第34話 ゲームに負けていたようです

「パーパ! マーマ、いじめちゃ、めっーなの!」


 娘に助けられるのは複雑な気分ですわ。

 でも、細かいことを気にしたら、いけないわ。

 あのまま、最後までされてもよかったと思わないでもないのですけど。

 ただ、流されるままに初めてを経験して、失うのは違う気がしますわ。

 取っておくものではないですが大事にしたいわ。

 もっとロマンティックな雰囲気の方がきっと思い出に残るもの。


 ゲームなんて持ち掛けたのが悪かったのかしら?

 レオが暴走すると予想していなかったのが甘かったのですわ。

 力で押さえつけられたのはちょっと怖かったけど。

 首にキスされただけで『このまま、いいかも』と流されかけたのは秘密にしておこうと思いますの。


 ニール襲来で固まっているレオをやんわりとどけてから、はだけた寝衣を直し、ニールを抱き抱えます。

 やんわりくらいでどいてくれたのが意外ですわ。

 確か、ニールはもう寝ていたはずですのに。

 どうして、私達の部屋を訪ねて来たのかしら?

 目を覚ましたのは理由があるのかしら?

 何か、怖い夢を見た?

 それとも私の不安な想いに気付いてくれたのかしら?


「マーマ、いじめられたの?」

「ううん、ニール、違うのよ。パパとママは仲良しになることをしていただけなの。あなたは本当に優しい子ね」


 レオは放心状態になっているわ。

 今は放っておいてあげた方がいいってことよね。

 変に慰めてもかえって、傷つけてしまうわ。

 ええ、そうしましょう!


 ニールを抱っこしたまま、静かに部屋を出て、アンの部屋で寝ることにしました。

 しかし、持ちかけたゲームの話をしたところ、怒られたのです。

 どうして私が怒られるのかしら?


「お嬢さまはバカなんですか。そんな恰好をして、あんなゲームをして、どうなるか考えなかったんですか?」

「ゲームに勝つにはこういう恰好の方がいいって、本にも書いてあったわ。ああいうゲームが主導権を握れるとも書いてありましたもの」

「あの……お嬢さま、一体、何の本を参考にされたんですか?」


 ジトッーとした目で睨まれ、ただならぬ威圧感を感じますので今回の作戦を思いついた本を差し出しました。

 下手に言い訳をするよりも素直に白状する方がいいようですわ。


「『倦怠期の夫婦が新婚時代を思い出す5つの方法』って、お嬢さま、やっぱりバカなんじゃないですか」

「どうしてかしら? 効果凄かったですわ。男の人って、あんなにたくさん、出ますのね」


 アンに叱られている理由が良く分からないので小首を傾げ、素直に思ったことを言ったのです。

 何か、おかしなことを言いました?


「はぁ、あたしも経験ないですけどお嬢さまは経験ないのにやることが無謀すぎるんですよぉ。これからは殿下と何かをされる前に相談してくださいね?」

「は、はい」


 有無を言わさないという表現はこういう状況を指すのね。

 ニールは私の膝を枕にしてすやすやと寝息を立てています。

 かわいらしい顔で夢の世界を楽しんでいるようね。

 あら?

 私はどうやって寝れば、いいのかしら?


「全く、お嬢さまは世話が焼けますね」


 アンが気を利かせて、寄りかかれるように枕やシーツを重ねてくれました。


「ありがとう。あなたも早く、寝てくださいね。おやすみなさい、アン」

「はい、お嬢さま。おやすみなさいですよぉ」


 無理な姿勢と一人にさせてしまったレオのことが気掛かりでゆっくり寝られそうにないわね。

 しかし、睡魔には勝てませんでした。

 いつしか夢の世界へと旅立っていたのです。


 🦊 🦊 🦊


 目を覚ますといつも目の前にある顔が見えないというだけでこんなにも不安な気持ちになりますのね。

 知りませんでした。

 晴れ渡る青空ですのに気分が落ち込み、灰色に感じますわ。


 そんなちょっと暗くなってしまう朝です。

 それでは朝は朝です。

 余程のことがない限り、朝の食事は全員一緒なのが私達の決めた簡単なルールです。

 宿の方が用意してくれた朝食の席に向かうとそこには既にレオの姿がありました。

 怒ってますの?

 普段はあんなにもガチャガチャと音を立てて、食べたりしませんのに。

 どうしたのかしら?

 おかしいですわね。


「お、おはようございます、レオ」

「……おはよう」


 名前を呼んでくれませんし、視線も合いません。

 そうよね。

 あんなに感じてくれていたのにそのまま、置いて出ちゃったんですもの。


「ごめんなさい」

「……え? いや、怒ってないし、切れてないし」


 その割にサラダを食べるのにお皿が割れそうな勢いでフォークを突き刺していますけど、なぜですの?


「あの…レオ?」

「だから、怒ってないって。いや、怒ってるんだけどリーナにじゃない」


 テーブルに着くとレオはやはり、どこか不機嫌そうな顔でもきゅもきゅと口を動かしています。

 その苛々としている様子すら、かわいく見えるのですけど。


「では何に対して、怒ってらっしゃるの?」

「自分に怒ってる。何であんなこと、したのかって」


 私が拒絶する態度を取ったのに腹を立てているのではなかったのです。

 自分が悪いと自省して、気遣ってくれたのですわ。

 アンに叱られなかったら、気付かなかったでしょう。

 レオがああいう行動に出たのは仕方がないことだったのです。

 私が仕向けたんですものね。


「本当はあんなことするつもりなかったんだ」

「その……あんなこと、されても良かったのですけど」

「え? 声が小さくて、聞こえないよ?」

「な、なにも言っておりませんわ。あのレオ、でもあのゲームは私が勝ったのですから」

「え? 僕の勝ちでしょ。これは自信あるよ」

「ええ? そんなはずは……」


 もしかして、勝っていると思っていたのですけれど、間違いでしたの?

