第141話 真実2



ある種族がいた。




その種族は宇宙で一番最初に生命として誕生し、その能力は絶大で、その者達に出来ぬものはなかった。


全知全能で、どんな物も創造する事ができ、住む星を離れ、宇宙を光以上の速さで飛び回る事も出来た。


更に不老不死であり、その者達は無限の時を過ごした。


ただ、数は少なく、その星にある【生命の泉】から誕生したその種族は、種を作る事が出来ず、誕生に必要な泉の量がなくなると、それ以上増える事はなかった。




そして、悠久の時を経て、様々な星が誕生し、生命が生まれていった。




その者達は欲がなかった。



その絶大な力を使って他の星を支配する事はなく、ただ誕生し、広がっていく生命の星を静かに見守っていた。



自分達を【管理者】と呼んで・・・・・。



そしてある時、【それ】が起きる。



最初は、ある星から起きた、ほんの些細な【淀み】だった。



その淀みは消える事はなく、時間をかけて徐々に大きくなっていった。



生物がその淀みにのまれると、想像を絶する苦しみが襲い、死に至った。木や花さえも腐らせ、荒野へと変えていった。



そしてその淀みは、星を全て飲み干し、宇宙へと広がっていく。



見守っていた【管理者】達は、危機を感じ、すぐに調査したが、今誕生している星々ではこの淀みを防ぐことは不可能と結論付けた。



そこで【管理者】達は、自分達の手で、淀みに強い星を作り、宇宙に誕生している生命を出来る限り転移させようとした。




それは、想像を絶する辛く、長い旅路だった。




淀みから一番離れた所で星作りが始まった。


その管理者たちは、無の所から、少しづつ星を作り上げていく。



自分達の命を削って。



管理者たちは皆、死は恐ろしくなかった。



悠久の時を過ごし、星を見守り、宇宙に住まう生命に愛情の心が芽生えていたから。



少しでも宇宙の生命が守れるのなら、喜んで自分の命を投げ出した。




そうして作り上げたその星は、地球と同じ位の星となり、


名を『THE WORLD OF TRUTH(真実の世界)』と名付けた。




そして、管理者達の生命エネルギーによって完成した時には、4人の管理者のみとなった。


その四名は、星を作り上げた多くの仲間を悼み、この星を守る事を誓った。




一人の名は、エメリアル=ホワイト。

別空間に作り上げた【天界】を担当した。


一人の名は、シャイン=ブラック。

別の空間に作り上げた【魔界】を担当した。


一人の名は、セービット=ファウスト。

この星の【現界】を担当した。


そして最後の一人、ケイト。

【真実の世界】全体を担当した。






【淀み】が拡がり、宇宙を全て侵食する最後の最後まで、何万、何千年と長い年月をかけ、宇宙にいる生命を転移させて、この星を永遠に存続させる為に。










☆☆☆










「・・・・・そうですか。この世界に住む人たちは、私も含む、皆、宇宙のどこかの星々から来た別種族の方達だったのですね?」



シュバインが言う。



「そうよ。でも、最近転移させた貴方達と違って、だいたいの者達は遥か昔に少しづつ転移させたから、転移の事実を知る者達はいないわね。転移させた者達には子孫にその事を話せない術を施したから。」



ケイトが紅茶を飲みながら言う。



他の者達はあまりの事実に唖然としていた。



「では、地球がその淀みではなくて、何故隕石だったのですか?」



「あぁ。その事。・・・・・その淀みは、触れただけで、もの凄い苦しみに襲われるの。しかもすぐに死ねずにね。だから、淀みが星を飲み込む前に、ひとおもいに苦しまずに殺す方法をとっただけ。」



「ちょ、ちょっと待って!それじゃ私も、隣のバルバッサも、ここに居る皆、違う種族だって事?」



ミッシェルが聞く。



「厳密に言えばそうなるわね。貴方の祖先がどの種族だったのかまでは分からないけど・・・・・ただ、転移させるのも二つのパターンがあってね。

 そのままの状態で転移させる場合と、私達が創った素体(アバター)に命を転移させる場合があるの。それによって違いが出るわね。

 最近で言うなら、シュバイン博士達、地球の人達は最後の素体を使って転移させたし、最後の生き残りのクリスタル人はそのまま転移させたわ。」



「・・・・・にわかには信じられないですね。何故、そこまでして私達を?」



ジョアンが聞く。



「悲願だからよ。・・・・・私達は、貴方達を・・・・・この宇宙における全ての生命を愛していた。だからこの宇宙で、淀みが全ての生命を奪う前に、私達が創ったこの星に少しでも多くの生命を避難させたかったの。」



シュバインは考えながら紅茶を一口飲むと、ケイトに聞く。



「今、貴方を入れて【管理者】は四人と言っていましたが、他の方は?」



「・・・・・この星を創るには、膨大なエネルギーを必要とするの。この星は・・・・・私達以外の仲間が全ての力を使って誕生させたわ。・・・・・私達に託してね。

 だから、私はこの【真実の世界】を守らなければいけないの。普通なら死ぬことのない仲間達が全てを使ってこの星を創ったのだから。」



「・・・・・・・。」




皆、黙ってしまった。




あまりの事実に、あまりの非現実的な答えに。




シュバインもある程度の予想はしていたが、答えが・・・・・真実がここまで思っていたのとかけ離れていたのは初めてだった。




「そうそう。わざわざここまで訪ねに来てくれから、今日はこの城に泊ったらどう?夕食も出すし、歓迎するわ。」



「いいのですか?」



「ええ。久しぶりのお客ですからね。貴方達の話も聞きたいわ。」



シュバインは仲間を見ると皆頷く。



「ありがとうございます。それではお言葉に甘えて泊まらせてもらいます。」



「そう!それじゃ、居間へ案内するわ。・・・・・ロイージェ、お願い。」




そう言うと、ロイージェは一礼し、シュバイン達を引き連れて部屋を後にした。




ケイトは一人、残りの紅茶を飲み干すと呟く。




「・・・・・シュバイン博士。やはり彼は頭がいいわね。実力もあるし・・・・・彼も候補の一人にしましょうか。」










☆☆☆










僕はニヤリと笑いながら叫ぶ。




「くるぞ!」




背が低く、1m程しかない甲冑を着た魔物。両手には短剣と中剣の間位の剣を二本持っている。



それが約100体。



僕達の数十メートル先から一斉にこちらへと向かって駆けている。



同時に僕も駆ける。



その後を白雪、ラフィン、エメが並んで後についてくる。



キリアとカイトはその場で左右に分かれて位置につく。



そして一番後ろでアイリが僕達に向かって補助魔法をかけた。



先頭を走る僕に向かって、魔物の3体がジャンプをしながら剣を構える。その下から数体が駆けて同じ様に剣を構える。



僕は構わずその中へと愛刀【WHITE SNOW】を片手に突っ込む。




「いくぜ!!!」




ザザザザザンッッッッッッッッッ!!!



ボボボンッ!!!!




空中に飛んでいた魔物達は離れた所からキリアが放った爆裂魔法を受けて吹き飛ぶ。



僕は魔物の集団に入り込むと、複数の相手の剣を躱しながらカウンターでどんどん斬りふせる。




トーーーーーン・・・・・・ザシュッッッッ!!




その後に続いて白雪が軽いステップでジャンプしたかと思うと、両手の剣で2,3体の魔物を一瞬で切り刻む。




「はっ!」



ドンッッッッッッッッ!!



ラフィンが掌底で鎧もろとも破壊しながら倒していく。




ザンッ!ザンッ!ザンッ!




エメはその長剣で僕の横から襲って来る魔物を薙ぎ払う。



僕は多数の魔物と戦いながら自然と笑みがこぼれた。




うん!




やっぱり冒険は楽しい!!!




クリスタル帝国との戦い。



友を失った悲しみを乗り越えて、久しぶりに新生【ホワイトフォックス】として冒険に出た。



ここ最近、新しいダンジョンが多数発生していた。


冒険者達はここぞとばかりに、その新しいダンジョンへと向かって攻略を始める。


新しいダンジョンは未開の地の為、見た事のない宝やレアアイテムが見つかる事が多い。


その為に、冒険者協会で発生した情報を得ると、皆、すでにあるダンジョン攻略を中止して新たなダンジョンへと向かうのだ。


しかし、それには危険も多く伴う。


魔物のレベルも分からず、マップもないからだ。


一層から自分達より強い魔物に当たる可能性もあり、死者も多く出るのが新ダンジョンである。


だから冒険者協会も、攻略対象は大きなクランや、A級以上の冒険者となっていた。



その内の一つ。



まだ名もついてない新ダンジョンに僕達は来ていた。


このダンジョンは一層一層、景色が変わり、今は広い平原に来ている。


そこで戦っているのが、小さな鎧を着た100体以上の魔物。


素早く、スピードや連携もあるが、僕達には到底及ばない。


100体以上いた魔物は、ものの数十分で全滅した。




僕は魔光石を回収しながら、一緒に回収している皆を見ながら思う。




人数が増えたせいか、凄く安定しているな。


僕を含めてアタッカーが4人。


中、遠距離で攻撃するアーチャーと魔法使いの2人。


そして回復と補助魔法の両方を兼ねたヒーラー。


結構レベルが高かった100体以上いた魔物が、僕達の布陣を崩す事はなかった。


やはり、一番大きいのはアイリの存在だ。


今までキリアが担当していた事を、アイリがやっている為、キリアが攻撃に専念できる。





「アイリがここまで成長するなんてなぁ。負けず嫌いで、ツンデレだったアイリがねぇ。」



「レイ!・・・・・何か言った?」



「いえ。何も言ってません。」




地獄耳か!!!





僕は心の中で突っ込んだ。









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