第9話 ライバルはやっぱり嫌味な奴が定番
「楽勝だな」リイカの財布を盗んだ、生徒、ヴァルセレ・ファントムシーフはそう言って二やつきながら空を飛んでいた。
「これで、大量の焼きガエルを買ってやるぜ」そう言いながらペロリと舌なめずりをする。
「まてぇぇええええええええ!!!」突如、何者かが自分を追う声に何だと思って振り向く。
ヴァルセレはギョッとした、目が飛び出るくらい衝撃的であった。さっき自分が振り切った魔女が空を箒なしに、トランポリンのように蹴り撥ねながら、飛んでるのか、はねているのか分からない動きで自分をおってきた。
「おいおい、何なんだよ、ありゃあ」呑気にしている場合じゃないと思ったのか、箒を最大出力を出して。飛び去って行こうとする。しかし、リイカはそれを許さない。
「ちょっと、も~、あったまきた!!」リイカは空気を思いっきり踏みしめた、空気はばねのように伸びていく。「せ~っの!!」次の瞬間、思いっきり、空気を蹴り上げ、リイカの体は空気に押し出さて、ヴァルセレの元にジェット機のように飛んでいく。
「うお!!」そして、そのまま、ヴァルセレの元に激突。
「捕まえた!!」
「リイカ・ポートフォリオさん、ヴァルセレ・ファントムシーフさん」その後、実は2人の様子を見ていた、シルヴィーユがナパーム先生に連絡し、それにより、リイカが捕まえた直後、後ろで怒気を放っていたナパーム先生によりあっさりと捕まってしまった。
そして、今に至る。先ほど見せた、微笑みはどこに行ったのか、目は針のように鋭く吊り上がり、顔中の皺は怒気を放っていた。
「あなたたちは本校の生徒としての自覚があるのでしょうか、あればこのようなことはいたしません、時に……」再び、リイカは職員室からでた、違う所は、さっきとは違いリイカの顔はげっそりしていた。
「あぁ~、思い切り怒られた~」そう言って肩を落としたがふと、自分の財布を盗んだ魔女が自分の隣にいないことに気付き、あたりをキョロキョロ見渡した。
すると、何もない所から「何なんだ? お前」と声がしたかと思うと、ヒラリと紙が広がるようにその魔女が現れた。
「何なんだって、こっちの台詞よ!! あんたのその体、まるで紙じゃない!?」驚くリイカに対してその魔女は「なんだよ、そう言う魔法なんだよ」と平然とした態度をとった。
そこで、リイカは気付いた。「もしかして、あんたの魔法って」その答えは目の前の魔女によりかき消される。
「そう、私の魔法は紙の魔法、自身を紙にしたり、紙を操ることには長けている」(う・そ☆)
「へえ、そうなんだ、って、そうじゃなくて!!」とリイカは魔女を非難しようとしたが、魔女はキラキラした目で「それより、お前だろ!? 入学式の時にキメラを倒していたって言う
破天荒な魔女って言うのは」破天荒かどうかは分からなかったが確かにキメラの元に向かっていた入学生の魔女はリイカ1人しかいない。すると、「私のなまえはヴァルセレ・ファントムシーフ、お互い、うまくやろうじゃねえか」と自ら名を名乗り、何かメモを渡したかと思うと、「じゃあな!!」と言って、リイカの前からいなくなった。
「もう、一体何なのよ」とリイカは渡された、メモの中身を見る。そこには、(財布の中身は頂いたからな)と書かれてあった。リイカは慌てて財布を見るともう金はもぬけのからだった。
「はぁぁ」やっと、自分のクラスに着き、リイカは溜息を着いていた。
ただ、教室に着くだけなのになぜ、こんな苦労をしなければならないのか、そんなことを思っていると、リイカは、重大なことに気付いた。
(あ、自分の席どこだか分かんない!!) 入学式までいなかったリイカは自分の席がどこにあるか全くわからなかったのだ。どうしよう、どうしよう、とりあえず、周りの魔女に聞かなくちゃ、とリイカは近くにいた長い銀色に近い白髪をした魔女に「あの、ごめん私、その、入学式までいなくて、自分の席を教えてほし」「馬鹿が映るので話しかけないで下さいますか?」
その魔女の一声で、教室中が静まり返った。さっきまで話していた魔女はみんな話をやめてこちらを見る。
