第12話 ずっとベットの上で
「うぐ、ひっく、びえ……ぐ」
「ほれ泣いてる場合か? 次はこれだ」
「も、もう何時間やってると思ってるんだ、少しはやすませろおお!」
「いや、まだ30分だから……」
「30分も集中出来るかあああ」
「ばーーか、学校の授業だって一コマ、一時間近くやるんだ、30分も集中出来なくてどうする? ほれいいから次の問題」
「ま、またバカって言った!」
「まさか連立方程式も解けない程バカとは思わなかった……夏生……よくそれでうちの学校受ける気になったな」
俺の学校は、一応県トップクラスの進学校だぞ? 呆れて物も言えん……。
まあ、明彦みたいにサッカー推薦出来る程の実力でもあれば別だけど、それにしたってそこそこ勉強も出来なければ入れない。
「だ、だってだって私……向こうじゃ、天才って言われたもん!」
「……夏生が?」
「だってだって九九全部暗記して言えるって言ったら天才だって!」
「あーーハイハイ、海外あるあるだな」
「私500×500までも暗記してるよ~~」
「ううう、だ、だって他にも……ほら、日本語完璧だって」
「はーーい、じゃあ夏生ちゃんこれ何て読む?」
俺のベットに座ってこっちを監視していた妹は持っていたノートに二文字書き込みこっちに見せた。
『忖度』
「……………………ふど?」
「そんたくだ! バカたれ!」
お前はどこかのアホ作家か!
「ま、ままま、またバカって言ったああああ!」
「バカだからバカって言ったんだ!」
「さっき頭の良さと勉強出来るは違うって言ったじゃん!」
「あーー、それは逆、頭の良い奴は学生が勉強する意味を知ってる、だから頭の良い奴は勉できる、でも勉強の意味を知らなくて、親なんかに、強制的にやらされている奴も勉強は出来る、だから勉強出来るかで頭の良さは決まらない、寧ろ逆だな」
「うぐ」
「そもそも学生が勉強するのは当たり前、社会に出たら意味ねえとか言ってるのは言い訳に過ぎないんだよ、少なくともこの国では中学迄は義務教育なんだよ、要するに基礎って事だ」
「き、基礎?」
「何事も基礎が必要って事だ、これから何者になるかはわからん、例え将来運動で生計を立てるにしたって基本的な事、基礎ってのは必要なんだよ、夏生は将来何になるか決めてるのか?」
「……お嫁さん」
「……ま、まあ、それにしたってバカじゃ出来ないぞ」
「うんうん、お嫁さんは大変だよ~~旦那様が出来る人なら尚更ねーー」
妹はベットの上で女の子座りをしながら満面の笑みで俺を見つめる……。
「……そなの?」
「いや、その辺は俺にはわからん……」
そもそも妹の方が勉強出来るし……。
「とりあえず数学だ、忖度も読めねえんじゃ現社ダメなのは目に見えてるが、今はとにかく受験だ」
「文系は私が教えるよ~~」
理数系だって妹の方が遥かに出来るってんだけど、『妻は夫を立てる』を実践しているのだろう。
「妻は夫を勃てる?」
「ちがううううう!」
誤字だ誤字!
「あぐううう、いつまでやるのおお」
「とりあえずどこかに受かるレベルになるまでだ!」
「わ、私ってそんなレベル?」
夏生は涙を浮かべて俺と妹を交互に見る……俺と妹は黙って頷いた。
「そ、そんなあああ」
「大丈夫だ心配するな、まだ一週間ある、168時間あれば行けるだろう」
「厳密には後150時間ちょっとだけどねえ」
「とりあえず進学校じゃない高校は過去問から出題傾向が偏る事が多いから、まあ、なんとかなるだろう」
「か、過去問って、これ?!」
「ああ、さっき本屋に行って買ってきた」
「い、いつの間に!!」
「いいから、とりあえずこっちを解け」
「か、過去問やるんじゃないの?! これって、算数って書いてあるけど!」
「数学は途中からって出来ねえんだよ、時間がかかるんだ、出来ない所からやる方が早い、ほれいいからやれ、今夜は寝かさないからな」
「うみゃあああああああ、そのセリフをこんな所で聞きたく無かったああああ」
夏生はシクシクと泣きながら渋々と問題を解き始めた。
そんな事で泣く夏生に俺はついつい厳しくしてしまう。
それは妹を見てきたから……子供の頃ベットで寝てばかりの妹は、外で遊べない代わりにずっと本を読んでいた。
学校に行けない代わりにずっと教科書を読んでいた。
妹は俺なんかよりも遥かに勉強が出来る。
そしてそれも……妹が病魔と戦って来た証。
出来ないなんて言うな、言い訳をするな……やっている奴がいるのだから……って……俺は妹からそう……学んだ。
【あとがき】
心骨折中(。´Д⊂)ピエン
次回更新は……?
妹と離婚するにはどうすれば良いのだろうか? 新名天生 @Niinaamesyou
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