第13話やっぱり最初の実戦訓練は熱い展開になる
その頃、ケンカは退屈そうな顔をしていた。
「随分と余裕なのね」そう言って近づいてきたのは、白銀の髪をしたレイシア、と取り巻きのようにレイシアの周りにいるロランとティナだった。ロランの方はちょっと怖気づいたようにウサギのように背を丸めていた。ティナの方は正に虎の威を借る狐のように、レイシアの横で偉そうにふんぞり返っていた。
「なんだ、お前か」ケンカが退屈そうな顔を見せると、それが気に障ったのかレイシアの目は吊り上がり鋭い刃ものになっていく。
「おい、あんまり噛みついてくるなよ、大体、私は別に余裕とかそんなこと思っていないぜ」
ケンカがそう言うとティナがレイシアの怒りを代弁するかのように「誰が獣ですか 獣は貴方の方でしょう!」と指を指して噛みついた。
「ティナ、やめた方が良いですよ、ケンカさん、すごく強いですよ? ゾンビ犬のように噛みつかれるかも」と怯えながらもロランは何気にケンカをディスった。
「おい、ゾンビ犬じゃねえぞ私は」とケンカがツッコミを入れると、レイシアは落ち着いたようである、相変わらず鋭い目をケンカに向けると、「まあ、いいわ、この魔法実践でせいぜい私と対決しないことを祈ることね」
「お前が私の味方をするかもしれないぜ?」
「それはない、そしたら、私は抗議する」一方的な意見を押し付けてレイシアは踵を返す。
「どんだけ私のこと嫌いなんだよ」ケンカは面倒くさそうな顔をしてレイシアをみる。
「それでは、これより、魔法実践の授業を始める」担当をするのは、女なのか、男なのか分からない筋骨隆々の肉体をした(一応)魔女、シェミラ・キリングス。
「お前たちに今回してもらうのは……」そう言いかけた所で雨がポツ、ポツ降ってきた。
他の生徒から、え? なに? 雨? もしかして中止? と不安の声が湧き上がる。
「フム、やむ終えんな、少しまっていろ」そう言うと、何も言わずにシェミラ先生は手を上げた。
すると、すぐに雨がやみ、やがて暗雲を消し、太陽の光が届くような晴れ模様となった。
シェミラ先生は天気の魔法を操る、自分の周りだけではなく、ありとあらゆる場所の天気の様子を見ることができ、自由自在に変えることが出来る。その他にも、吹雪や砂嵐を起こしたり、正に万能の魔法である。
「すご」リイカは思わず感動して声を漏らした。
改めてと言うように、コホン、と咳をしてシェミラ先生は、何やらバルーンがくっついてある、体に巻き付ける装置のようなものを取り出した。
「今回は初めての授業であることもあり、これからお前たちに行ってもらうのは、対人、人型のキメラの対策とした基礎の訓練だ」人型キメラ訓練か、単純明快!! とリイカは思った。
「お前たちには、全身にこの装置をつけてもらう、このバルーン5つにはそれぞれ点数がある、
頭、そして胸の部分は5点、両肩は1点、両足は2点とする。もちろんすべて割られた者は問答無用で負けとなるが、制限時間が終わり、バルーンが残った時は、点数の大きいものが勝つ? どうだ? 単純だろう?」シェミラ先生がそう言うとリイカが「いいねいいね、分かりやすくて最高ーオヴェ」と騒ぎ立てたところシェミラ先生の無慈悲なチョップを浴びた。
「な、なにすんのさ打ち合わせウヴぇ!!」またもチョップを食らう。
「こちらからすれば突然騒ぎを立てる方がなにをすると言いたい」冷静に言うものの瞳に帯びてある熱はリイカに反論を許さず、更には周りの生徒にも騒ぐことは許されない、そんな雰囲気を感じるさせる程の迫力であった。
「は……はい」
「よろしい」そう言うと、リイカに何も書いていない紙が渡された。
「え? 何ですか? これ」
「お前は元気がありあまっているようだから初めに実践をすることにした」
「ホントに!?」リイカは目を輝かせようとしたが、シェミラ先生の目の圧力で「すみません」
とたじろいだ。
やがて、シェミラ先生はその紙を全生徒に、渡した。
「その紙から、対戦相手を結ぶ線が出てくる。結ばれたものはただちに前にくるように、では、リイカ・ポートフォリオ、お前の対戦相手を決めるぞ」そう言うと、リイカの紙から、花火のような火花がパチパチと飛んできた。そしてそれは、すぐにある魔女生徒の紙に結ばれた。
よし!! さあ、私の相手はだ~れだ? あの嫌味なレイシアって魔女かな? それとも、ミスケアと早速、運命の決闘ってやつ?
と思っていくとそこには「あー!! あんたはあの時私に席を案内してくれた!!」「よろしく ケンカ・エルソードだ、ケンカでいいぜ」と手をひらひらさせている、ケンカがいた。すると、周りの生徒がガヤガヤと喧噪を起こした。
「まあ、獣対獣ってわけね、まあ、片方はゾンビ犬程度かもしれないけれど」と不適に微笑むレイシア。他にも生徒たちが「こりゃ開幕から面白いもんが見れるな」とか「学校がこわれなきゃいいんだけど……」と言う魔女生徒がいた。なに? ケンカってそんなに強いの? リイカがそう思っていると、ケンカは相変わらず手をヒラヒラさせている。おもしろいじゃん、相手にとって不足なし!! ケンカは多少、不安な思いに駆られたが、己を鼓舞してぎこちない笑顔を見せた。
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