「そのボロボロの服、キメラを討伐したかどうか知りませんが、あなたのような英雄気取りの馬鹿が、私は一番きらいなんです」と白銀の少女はリイカを睨みつける。
「あのさ、私は、自分の席がどこにあるか知りたいだけなんだけど、英雄気取りかどうかは知らないけど、それくらい、教えてくれたって良いんじゃないかな?」あふれ出る怒りを抑えながら、リイカは嫌味な魔女に向き合う。
「あらあら、そのような獣の目、とても高貴あるレッドクロスアート魔法女学院の生徒とは思いませんわ、正に、蛮勇と言う言葉がふさわしい」挑発を交えた瞳で、リイカを見る。リイカは、ここで背を向けたら負け、何かまた言われると思い、離れない。一方、嫌味な魔女もリイカから視線を外さない。
「真ん中の一番前の席」その声の方向に、2人はバッと振り返る。
そこには、制服を着崩し、魔女にもかかわらず胡坐をかいていて、右の髪をを結んでおり、左の髪がセミロング程に伸ばしている金髪の魔女が気だるそうな、何もかもつまらなさそうな顔をして窓際に座っていた。
「ケンカ・エルソード」嫌味な魔女はそう言った。どうやら、窓際にいる魔女の名前のことだとリイカは理解した。
「ありがとね、ええと」
「ケンカ、ケンカでいい、エルソードってなんか尊大で、ちょっと恥ずかしいんだ」
そう言って、少しリイカにタンポポのように柔らかい笑顔を見せた。
なんだ、この子は良い魔女じゃん!! とリイカは感じ「ありがとね!!」と言うと、自分の席に向かった。再び教室の魔女たちは時間が動きだしたように話し始めた。
「あんまり、つっかかんなよ、レイシア」レイシアと呼ばれた嫌味な白髪の魔女はケンカにギロリと刃物のような眼をすると「いつまで、制服を着崩しているつもりかしら」と聞く。
すると、ケンカは、ん?と言うような顔をして「ああ、これのこと?」と自分の着崩した制服を指さした。呑気そうな態度と反比例にレイシアの態度はどんどん鋭いものに変わっていく。
「あまり調子にのらないことね、貴方も、絶対に私が潰す」目で刺すかのような視線をケンカに向ける。ケンカは、刃から目をそらさずに真っ直ぐ見て、ゆっくりレイシアに近づく。レイシアも全く引くに劣らずそのまま鋭い刃をまっすぐケンカに向ける。やがて、口と口、目と目が今にも刺しそうなほど至近距離に近づいた。
「やれるもんならやってみろ」ケンカは少し不適な笑いを浮かべ、そう宣言した。
「……すな」
「あ?」ケンカは何を言っているのか分からず、聞き返した。
「私を見下ろすな」レイシアとケンカは大体同じ背丈をしているように見えたが、僅かにケンカの方が高かったようである。レイシアは僅かでも自分が見下ろされていることを感じ、それが怒りという火に油を注いだ。目は刃物だけではなくて、目には見えぬ業火が宿り、そのままケンカの喉元をかき切るのではないのかという勢いがあった。ケンカはそれに対し挑発するように不適な笑みを浮かべながら、首を上げて、明らかにレイシアを見下ろした。まるで、喉を噛みちぎるものなら噛みちぎってみな、と挑発しているようであった。レイシアの瞳孔が一瞬にして開く、正に一触即発。そこに、「レイシア様~」と2人の魔女がレイシアの元にやってきた。「あら、ロラン、ティナ」
「もうすぐ、授業が始まってしまいますってそこにいるのは、不良魔女、ケンカ・エルソード!!」
「だぁから、そのエルソードって言うの止めてくれ」レイシアは先ほどまでとは一変、スポンジケーキのように柔らかい瞳、触れる人を安らぎを与える、そんな目をロラン、ティナと言う2人の魔女に向けた。ケンカも不適な笑みを止めて気だるげそうな顔に戻った。
「そうね、そろそろ座らないとね」レイシアはそう言って、ケンカに目だけを移した。その目は殺意の残り香がこもっていた。
「せいぜい、今の内に調子に乗っていることね」
「ああ、そうさせてもらうぜ」そう言って、ケンカは自分の席、窓際の席へ戻る。
「本当に腹立たしい、レッドクロスアート魔法女学院、新入生、最優秀魔女、ケンカ・エルソード」レイシアは歯を食いしばりながらそう呟いた。
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