第8話 理想の学校生活を書くと自分もこんな生活送りたかったなぁと思う
「遅刻してすみません!!」教員となる先生が集まる教員室で、リイカは担任であるブルコーニュ・ナパーム先生に謝罪をしていた。灰色の髪そして顔の周りの皺はかなりの年配であることを表していた。ホホホと笑いながら、眼鏡をクイッと上げると「いいのよ、リイカ・ポートフォリオさん、学校の入学式よりもスイークタウンの人々の命をを優先させたと言うことでしょ? なら、なにも謝る必要はないわ」と優しい声音で微笑みながら言った。
「いえ、でも未熟な私が向かうことでもしかしたら被害が大きくなっていたかもしれませんし」
リイカは、慌ててナパーム先生にそう言った。言っていたことは本心であった。決して謙遜などではなかった。実際、バーレスク先生が来なければ、あそこでキメラたちにやられて命を落とし男の子を助けることはできなかったのだ。
すると、ナパーム先生は、微笑みをやめたが、相も変わらず、優しい笑みを浮かべていたが目は怒りという感情ではない、言ってみれば真剣と言う表情をして「それが分かっていればよろしい、以後、ここでしっかり学び、遊び、精進していくこと」と声は優しかったが少し真剣な表情からか、すごみを帯びさせながらそう言った。
「はい!!」リイカはそう言うと、教員室を後にする。
「はぁーあ、もうクラスの魔女たちはみんな友達つくってるのかなぁ、嫌だなぁ、私だけで遅れていて友達がいなかったら」
1年のクラスは4クラスに分かれている。
アステルセイス
ティグレスセイス
ヘルヘイムセイス
ドラグセイス
別にどれが落ちこぼれでどれが天才と言うわけではなかった。生まれが貴族、平民と言うことも無かった。
他の魔法学校では、クラスによって優劣、それか平民か貴族かを決めつける所もあるが、レッドクロスアート魔法女学院はそうではなかった。必ず、クラスごとに優秀な生徒を入れてそのクラスで切磋琢磨させるシステムだった。今年の生徒は誰がその優秀な生徒かあかされていない、だが魔女生徒たちの噂で、あの人ではないか、と言う人物はそこらかしこにいる。どちらにしても、箒に乗って空を飛ぶことができないリイカとは無縁の話だった。が新入生ではないが、1人だけ優秀な生徒をリイカは1人しっていた。その人物のことを考えてリイカは嫌な顔をしていると、ドンッ、とリイカはある生徒と曲がり角でぶつかってしまった。
「あっすみませ……ゲッ」とぶつかった生徒は、滑らかな黒髪をしていた。
「こちらこそ申しわ……」相手も、リイカと同じように、苦虫をつぶしたような嫌な顔をした。
「あんたは、シルヴィーユ」
「学校では、シルヴィーユ先輩でしょう、リイカ・ポートフォリオさん」
リイカはここで一番会いたくない嫌な奴と遭ってしまったしまったと己の運命を嘆く。
すると、返事をしないのを不審に思ったのかシルヴィーユは「あなた、まさか私のことを忘れたの?」と腰に手を当ててリイカに詰め寄った。リイカはシルヴィーユのこういった高圧的な態度が気にくわないのだ。すると、リイカは負けじとシルヴィーユに詰め寄り鼻をブワァっと開けて「知っているわよ!! シルヴィーユ・フォスティフォス!! 名家フォスティフォス家の長女で、使う魔法は石魔法!! 好きなものはベーカ堂のメデゥーサメロンパン!! 動物だと猫が好き!! 近所からは気品があり近寄り難い雰囲気はまるで大地に咲く一凛の薔薇のよう、落雷、吹雪に耐える一匹の美しき獣!! そして、なにかと上から目線の偉そうで高慢ちきな……」
「もういい!! もういいから!!」周りの生徒が視線を集めているのにたえきれなかったのかシルヴィーユは目をつぶりながら顔を真っ赤にしてリイカの説明を制止させた。
「はあ、はあ、と言うより、後半、私は聞いたことが無いんだけれど」
「近所の人が言ってた」
「上から目線の偉そうで高慢ちきも?」
