第11話 また4人で
4人で遊んでいた。
と、いっても本当に4人で遊んだのは結婚式の後のほんの僅かな期間だけど。
幼い頃から入退院を繰り返していた妹、いつ家に帰って来るかかわからなかった。いや、わからないのは俺だけで、母さん達は、ある程度知っていたと思うが、俺にはいつ退院するか教えて貰えなかった。
多分俺が幼い頃、妹の退院が急遽中止になった時に、わんわんと泣き叫んだからだと思う。
退院して家にいる期間もまちまちで、1日だけの日もあれば、1週間の日もあった。
……当時の妹はそれぐらい悪い状態だった。
だから俺は毎日学校から真っ直ぐ家に帰り、いつ帰ってくるかわからない妹をひたすら待っていた。
殆んど出歩かず、友達ともに遊ばず……。
とはいえ、全く遊ばなかったわけではない。
いつ帰ってきても良いように、友達を呼んだりして俺は家で遊んでいた。
でも、妹が帰ってくると、どんなに楽しくても、ゲームが中途半端な時でも、俺は友達に帰ってくれと言った。
そんな事ばかりしていたせいか、やがて誰も遊びに来なくなった。
二人を除いて。
美空は隣に住んでいる、妹の事も知っていた。帰ってくれって言ってもすぐ隣なので怒る事も無かった。
夏生は従妹で、俺達と兄妹姉妹みたいな関係だった。
病気で殆んど学校に行けなかった妹の唯一の友達でもあったので、寧ろ家にいれば安心してくれた。
だから俺は美空と夏生とばかり遊んでいた。
妹が家に帰ってくれば、俺はずっと妹に付きっきりだった。
妹最優先、それは今でも変わらない。
一度居なくなるって思ったから、今の所その心配は要らなくなったけど、でもいつまたいなくなるとも限らない。
一分でも、一秒でも……一緒に……。
そしてまた4人で……一緒に……学校に…………。
「うええええええええええん、びええええええええええん」
「……まあ、残念だったな」
「うわああああああん、うえええええええええん」
「──えっと……夏生ちゃん……バカだったんだ……」
「うぎゃああああああああ、ぷぎゃああああああああ」
「おい、もう少しオブラートに包め」
「えーー、でもうちの学校そんなに難しい?」
「お前にとっちゃそうだろうけど……あれで一応進学校だから」
「ふーーん、そうなんだ」
「紗瑛知らなかったのか?」
「うん、旦那様と一緒に通うって事以外は、わりとどうでも良いから」
夏生は見事に落ちてしまった……。
受験失敗……いや、まあ、そんな事だろうとは思っていたけど……。
「うぴゃああああああああああ、ぴぎゃあああああああああ」
いつも事ある毎に泣き叫ぶ夏生……相変わらずのキモい泣き声……いや、あえてここは鳴き声と言っておこう。
「ハイハイわかったから、もう泣き止め、過ぎた事は仕方ない」
「そうだよ夏生ちゃん、ほら、近所の学校も受けるって言ってたじゃん」
「うひ、ぶひ、うき……も、もし……そ、そこも落ちたら……わたじ、立ち直れないいいい、びええええええええええん」
「ああ、もう、わかったわかった、来週だろ? まだ時間あるし、勉強教えてやるから」
「うん! 私も協力するよ!」
「ひぐ、ぶううう、じゃあ……何で今回教えてくれなかったのぉぉ」
「いや、うちの学校一夜漬けで合格出来るほど甘く無いから」
「夏生ちゃんがそこまでバカだって思わなかったから」
容赦ない俺と妹の攻撃ならぬ口撃に、夏生は可愛い顔をクシャクシャにして、ベタな漫画の様に、両手を目に当てて再び泣き出す。
「うあああああああああ、こ、この優等生兄妹があああああ!」
「いうて、お前だってそんなに成績悪く無かったんだろ? 小学校の時は……よく知らんけど」
「私、学校殆んど行って無かったからなあ、夏生ちゃんの学力は知らない、でもほら頭の良さと勉強は比例しないって言うか」
「うっさい、うっさい! さっきバカって言った癖にいいい、今さらホローなんていらない、やるよ! 今から勉強やるからあああ」
「ホローって……フォローだよ、follow 夏生ちゃん帰国子女なのに英語ダメとか救いようが無いって言うか……」
「ぷぎゃああああああああ!」
「そもそも勉強ってやる気にならないとやらない物なのかなあ?」
「おい、折角やる気になったんだからその辺で……」
いつも優しくおとなしい妹だけど、時折こうしてズバズバ物を言う癖がある。
怒ってる時や、がっかりしている時等、そして特に身内には辛辣な事を言う傾向がある。
病気だったので、ずっと甘やかしていたせいなのだろうか……。
しかし、良くも悪くも、妹にとって夏生は身内なのだ。
妹は心の底から残念がっている。そして一緒の学校に行けない事に腹を立てているのだろう……。
多分……妹にとって……夏生は……身内なのだ……俺以上に……。
【あとがき】
……とりあえず今月中に10万文字を目指します……。
(/。\)ピエン
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