封印を解きたい祖だよ

今日も私の封印は解ける気配が全く無い。

(私を守ろうとしている兄様達の優しい力を感じるから居心地は良いんだけどね)


『今日はまだあの子達も来てないし、何処まで本体(私の体)から離れられるか確かめてみようかな?』


私が目を覚ましてからまだ一週間くらいしかたっていない。

けれどまだ自分の体から離れた事がなくこの部屋?からも出た事がなかった。

(そもそもこの部屋?部屋だよね?まぁ部屋でいいや。この部屋から出られるかも分からないしね)


『そもそも私は物に触れないし、、、ドアは通り抜ける?、、、ぶつからないのは何となく分かるけど少し勇気がいるなぁ』


この一週間で分かった事は精身体の私は物に触れられないということと封印されてる自分の体には触れる事くらいだった。

それと私の一族のあの子達にも触れてみたら私には触った感触があり、あの子達も何かに触れられた様な感覚があるようだ。

(直接聞いてはないけど何かに触られたかの様な感じの顔をしてたからなぁ)


『よし!考えてても仕方ない。やってみよう!』


私はいつもあの子達が入ってくる分厚く頑丈そうで重そうな扉の前に行きそのまま進んだ。






二代目・天氷視点


オレ達は今日も我が家から少し離れた我らの祖が封印されている場所に向かっている。

(今日も特に変わりはないな、、、祖はいつ目覚めてくれるのだろう?

もう封印されて五百年はたっているというのに、、、まだ心の傷が癒されていないのか?

何があったんだ?

親父達は心の傷が深すぎてもしかしたら目覚めない可能性もあると言っていたが、、、、、会いたい。

目の前に祖が居るんだ、、、会いたい!

オレ達(子)の本能なのか?

親父達が居た時、、、まぁ、それも幼い時のほんの少しの間だったが、それでも側に居たのが普通だったからか何も感じなかったが、、、祖が居るというだけでこれほどまでに会いたくなるのか?

いや、もしかしたらオレだけで雷達は何にも感じてないのかもしれんな、、、)


「、、い、、お、、い、、ッサン!、、おい!オッサン!聞いてんのか!」

「、、、!、、嵐?すまないね、少し考え事をしていてね?何かな?」

「年かよ?、、、祖が居る岩場に着いたって言ったんだよ」

「おや?本当だ」

「はあ、、、大丈夫かよオッサン?」


考え事をしながら歩いていたらいつの間にか祖の居る入り口の岩場に着いたようだ。

(今日は要らんことを考えるな、、、)


「、、、氷」

「ん?何だ?何か用か雷?」

「何を考えていたんだい?、、、もしかして祖の事かい?」

「ッ!、、、まぁ、そうだとして何かあるのか?」

「いや、、、実は私も祖の事を考えていてね。いつも思っている事なのに何故か今日はその事で考えてしまって、、、もしかしたら氷もそうなんじゃないかと思ってね?」

「、、、何を考えた?」

「祖の事さ」

「、、、何故か祖に会いたくて仕方ないって事を考えていたんだが、、、つまりお前も、、」

「何故か祖に会いたくて仕方ないね、、、私だけかと思ったんだけどね」

「、、、ボクもだ」


雷と同じ思いだった事を確めていると小さな声で輪が話した。

(、、、聞き間違えじゃなけりゃあ、、、ボクもっと言ったよな?)


「輪?聞き間違えかな?」

「雷、聞き間違えじゃないぞ!ボクも雷達と同じだって言ったんだぞ!」

「、、、つまり輪、お前もオレ達と同じで祖に会いたくて仕方ないのか?」

「うん、そうだぞ!」

「え~、、、嘘だろ?雷と輪ならまだしもオッサンとも同じとか、、、」

「つまり嵐、お前も同じって事か?」

「、、、オッサンと同じってのはイヤだけどそうだよ」


輪も同じ事を思っていたと確認した瞬間、今度は嵐も同じ事を思っていたのが分かった。

(つまりオレらはみんな祖に会いたくて仕方ないって事か)


「みんな同じって事か、、、じゃあ、その祖に早く会いに行きますか」


祖が居る場所に繋がる大きな岩に手を着いた。

するとオレの中にある祖と近い血に魔方陣が反応して岩に洞窟みたいな入り口が現れる。

(これ、オレらの親父達が作ったんだよな、、、いつも思うがとんでもない魔法だよな)


「ん?あれ?なんで?」

「輪?どうした?何か見つけたのか?」

「花が咲いてる」

「え?」

「この岩の入り口の後ろに花が咲いてるんだ。それに草も少し生えてる」

「は?ここは岩場だぞ?何で花や草が、、、本当だ」


ここは草一本生えない岩場で祖が居る所も植物が生える様な場所はない。

(何故?こんなこと今まで一度もなかったってのに)


「、、、なぁ、祖は?これ、祖が居る岩に生えてるって事は、、、」

「ッ!祖!」


嵐にそう言われオレは急いで入り口に入り階段を降りた。

後ろから慌ててオレのあとにみんなが着いて来るが気にしていられず祖が居る重いドアを急いで開けた。


“ギィ~、ガン!”

「祖!無事か!」


祖が居る場所を見るとそこにはいつも通りクリスタルの中に祖が眠っていた。


「はぁ~、、、無事みたいだな」

「氷!祖は!」

「無事だ、いつも通り眠っている」

「いたッ!」

「輪!?」


祖の無事を確認していたら後ろから輪の声が聞こえオレと雷は慌てて振り返る。


「だ、大丈夫だ!少し転んだだけだぞ!」

「大丈夫じゃないだろ?血が出てるぞ?」

「こ、このくらい大丈夫だぞ!ボクは男なのだからな!」

「ハイハイ、ワカッタワカッタ、近くの水場で傷口を洗おうな?」

「けど、祖が」


どうやら嵐は怪我をした輪の傷口を洗う為に水場に行きたいみたいだが輪が祖を気にして動かないようだ。


「祖は無事だから安心しろ」

「水場で傷口を洗ったら輪がちゃんと自分で確認すると良い。私達も一緒に行こう」


オレ達は輪を促し近くの水場に向かった。

向かう途中で草花が今まで見た中であり得ないくらい元気に生えていてそれに驚きながら向かうとは知らずに。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る