「それは私のけ・ん・か・い」そう言うと、シルヴィーユは少し目を吊り上げ、リイカを睨んだ。リイカは何か言われると思い、耳を塞ごうとした。すると、シルヴィーユは滑らかな黒髪を手で櫛をいれて振り上げ、その姿を見たリイカは嫌味ったらしいと思いながらオエーっと口を動かした。
「まあ、いいわ」意外にもリイカの言ったことに対するお咎めは何も無かった。
「リイカ」
「何」リイカは、ジト目で上目遣いをしながらリイカを見る。
「あなたは、今も、あの夢を持ち続けてるのかしら?」
みんなを笑顔にする魔女になる!! あの日、亡き友のテスカと共に誓った夢、それは今も変わらずに持っている。
「ええ、今も持っているよ、悪い?」強気な態度をとり再度シルヴィーユにつめよる。
シルヴィーユの目は変わらずにリイカをしっかり見つめていた。しかし、その目は氷のように冷ややかな目をしている。リイカは自分の心を覗かれたようになり少し鳥肌が立った。
「リイカ、それは本当に貴方の夢なの?」
「は? 何言ってんの? 決まってるじゃん!! これは、誰でもない、私の夢!!」
負けじとこちらも真っ直ぐ見つめ返す。すると、やがて、シルヴィーユは冷たい目を止めた。
「そう」そう言って、立ち去ろうとする。自分の前を取り過ぎたかと思うと、後ろをむきながら「リイカ、あまり過去に縛られないことね」意味がわからず「それって、どういう」と聞き返そうと思ったら「それと、ここではあなたのように勢いだけでうまくいけるようなところではないので」と言って、リイカを後にした。するはずだった。
「待って!!」突然のリイカの呼び止めにシルヴィーユは振り返る。
「超えるから、私はアンタを超えるから!!」その言葉に少し脇腹をつつかれたように驚いた表情をするシルヴィーユ、やがて、すぐに元の平静を装い「そう」そう言って再び動き始める。
リイカは真っ直ぐ見つめている。そして、もう遠くなりそうな所で「それまで、精進することね」と言った。気のせいか、表情は見えないがその声音は少し笑みを帯びているようにも思えた。リイカは、目を大きく丸くさせた。その瞳は、宝石のように輝いていた、が「やっぱり偉そう、なによ、精進しなさいって、どこまで上から目線なのかしら」と目を細くして濁らせていた。
シルヴィーユの態度に嫌味を覚えながらも再び、リイカは自分の教室、アステルセイスに向かっていくが、その時、ドンッとまた何かとぶつかった。
「うわ!!」
「おっと、ごめんよ!!」その人影は突然自分の前に現れた。曲がり角でもないのに。激突によりリイカは体を大きくのけ反らせて、大きく尻餅をついた。
「いたたたた」と言ってると違和感に気付く。
ない、ないのだ、自分のポケットに入れていた財布が無いのだ。
「は!!」気付いて振り向くと、2つに分けた前髪のロングヘアーの目つきの悪い魔女が「へへへ」と意地が悪い笑いをしながら逃げていく。
「ちょ……待て!!」リイカは瞬間、走り出した!!
「はえ!!」盗人は驚いて前を向いて走りに集中した。
そのまま2つの嵐が廊下を駆け巡った。通り過ぎた後は、紙は剥がれ、生徒のスカートは疾風でめくられてキャー!! と叫びながらスカートを手で抑える。途中ナパーム先生がいたが2つの嵐はそんなことはお構いなし。勢いよく通り過ぎて、そのせいで付けていた眼鏡が吹き飛んでしまった。ナパーム先生の表情は微笑みのまま変わらない。
「待て!! こら!! せい!! とりゃ!!」リイカは何回も捕らえようとするが盗人はひらりひらりと躱す、その姿は紙の様であった。
「とりゃ!!」と盗人を捕まえる。やっと捕まえたかと思ったが、クシャっという妙な感覚に襲われる。見ると、盗人の形をした紙だった。どこにいる!? と思い、辺りを見回していると、窓の外に、盗人がクスクスと笑いながら箒に跨ってる姿が見えた。
「な、なんだってー!?」盗人はそのまま、空に窓から離れていった。
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