第19話 二度目の夏
そしてまた、この街で夏を迎える。
終業式の日、大知が成績表を見せに来た。
「すげえだろ。赤点無しだぜ。全科目平均点以下だけどな。補習に出なくていいんだぞ」
「今年は夏休みが満喫できるね」
「沙紀に赤点取ったら別れるって言われてたからな。頑張ったぜ」
尻に敷かれてるな。薩摩隼人らしいや。
「おまたせ。ヤマト、行くよ」
「二人でどこか行くの?」
「野暮なこと聞かないでよ。若い男女が二人一緒にやることって言ったら、アレしかないでしょ」
沙紀が大知の腕に絡みついて胸を押しつける。
「どうせ宿題だろ。図書館か?」
赤点はなくても平均点以下だった連中には夏休み特別課題が出たのを僕は知っている。
沙紀がふくれる。
「つまんない男だね。少しはノッてこいよ」
大知もつぶやく。
「実際勉強じゃんかよ。図書館は涼しくていいけどな」
「何、不満?」
沙紀が大知の脇腹に拳を押しつける。
「いいえ、こんなに素敵なカノジョに愛されて俺は幸せ者です」
大知は目を閉じて空を見上げながら、弱小チームのキャプテンが選手宣誓しているみたいに叫んだ。
「だってさ。へへ、うらやましいでしょ。爆発しろって思ってる?」
「うん」
正直うらやましい。
「あんたも来る?」
「お邪魔だろ」
「正解。じゃあね」
沙紀はあっさり大知を引っ張って行ってしまった。
なんだよ。誘ってくれてもいいんだぞ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます