第124話 デート3
「ガイルズ!」
『アルク帝国』皇帝ガイルズは、エリアスと数人の【鳳凰の羽】部隊を従えて会場へと向かっていると、横から真っ黒に日に焼けた精悍な男が声をかける。
後ろには、同じように日に焼けた数人の屈強な戦士たちが付いてくる。
「おぉ!ルトゥールではないか!」
二人は抱き合い再会を喜ぶ。
ここは、世界で唯一の中立国『ピリカ』。
その首都『ミューズ』で三年に一度開催される、世界中の国の代表が集まり会談する場にガイルズは来ていた。
世界中の国といっても、全てではなく、この会議に加盟している国だけで、数だと全世界の半分位だった。
「ところで来るのか?・・・・・例の者達は。」
南の大国『ナイージャ』の王。ルトゥールが聞く。
「その様だな。この会談を行う数ヶ月前に、議長国の『ランス』が呼んだらしい。」
「なるほどな。気になっていた所だ。ならば、どんな者達か見極めさせてもらうか。」
二人の王は、側近達と共に会場へと向かって行った。
☆☆☆
「・・・・・以上で、今回の会談は終了とする。・・・・・最後に、皆、知っていると思うが、数年前、突如この世界に新しい者達が現れた。
私が打診した所、快く応じてもらってね。
この『ピリカ』に来てもらった。」
議長国『ランス』の王、クラフトシージが立ち上がり、入口の守衛に合図すると、大きな扉が開く。
入ってきたのは、10名ほどで、先頭は60歳位だろうか、目は金色で、髪は青い。そして見た事のない服を着ている。
顔立ちや雰囲気は、歳を感じさせない程の鋭いオーラを放っていた。
その男は、指定された席へと座ると言う。
「・・・・・お初にお目にかかる。私は『クリスタル帝国』皇帝、バルテミス=クリスタルだ。」
ザワッッッッッッッ!!!!!!!
「クリスタル帝国だと?」
「初めて聞いたぞ。」
「どこから来たのだ?」
とても大きな円テーブルに座っている各国の代表がざわつき始める。
バルテミスは構わず続ける。
「今日来たのは、皆に、我が国の名前を知ってもらいたかったので、顔を出させてもらった。・・・・・この世界に来てまだ日が浅いのでな。よろしく頼む。」
すると、聞いていたガイルズが言う。
「『クリスタル帝国』といったか。お主は外海にある島国を支配した。今後はどうするつもりだ?この大陸へ侵略を始めるのか?」
「・・・・・つい最近、どこかの傭兵に手痛い傷を負わせられたのでな。・・・・・その復興中だ。・・・・・今は考えてはおらんよ。」
「今は・・・・・か。」
ガイルズは鋭い目でバルテミスを見ている。
「さて、挨拶は済んだな。帰らせてもらおう。今後は、我が『クリスタル帝国』をよろしく頼む。・・・・・そちらの『アルク帝国』皇帝、ガイルズ=レンベルもな。」
そう言うと立ち上がり、バルテミスは会談場を後にした。
「・・・・・ガイルズよ。どう思う?」
ガイルズの隣に座っている『ナイージャ』の王、ルトゥールが聞く。
「ウム。・・・・・おそらく近い内に来るだろうな。」
「やはりお主もそう思うか。・・・・・我が国も相応に備えておくとするか。」
ガイルズと、ルトゥールは去っていった扉を真剣な眼差しで見ていた。
会談場から出たバルテミスは歩きながら思う。
・・・・・【管理者】と呼ばれるセービット殿が来て、我がクリスタル帝国が支配していた星が滅ぶと言われたのが10年前。
三億人のみ新しい星へ転移する事を約束してくれが、私はセービット殿に願い出た。
二億人でいいから、その分、この帝国の技術や主要の建物をそのまま転移出来ないかと。
そうすれば、すぐに準備が整えることが出来て、この星を支配する事が出来ると思ったが・・・・・私がいた世界より今のこの世界はとても大きい。
いくら、我が帝国が強くても、全ての国を敵にまわすのは得策ではない・・・・・か。
後ろで歩いている側近達に言う。
「これである程度の牽制は出来ただろう。・・・・・すぐに準備をしろ。」
「ハハッ!!」
すこし後ろから離れて歩く【7星】のエルビスは、その様子を見て、隣にいる皇帝と同じ様に青い髪で金色の目をした若い青年に話す。
「・・・・・どう思われますか?」
「今回の計画はうまくいくだろうね。・・・・・世界はまだ僕達を様子見している。
しかも今度は多くの【7星】が出るからね。」
皇帝の後姿を見ながら、
皇子オーシャン=クリスタルは思う。
・・・・・今回はうまくいくだろう。
・・・・・今回は。だがおそらくあの人は時間をおかずに、更に広げようとするのだろうな・・・・・。
この世界はまだ分からない事だらけだ。
・・・・・我が帝国の頭脳。
【マレ】は、ある程度の情報を元に解析する。
だが、この間の解析不能の傭兵の様に、何の情報もなかったり、特殊な能力で、力を隠している者達だっている可能性が高い。
・・・・・私だったら、もっとこの世界を把握して、しっかり地盤を固めてから動くのだがな・・・・・。
私が言ってもおそらく父は聞かない・・・・か。
オーシャンは、エルビスを見て言う。
「【7星】は今後忙しくなると思うけど、よろしく頼むよ。・・・・・だけど、貴方達は我が帝国の最大戦力だ。何かあったら引いてくれよ。
・・・・・今後の私の為に。」
エルビスは微笑むと言う。
「了解しました。」
二人は一番後ろで話しながら、空中で止まっている戦艦へと向かって歩いて行った。
☆☆☆
「へぇ~。初めて来たわ。水があって、とても綺麗な街ね。」
「でしょ?ここに初めて来た時に、僕も同じ事を思ったよ。」
僕は白雪を連れて、水の国と呼ばれている小国『ウォーミール』の水の都『スイ』に来ていた。
おしゃれな家や店が建ち並び、建物の間や道沿いには所々に川が流れている。その川の行きつく先がこの都の中心の湖へと流れる。
今日は最後の一人。白雪とのデートだ。
僕がいない時、リーダーとして様々なクエストをこなしてきた白雪だ。
ここに来た事があったなら、第二候補へ行こうと思っていたけど良かった。
出来れば行った事のない所へ連れて行ってあげたかったからね。
「さぁ、白雪。どうしたい?」
僕が聞くと、白雪は腕を組んで寄り添いながら言う。
「・・・・・今日はレイに全て任せるよ。」
「そう?・・・・・それじゃ、しっかりエスコート出来る様にがんばるよ!」
「うん!」
僕達は、綺麗でおしゃれな街並みの通りを歩き始めた。
まずは、色々な服屋に寄って白雪の服を選んだ。
聞くと、僕と一緒に買った服以外は私服は全然買っていなかったらしい。
ここ二年間は、ずっと冒険者用の防具を着ていたとの事。
どんだけ興味がないんだよ。
こんなに綺麗で可愛いのに。
もったいない。
しかも、あれから背も伸びてプロポーションも更に磨きがかかっている。
前の僕が買った私服では、もうサイズが合わないだろう。
僕は時間をかけて、白雪に似合いそうな服を選んでどんどん買った。
聞いても、僕が選んだ服に喜ぶだけで、不満な顔など一切見せないから、こちらとしては、変な物は着せられないと、結構真剣に選んだのだ。
ただ、服で一つだけ白雪は要望を言った。
着物が欲しいと。
前に僕がプレゼントをした着物は、小さいから大事にしまってあるとの事。
僕は着物屋に行くと、沢山ある柄の中で、一目惚れした前とは違った感じの着物を選んで、試着してもらうと・・・・・うん。
息を飲む程、とても綺麗だった。
「どうかな?」
白雪は少し恥ずかしそうに聞く。
「うん。とても綺麗だよ。」
真っ白い頬を少し赤らめると、嬉しそうに言う。
「ありがとう。・・・・・これにするわ。」
僕は、試着している間に、着物に似合いそうな、かんざしと草履を選んであったので、それを一緒にプレゼントした。
このまま着物でいたいというので、着てた防具や買った私服は、空間収納にいれて、水の都を散策した。
ハハハハハ。
目立つな。
行き交う人、行きかう人、皆、僕達を見ている。・・・・・いや、白雪を。
僕の腕にギュッと腕を絡ませて、嬉しそうに歩く白雪は、まぁ~何と言うか、この世の者とは思えない可愛らしさ、美しさだった。
そんなにくっついて歩くと、僕の二の腕に柔らかい胸の感触が伝わるんだけどな。
・・・・・とても悪くないけどね!
通り沿いで見ている男達の話し声が聞こえる。
「ヒュ~!おいおい見ろよ!すっげえ美人!あんな娘初めて見たわ!」
「ホントだ!こんな綺麗な娘いるんだなぁ~!・・・・・しっかし、何だ?あの隣の男。まるきり普通じゃねぇか。不釣り合いにも程があるぞ。」
・・・・・おっしゃる通りです。
「まさか、あの娘のお相手じゃねぇよな!俺の方が顔ならいけるんじゃね?」
ハハハハハ。言いたい放題だな。
まぁ~間違ってはないけどね。
ん?
白雪を見ると、さっきまで嬉しそうにしていた顔が消え、もの凄い冷たい目で殺気を放っている。
オイオイオイオイ。
ダメだよ?
一般人にそんな殺気を向けちゃ。
僕は空いている手で、白雪の頭を優しく撫でる。
「ほら。僕は気にしてないから。・・・・・そんな顔をしないの。」
「でも・・・・・うん。
レイが言うなら分かった。」
白雪は笑顔に戻る。
ふぃ~。良かった。
危うくあの男達を殺しそうな雰囲気なんだもんな。
僕の事となると、特に白雪は見境がなくなる。
嬉しいけど、困ったものだ。
僕達はそのまま、昼食を済ませて、水のショーがある有名な劇場へ足を運んだ後、この水の都の中心にある大きな湖へと向かった。
その大きな湖からボートを使って、その更に中心にある小島へと向かう。
ボートを乗りながら周りを見ると、同じ様にボートに乗ったカップルが所々に浮かんでいる。
この水の都の名所の一つだ。
僕達はそのまま小島へと上陸すると、すぐにとても大きな神殿っぽい建物が現れる。
その入口には、この国の兵士が数名立っていた。
僕は白雪とゆっくり歩きながら、その神殿に近づくと、兵士達に挨拶をする。
「やぁ。・・・・・ここを通ってもいいかな?」
「これはゼロ殿!・・・・・髪が銀色じゃないので、誰かと思いましたよ!」
今日は、レイで来ているので髪は元の色に戻してある。
「ハハハハハ。ちょっと目立つから、染めててね。」
「そうですか。ゼロ殿でしたら、もちろんここを通しますが・・・・・大丈夫なのですか?」
その兵士は僕の隣にいる白雪を見る。
「あぁ。彼女は大丈夫だよ。
【ホワイトフォックス】の白雪といえば分かるかな?」
「えぇ!!!あの世界一の冒険者の?・・・・・これは失礼しました。どうぞお通り下さい。」
「ありがとう。」
僕は、白雪と手を繋いで、神殿へと入ろうとする。
すると、後ろから違う兵士が言う。
「そうだ!ゼロ殿!・・・・一つのパーティがここを挑戦中です!もし出会って、無理そうでしたら引き返すように言ってください!」
僕は手を振りながら神殿へと入っていった。
白雪は僕の顔を見て言う。
「レイ・・・・・ここは?」
「言ってなかったね。ここはね、
未踏破ダンジョン【水神の住処】さ。」
「えっ?あの3大危険指定の?」
未踏破ダンジョン。
レベルが高すぎて調査ができない、推奨レベルが未定のダンジョンだ。
その中で、近年、特に危険と指定され、立ち入りを禁止された最高峰レベルのダンジョン。
【地底の砂闇】
【水神の住処】
そして、【名もなき孤高の城】。
レイがいないこの二年間。
様々なダンジョンへと挑んだが、危険指定のダンジョンだけは行く事はしなかった。
一度だけ、【地底の砂闇】の入口まで行ったのだが、あまりのレベルの高さに、私達だけならある程度は行けただろうが、その時はまだ未熟のアイリがいたので断念したのだ。
「こんな所にあったのね。」
一国の首都にダンジョンがあるのは、この『ウォーミール』だけだった。しかも、そのダンジョンが危険指定というのだから危険この上ない。だからこそ入口には常に兵士が監視を行っている。
一説には、この国の水が豊かなのは、このダンジョンのおかげなのではないかと言われている。
攻略対象として入れるのは、SSS級冒険者か、よほどの実力者のみが許されていた。
「さっ!行こうか。」
レイは白雪の手を握ってゆっくりと歩み始める。
「レイ。私この格好で大丈夫なの?・・・・・とてもじゃないけど、戦えないよ?・・・・・・着物傷つけたくないし。」
白雪は自分の着物を見ながら言う。
「ん?大丈夫だよ。僕を信じて・・・・・ね?」
「・・・・・うん。分かった。」
神殿内のダンジョンに入ると、入り組んだ道が続いている。
レイは手を繋いで、どんどんと、その複雑な道を歩いている。
何故か魔物が一匹も出てこなかった。
すると、暫く歩いていくと、戦闘の音と叫び声が聞こえてきた。
☆☆☆
「おい!ルーカス!どうするんだ?」
仲間の一人が、リーダーのルーカスに言う。
ルーカスは、水で出来た人型の二匹の魔物を睨みながら考える。
・・・・・何なんだ。この魔物は。・・・・・斬ろうが叩こうがまるで効かない。しかも恐ろしく・・・・・強い!
冒険者パーティ【ストーム】。
最近、SSS級冒険者となり、勢いのあるパーティだった。
まだ誰も攻略していない危険指定のダンジョンに挑んで攻略したら、一気にその名前が広まるだろうと思ったのが間違いだった。
入って、地下一階層の、最初のこの魔物でさえ、まるきり歯が立たない。
こんなダンジョンが存在するなんて。・・・・・とてもじゃないが、今の我々では次の階層を目指すどころか、ここで全滅してしまう。
・・・・・何とか逃げる方法を考えないと。
すると、水の魔物は、両手を剣に変化させる。
まずい!!!!
「いくわよ!!!水なら蒸発するでしょ!!!・・・【業火】!!!」
仲間の女性が炎の上位魔法を放つ。
ドンッッッッッッッッッッッッッ!!!!
水の魔物は火に覆われるが、一瞬で、火がかき消された。
「えっ?!・・・・・私の火より、強いなんて・・・・・。」
女性が茫然としていると、その魔物は一気にパーティに斬りかかろうと踏み込もうとしたが、何かに気づき、ピタリと止まる。
???
何だ?
ルーカスは魔物の視線を追って、後ろを振り向くと、二人組がこちらへと歩いてきた。
男はカジュアルな格好で。・・・・・女は何と着物で。
このダンジョンで、あまりにも場違いな格好だった。
男が【ストーム】に気づくと、笑顔で手を振って言う。
「あれ!ルーカスさんじゃないですか!久しぶりですね!」
近づいてきた男は、数年前に一緒にSSS級の試験を受けた、【ホワイトフォックス】のリーダー、レイ=フォックスだった。
「レイ君!再会は嬉しいが今は後だ!・・・・・皆で逃げよう!」
レイは、ルーカスに近づくと構わず言う。
「あぁ。大丈夫ですよ。彼らはもう攻撃してこないですから。・・・・・ちょっと待っててくれませんか?」
レイが、その水の魔物に声を掛けると、剣の形になった手を元に戻し、立っている。
?????・・・・・どういうことだ?
ルーカスは不思議がっていると、レイが言う。
「ルーカスさん。SSS級になったんですね!おめでとうございます!・・・・・ただ、このダンジョンはちょっとまだ厳しいと思いますので、ここは撤退した方がいいと思います。
今は、あの魔物はルーカスさん達を襲わないですから、今の内に行ってください。また、今度、ゆっくり話ましょう。」
「・・・・・そうだね。君が来てくれて助かったよ。今度会った時に、この件も含めて聞こうかな。・・・・・それじゃまた。・・・・・行くぞ!」
そう言うと、ルーカス達は、その場を去っていった。
ルーカス達が見えなくなったのを見計らって、僕は言う。
「さて。いつもの場所へ連れて行ってくれるかな?」
二匹の水の魔物は頷くと、手を上にかざし、地面に水の魔法陣が浮かび上がる。
「さっ、白雪。」
僕は白雪と一緒に、魔法陣の上まで行くと、光と共に転送した。
☆☆☆
「・・・・・・凄い。」
白雪は、あまりの景色に、凄いとしか呟くことが出来なかった。
そこは辺り一面・・・・・水だった。
周りを見ても島も陸地も何もない。
海なのか、湖なのかさえ分からない。
空は青く、光る太陽の様な物があり、雲がある。
そして自分の足元を見ると、水の上に立っている。
何十キロはあろうか。遠い先には、私達を中心として囲うように数キロ高くなって滝の様に水が流れている。
水と、空と、・・・・・私達だけだった。
すると、水の中から一人の男性がゆっくりと姿を現す。
「やぁ!また来たよ。・・・・・ちょっと景色が見たかったんだ。」
隣にいるレイが、その男性に声をかける。
「フフフフフ。珍しいな。エメじゃなくて、違う女性を連れてくるとは。・・・・・大事な女性かな?」
その男性は笑顔で言う。
「ああ。白雪と言うんだ。どうしてもここを見せたくてね。」
「そうか。・・・・・まぁゆっくりしていってくれ。ゼロと私は友達だ。いつでも来るといい。」
「ありがとう。」
そう言うと、その男性は水になって消えていった。
レイは、水の上に座って両手を広げて言う。
「白雪!どう?この景色!!!・・・・・凄くない?」
白雪はレイの隣に座って言う。
「うん!・・・・・こんな景色初めて見たわ!」
良かった。
喜んでくれている。
僕はこの圧倒的な景色を見せてあげたかったんだ。
「ここはね。僕の特別な場所なんだ。・・・・・一人の時に、ちょっと気分が優れない時に、よくここへきて寝そべっていたんだ。」
そう言いながら、水の上に大の字に寝そべる。
背中が少しひんやりしていて、気持ちいい。
暫く、静寂が流れた。
白雪と一緒にいると、本当に落ち着く。
ずっと最初から一緒にいたせいか、気を遣って喋ったりしなくても、一緒に落ち着ける、唯一の存在だ。
すると、隣で座って景色をずっと眺めていた白雪が言う。
「レイ。さっきの人は?」
「あぁ。あいつは【水神】と呼ばれている友達さ。・・・・・傭兵の時に色々あってね。・・・・・その時に出会ったのさ。」
「そう。」
また静寂に戻る。
耳を澄ますと、遠くで滝の様に水が流れている音がかすかに聞こえる。
「・・・・・レイ。」
寝そべっている僕に、隣で座っている白雪が見下ろしながら言う。
「うん?」
「私ね。・・・・・レイの事が好きよ。・・・・・ずっと。」
「・・・・・・。」
「いつかこの気持ちを言おうと思ってたんだけど、他の仲間が貴方に告白した事を知ってね。・・・・・我慢できなくなっちゃった。」
白雪はとても綺麗な笑顔で僕を見て言う。
「・・・・・白雪。ありがとう。・・・・・でも、君の美しさなら僕なんかじゃなくて、もっと大勢の男性からアプローチが来たんじゃないの?」
「うん。貴方を忘れたこの二年間で、多くの男性から求婚を受けたわ。・・・・・でも、好きになる人はいなかったよ。だって、忘れても貴方を好きなこの気持ちは・・・・・変わる事はないんだもの。」
そう言うと、白雪は大の字で寝そべっている僕の腕に頭をのせて、一緒に横になる。
・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・
僕は優しく白雪の頭を撫でながら言う。
「白雪。とても嬉しいよ。僕も君と一緒になれたらこんな最高な事はないって思った事はあるよ。
でも、あまりにも高嶺の花だったからね。・・・・・白雪。
もう少し僕に時間をくれないかな?ここ最近連続で告白されて、頭が整理できてないんだ。・・・・・ちょっと時間がかかるかもしれないけど、返事はそれからでいいかな?」
「うん。・・・・・ずっと待ってる。」
言ってしまった。
貴方が好きな事を。
言うつもりじゃなかったのに。
仲間が告白して動揺したのもあったけど、レイが特別って言ったこの景色を見せてもらったら、自然と言葉にでてしまった。
レイ。
どんな返答でも、私はずっと貴方から離れる事はないよ。
隣で一緒に横になっている白雪は、女神の様な美しさだった。
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