 そんなはずはありません。

 おかしいですわ。

 レオはいつものように薄っすらと笑みを浮かべて、見つめてくるのですが、その瞳は笑っていませんわね。

 あれは間違いありません。

 捕食者の目ですわ。


「しょうがないなぁ。引き分けってことで許してあげるよ?」

「え? ええ? そうきますのね。わ、私は別に構いませんけども」


 それでもいいとまた、流されかけています。

 変にわだかまりが出来たりするのは嫌ですし、何より、レオに見捨てられたくないの。


「じゃあ、今日は一日、ってことでもいいよね?」

「はい、レオがそう望むのなら、従いますわ。方がいいですものね」


 私とレオのの認識が異なる性質のものであるなんて、考えもしませんでしたし、気付きませんでした。

 いつも通り、皆で和やかに食卓を囲んで楽しく、お開きとなったのです。


 🦁 🦁 🦁


 ニールとオーカスに一般常識を教えると息巻くアンと別れ、部屋へと戻りました。

 エスコートではなく、腕を組んで一緒に部屋に向かうなんて、まるで夫婦みたいと幸せな気分に浸っていたのですけれど。


「んっ……ちゅ」


 部屋に入った途端、レオが豹変したのです。

 素早く鍵を掛けるとベッドに押し倒されました。

 唇を貪るように奪われるともう、身体に力なんて入りませんし、考えることも出来ません。


「な、なんで……ゆっくり、休むって言ったのに」

「うん、するよ」


 レオは首筋にキスの雨を降らせながら、ドレスを器用に脱がせていきます。

 本当、自分で脱ぐのよりも早いと思えるくらいに手慣れてますの。

 呆けたようにボッーとしているとまた、貪るように唇を吸われました。

 彼の激しい想いに応えようと舌を絡ませ合っているだけで身体は言うことを聞かなくなっています。

 頭で何も考えられなくなりそうですわ。

 だって、この間も胸を一定のリズムでも刻むように揉みしだいてくるんですもの。

 本当にもうダメかも……何も考えられないわ。


「リーナはもう、準備出来ているみたいだね?」

「あんっ……やぁ、ダメぇ」


 いつの間に、全部、脱がされていたのかしら!?

 大切なところを撫でられるように触られていました。

 手慣れ過ぎていて、怖いですわ。


「いいよね、リーナ」

「ダメと言ってもレオはしたいのでしょ?」

「リーナは嫌かな? それともしたい?」

「い、嫌ではありませんけどぉ……そこを触りながらはダメだってばぁ」


 レオに弄ばれ続けて、息も絶え絶えになりながら、異物が当たる違和感に目線をやると彼のモノは反り返るほどに大きくなっていました。

 とても辛そうに見えますわ。

 薄明りではなく、はっきりと見てしまいましたけど、大丈夫……大丈夫ですわ。

 彼の息遣いまで荒くなってきたのは我慢しているからですの?


「レオ、もう我慢しなくてもいいから、しましょう?」

「本当にいいんだね?」

「はい、レオ」


 誓いを交わすようにまた、口づけを交わして、彼のモノが秘裂の入り口に触れた途端、凄い熱いものを感じました。

 えっと、これって……もしかして、失敗かしら?


「んっ? え?」

「あっ、うっ」


 どうやら、触れただけで……その……暴発したようですわね。

 それでも出るのが中々、止まらないようで。

 自分の意思で止められるものではありませんのね。

 勢いが激しいものですから、胸の辺りまで飛んできて、びっくりしました。

 ドロッとしていて、白く濁った半透明の液体というには語弊がある粘り気を帯びているのね。


「は、初めてですもの。そういうこともありますわ」

「う、うん、ごめん」


 幸いなことに彼のものは大量に出し切った割に全く、萎えていないようで。

 まだ、天井の方を向いてますから、元気が有り余ってるのね。


「今度は失敗しないから、大丈夫。頑張るよ」

「きて、レオ」


 手を繋いで、彼のものを受け入れようと覚悟して目を閉じると入り口に触れてから押し入ろうとしてきて……また、熱いものが私の身体にかかったようです。

 さっきよりも元気なのかしら?

 顔にもちょっと、かかって……匂いは青臭いような……あまり美味しく無さそうな臭いですわ。


「また、駄目だった……」


 レオは二回も暴発して、かなりショックなのか、シュンとしています。

 その様子が叱られた仔犬みたいでかわいいのですけど、二回も出したモノは凶悪ですわ。

 あれだけ、出したのにまだ、元気なんですもの。


 あんなに元気なのだから、何も心配することなんてない。

 その時はそう思っていたのです。

 ところがそれから、五回以上挑戦したのに一度も満足に出来ませんでした。


 レオの白濁のお陰で上半身はドロドロですわ。

 愛しいレオのものとはいえ、さすがに気持ち悪いのですけれど、口にしたら可哀想ですから、言いません。

 本ではこれを舐めたり、飲み干すと書いてあったのですけど、上級者過ぎて無理ですわね。


 気が付いたら、お昼も近いようです。

 身体も汚れましたし、項垂れているレオの気分を和らげるのにもお風呂が一番ですわね。


「レオ、そう落ち込まないで。お風呂に浸かれば、きっといい考えを思いつきますわ」

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