第4話

 会社を退職して自分の店を持った。古着やネット通販と忙しい毎日が五年ほど過ぎて、人生とはこんなものなのかと思っていたときに病を得た。苦労して仕事をして得たお金をはたいて自分の店を持ったのに、五年ほどで畳むことになるとは、予想などできなかった。


 残された時間をどう過ごすのかよりも、今まだ元気に動けるうちに店の処分や猫のユキの行く先を考えねばならなかった。四十五歳で死ぬには早い気がするが、これと言ってやるべきことはもうなかった。

 両親はすでに亡くなっていたし、弟とは疎遠でもともと仲良くもなかった。彼もそぐわぬ相手と結婚して二年で離婚しているはずだった。母が生きている時に愚痴をこぼしていたと記憶している。

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