第9話 初日の出と今年の抱負
「墓標は『ぺル』にして下さいってさ。」
技術の発展とともに、人類にとって必須スキルが出てきた。
それは努力。
努力をすればのし上がれるという社会の構造は、裏を返せば努力しない奴は置いていかれるということ。前世ではそれを怠った。だから今世では努力をすることにした。
多くは望まない。欲張らない。
世界を救ったり、大発明をしたり、賢王になる気も無い。
ただ昨日より、僅かだけ強くなって。
一時間前より微に成長して。
それで、君の横で笑っていたかった。
それだけだ。
それだけだったんだよ、ペル。
「・・・・兄上。」
「何だい?」
「俺、王位継承戦に参加します。」
「・・・そうかい。」
「強くなって、もっともっと力を付けて。全部解決できるようにします。誰もが笑って、誰もが人並みに苦労して、人並みに恋をして、人並みに笑って、人並みに泣いて。誰もが人並みの生活をできるようにします。」
「・・・・そっか。それはいい夢だね。」
「夢ですか。。」
「・・・・ああ。それは不可能だろうね。それが叶えられるのはお伽の国の住人だけだよ。お前じゃ無理だ。」
きっぱりと断言する兄。いつも通りヘラヘラしたチャラついた態度だと言うのに、目が一切笑っていない。けれどその目は凍えるような冷たさを孕んでおらず。静かで、まるで穏やかな波のよう。
「でもそういう問題じゃないんだろう?」
「ええ。」
そうだ。そうなんだ。
出来る出来ないとか、そう言う問題じゃない。
可能だからするとか。
不可能からしないとかじゃない。
今が無理なら十年後、二百年後、三千年後。そのもっともっと先の子供がやっと掴めるような困難な夢だとしても。
それは諦める理由にはならない。
寧ろそれは続ける理由になる。
未来の子供たちその夢を掴むために僕はその礎となれるのだから。
だから僕は全力でそんな社会を作るよ。それを見て子孫たちが笑って暮らせるようになるのなら喜んで全部を捧げようと思うさ。
「お、日の出の時間だよ。」
橙の陽が、地平線から覗き見る。
僕は照らされた頭蓋骨を手に取って。
「『
手を口に運んだ。
それは、白くて、所々黒くて。
そして、苦くて甘酸っぱい味がした。
力がいる。
圧倒的な武力じゃまだ足りない。
誰もが従うような権力がいる。全てを手に入れるような財力がいる。
知神の加護を信じている訳じゃない。。。。
けれどペル。
願わくば天之国とやらで見ていて欲しい。
僕の二度目の人生は始まったばかりだ。
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