第3話

 こんな残酷なことがあるだろうかと呪った。

 自分が何か悪いことをしたのだろうか、毎日会えないことを電話で何度も尋ねることが重い女だったのだろうか。

 他に好きな女性ができたのかもしれない。自分は学生だけれど、仕事をしていれば、自分よりもふさわしい大人の女性が周りにいるだろう。悲しいことだが自分にはどうしようもない。

 ただ、理由を教えて欲しい、それさえ聞くことができればこんな年になっても聡史だけを思い、死んでいくこともなかっただろう。きちんと別れの場面を迎えてさえいれば……。

(私が悪いわけじゃない)

 いつもこう思いながら美咲は一人で生きてきた。小さい洋服や小物を売るセレクトショップを自分で経営しながら、一人、いつも一人で生きてきた。

 大学を卒業して大手の美容院専門・化粧品会社で二十年弱勤務して、時々声を掛ける男と、半年ほど付き合っては別れることを繰り返して、依存せず気持ちを与えることもなく。

 ただ男と付き合うために付き合う。過去に聡史に去られたことがトラウマになっていた訳ではない。男は必要だった。

 だが心を与えるだけの人はどこにもいなかったこと、残酷なまでに、つまらない現実だけが美佐を支配していた。聡史以外愛せない。

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