第3話 過去
ナミと出会った時の俺はまだ17歳で冒険者になって2年しか経っていないもののAランクという最高ランクに到達していた。そのころパーティーを組んでいたメンバーの一人が結婚を機に引退をしてパーティーは解散する運びとなった。そんな時に個人で受けた依頼で唯一救えたのが彼女だけだった。言わば俺は彼女の親を守れなかった、殺したのも同然なのだ。
罪悪感から彼女の身柄を引き取り幸せにするという目標を立てたが、俺は弱い人間だった。彼女の心の傷が深いと感じるたびになぜ俺は、俺が、、、。確かに魔物は強かった。でも俺の慢心さえなければ守れたかもしれない。常に罪悪感を感じついに3年後身柄を知り合いの家に預けて魔王討伐のパーティーに参加した。正直魔王討伐をともにしたメンバーには口が裂けても言えないが、魔王なんてどうでもよくて、ただナミと離れて思い出すのをやめたかっただけだった。
そしてさらに3年後無事に魔王討伐が終わりパーティーは解散。俺はSランク冒険者という大層な名誉をもらったが、それはただの仮初だ。ナミには何も言わずにそのまま各国を旅していたのだが、ナミは俺を慕ってくれていたようで1年後、つまりいまから1年前に俺の前にやってきて1年間生活を共にしている。
しかし俺はまだ過去に囚われている。ナミには真実を伝えていない。あの日俺が慢心していたから両親が亡くなったということを、俺が弱い人間だったからお前の前から逃げたということを。
「おはようございます、ご主人様。」
「ナミ…おはよう。」
彼女は優しく俺に微笑む。苦しい、俺に優しくしないでくれ、俺は人殺しだ、、、。
お前の両親を殺したのは俺だ……。
「ご主人様?」
恐らく顔色が優れなかったのだろう。ナミが心配そうにこちらを見てくる。
言うべきだ、謝罪すべきだ、懺悔すべきだ。しかし俺の口は堅く閉ざされていて開かない。
ナミは俺のベットに入ってくると、俺の頭を優しくなでて
「ご主人様、いえ、レイド様、過去の事は気にしていません。あなたは何も悪くない。もし悪いという者がいるならば私があなたを許します。私は今幸せです。」
あぁ、、、ナミはすべて知っているのだろう。ナミは過去から進んでいる。俺の時間はずっと止まったままだ。彼女はそれがわかっていて俺を開放してくれているんだ……。
「ナミ…すまない……。」
年甲斐もなく号泣した後ナミにこんな話を持ち掛ける。
「ナミ…こんな親代わりでごめんな、それでも幸せって言ってくれてありがとう。お前には幸せになってほしいから、良い男紹介するな。」
場が静まり返る。
「本番とキスはまだしてないから綺麗だし、お前は贔屓目なしに可愛いから十分ほかの男と一緒になって幸せをつかめると思うぞ。俺なんかもう25だし、年の差7歳差もあるしな。」
「……レイド様の……いやレイドの事をお父さんだなんて思ったことない!私はレイドの事が好きなの……!!」
「この分からずや!!」
「え?」
Sランク冒険者の俺の防御障壁なんか豆腐かのように魔術が進行してきて、土でできた手錠、足枷で拘束される。
「レイドには思い知らせないといけませんね……。」
「あっ……。」
彼女が服に手をかけ始めた時、、、
「やっほーー!!レイ君!元気にしてる?」
俺の元同僚がやってきたのだった。
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