第17話 第一印象悪い奴に限って長い付き合いになる

マキルガはぶつかった相手に謝ろうとした、が、その時気付いた。ぶつかった相手がリイカだと言うことに。

「ん? 何かどこかで会った?」もちろんリイカは相手が誰だか全く分からない。

「あんた……」マキルガは目の前にリイカがいる事実を噛みしめていた。

 暫く2人の沈黙した時間が流れる。

「立てる?」リイカがそう言って立ち上がると、マキルガは「自分で立てるわ」と言って、音もなく立ち上がり、ポンッポン、とスカートを叩いた。

「そう、じゃあ」そう言ってマキルガの前を通り過ぎようとすると「待ちなさい!!」とマキルガが呼びとめた。

 なに? と言う風にリイカが振り返ると、コホン、とマキルガは咳払いをして、胸を張った「私の名前は、マキルガ・シファー!! 代々続くシファー家の長女であり、新入生の中でニ位の成績を取る、高貴で天才な魔女!!」

「二位で天才って天才のハードルが」シドニーがすかさずツッコミを入れる。

「もう、あんたはいちいち突っ込まないでよ!!」

 二位で天才? リイカも同じことを思っていた。

「まあ、いいわ、リイカ・ポートフォリオ、あんたに」

「あ、私は、シドニー・ウェルザードと言います、以後、おみしりを」そう言ってシドニーはマキルガよりも先にリイカに握手をする。

「あ、よろしく、私はリイカ・ポートフォリオ」

「ちょっと、シドニィィイイイイ!!」

「あ、何? マキルガ・シファーさん」

「私の台詞、奪うんじゃないわよ!!」

「ああ、はいはい、わかったわかった」シドニーは、マキルガを軽くあしらうとリイカから離れた。気を取り直すようにコホンと咳払いすると、再び胸を張り、手を胸に当てて「私の名前はマキルガ・シファー、代々続くシファー家の長女であり、新入生の中でニ位の成績を取る、高貴で天才な魔女」あ、そこから自己紹介するんだ、とシドニーは心の中で呟く。

「ああ、うん」リイカもちょっと困ったような表情をする。

「あんたに話があるの」

「話?」すると、マキルガは自信に満ち溢れた表情をし、ツインテールを巻き上げ勝気な態度をとった。

「強い者、才能がある者はそれ相応の場所、友人が求められるの、脳が無いレベルの低い奴らと一緒にいると、才能も宝の持ち腐れになる。言ってる意味、分かるわよね?」マキルガは不適な笑みを見せながらリイカに近づく。

「……言っている意味が分からないんだけど」リイカは、少しマキルガの偉そうな態度にムッときていた。すると、マキルガは手を差し伸べて「友人関係は慎重に選ぶべきものだと言っているのよ。だから、この私と、とも……手をくみなさい。私があなたに魔女ってものがどういうものか教えてあげるわ、手始めに放課後……」

「断る」

「……なんですって?」マキルガは当然、自分の誘いを受け入れると思っていた。だから、リイカが断ると言った時、耳を疑った。この私の誘いを断るですって? 後ろでシドニーは、はあ、とため息をついている。

「なんでよ、私とあなたが組むことはなんのデメリットも無いと思うんだけど」

「断る、メリット、デメリットとかじゃない、あんたのその態度が気に入らないっていってんの」

「はあ!? 私はただ、あんたと、と、とも、じゃなくて手を組んであげるっていってんのよ!!」

「手を組んであげるって上から目線なのがますます腹が立つ」リイカは、苦虫を潰したような渋い顔をして、マキルガの誘いを再び断る。

 その時、「リイカちゃん!!」とリイカの後ろから、ミスケアがやってっきた。

「もう授業が始まってるよ!!」

「ああ、分かった、今行く!!」とリイカは、ミスケアに笑顔を見せた。

 その時、マキルガが「はあ!? あんた、その子と友達なの!?」と驚きの声を上げた。

「そうだけど、悪い?」リイカは睨み返す。

「その子、魔女どころかただの商人の娘じゃない!! 魔法だってそんなに扱えもしない、優秀とは程遠い魔女じゃない!!」すると、リイカは一瞬でマキルガに近づき、マキルガの胸倉を掴んだ。

「な……!?」突然胸倉を掴まれたので、マキルガは怯えた。

「次、私の友達を馬鹿にしたら許さないから」

「な、友達、ですって……才能があるものが、レベルの低い連中と付き合っていたら育つものも育たなくなるの!! 言ってる意味、分からないの!?」マキルガの言葉をリイカは「分からない」と叩きのめした。それでもマキルガは譲らない。

「あなたは私と言う優秀な魔女と友好を結ぶべきよ!! 何でそれが分からないの!?」マキルガがそう言うと、リイカはマキルガの胸倉を離した。

 キッとマキルガはリイカを睨みつける、はだけそうになった胸元を抑えながら。

「あの子が、レベルが低いわけ、ないから。それに、家柄とかで友達を選ぶあんたなんかと友達になんて絶対にならないから」

「な……!!」

「じゃ」そう言うと、リイカはその場から立ち去った。

 取り残されたマキルガとシドニー、「ふう、あんた、もっと普通に友達になろうとか言えばよかったじゃない」

「言ったじゃない!! ものすごく恥ずかしかったわ!!」(はあ、あんたは態度が尊大すぎるのよ)マキルガは、拳に力を入れすぎて震えさせて「許さないわ、この私の誘いを断るなんて、絶対に」と、立ち去るリイカを睨みつけた。

「この私を差し置いて、あんななんの変哲もない魔女と付き合うなんて、許さない、絶対に!!

見てなさい、私が圧倒的に潰してやるんだから!!」とかませキャラ臭いせりふを吐いていた。

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