……。

 我慢出来ない。

 さらなる快楽を求めるようについ腰を動かしてしまったのだ。


 そのせいでさらに深く、挿入はいってしまったんだろう。

 リーナはもう泣きそうな顔をしていて、見ているとすぐにでも抜いて、抱きしめてあげたい。

 それなのに……僕は彼女のそんな表情と包まれたような例えようのない気持ち良さにさらなる快楽を求める。

 繋がっている部分を直に見ているから、余計に興奮して、また暴発してしまいそうだ。

 まだ、僕の先端部分が咥え込まれただけで完全に繋がった訳じゃない。

 握り合った手によりいっそうの力が込められたかと思うとゆっくりと本当にゆっくりと彼女の中に僕が包まれていく。


「はぁ……くぅ……」


 眦に涙を浮かべながら、健気にも僕を受け入れてくれるリーナを見ていて、僕は……あっ、やばっ!


「うっ、ごめん。本当にもうダメだ。出そう……かも」


 握り合った手にさらに力が込められた気がする。

 僕はさらに肉を深く、分け入っていく感覚を覚えた。

 その時、先端が何かにコンッと当たった気がして、僕はもう我慢が出来なかった。


「あぁん」


 リーナは悲鳴とも喘ぎともつかない声を上げ、のけぞったまま、身動ぎ一つしない。

 僕はというと今までにない快感にこれまでにない量を出していた。

 いつ終わるのかというほどに止まらなくて、おかしくなったのかというくらいに出てる。

 しかし、初めて彼女の膣内なかに僕の欲望そのものを出せたという感動を味わえたのはそこまでだった。


「リーナ?」

「はぁはぁ……あんっ、もっと」


 はい? え? どういうこと?

 彼女も快楽を得ることを覚えたのか、腰を動かしている。

 慣れてないし、どうすれば得られるのか分からないせいでたどたどしい動きだけど、慣れてない僕にはやばすぎるくらいに気持ちがいい。


「もっと……もっとなの」


 リーナは上気して桜色に染まった顔をして、蕩けきったような両目はまるで熱を帯びたように僕を見つめている。

 まだ、繋がったままであれだけ、出したっていうのに僕のモノはまだ、足りないとでも言うように彼女の中を広げ、深く侵入したまま、果ててしまった。

 また、彼女の膣内なかに欲望を解き放ってしまった。


 それだけで終わっていたら、初めて繋がった体験として、美しい思い出になっただろう。

 でも、そうじゃなかった。

 段々と要領を得てきたリーナが快楽を得る方法を探り当てたらしい。

 腰をグラインドさせるだけじゃなくて、抜ける寸前まで上げてから、また、下げるを繰り返すまで学んでしまった。

 これはまずい。

 それはすごい気持ち良くて、自分でも無意識のうちに快楽を貪るように腰を突き出していた。

 彼女は甘い声で喘ぎながらも『もっと、もっと』と求めてくる。

 まるで淫魔サキュバスのようだ。

 『絞られるって、こういうことなんだろうな』と気付いた時にはもう朝日が部屋に差し込んでいた。

 疲れ切ったリーナは幸せそうな顔をして、僕の上で安らかな寝息を立てている。


 あれだけ、出したからだろうか。

 さすがに僕も疲れた。

 艶めかしい音とともに彼女の中から、僕のモノが抜けるとドロッと白いものが溢れ出てくる。

 赤が混じって、ピンク色のように見えるのはきっと、そういうことなんだろう。

 これは掃除が大変だなと他人事のように思いながら、僕の意識は深い闇の底に沈んでいった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る