第119話 傭兵12



「うらぁぁぁぁぁ!」




ザンッ!!




トップクラン【たぬき】のリーダー、カズキが愛用のハルバードをカルガラめがけて斬り下ろす。



斬られたカルガラは火花を散らしながら倒れる。



「カズキ!大丈夫か?」



「平気?」



仲間のリュウジとミカンが駆けつける。



「はぁはぁ・・・・・あぁ。何とかな。

 しかし、こいつは俺でもキツイぞ。」



重量級武器のハルバードでも、一撃で倒せなねぇ。何てかてぇロボットだ。しかも・・・・・。



カズキは空を見上げる。



まだ、こいつらだけなら一人で戦わずに、多対一でやれば対処できた。だが、途中からこいつらが現れてから状況が一変した。




上空には、虹色の羽の様な物を噴出して、4m程あるロボットが旋回している。



【ホワイトフォックス】のキリアが魔法で一機撃ち落すと、中から人が出てきて逃げていきやがった。・・・・・何だありゃ。初めて見たわ。

アニメの○○か!!!



その数百機いる飛んでいるロボットが、レーザーの様な銃で地上にいる我々に攻撃している。



地上にいる敵でさえ苦戦しているのに、更に強いロボットの上空からの攻撃。なんとか【ホワイトフォックス】が対応してくれているが、流石に数が多すぎて、被害が出始めていた。



【たぬき】のカズキと仲間達は一旦傷を回復しに待機所へと戻る。



そこには大勢の負傷した者が座っていた。



「今、負傷している人はこれで全員ですね!・・・・・いきます!」



中央に立っている長く赤い髪をし、白いローブを羽織っているアイリが杖を掲げると、緑色の光が辺り一面を包む。



すると、腕や足が吹き飛び瀕死の重体だった者はみるみるうちに元通りに。軽傷の者はあっという間に治ってしまった。




カズキ達も一緒に回復しながら思う。




あれがアイリ=レンベル。超大国『アルク帝国』の皇女にして、【ホワイトフォックス】のヒーラー。




「すげぇな。・・・・・癒しの女神と言われているのは伊達じゃないって事か。」



他にもヒーラーはいるが、魔力も、回復魔法も、彼女は群を抜いていた。

たった数年で頭角を現したヒーラー。今ではヒーラーの中ではトップだろうと言われている。


どれだけ過酷な事をすれば、たった数年でここまで凄くなれるのか。・・・・・彼女がいなかったら、死傷者は激増していただろう。



カズキは待機所から、外の情勢を見る。



しかし・・・・・このままだとマジでヤバいな。



「ん?」



見ていると戦いに動きが起きたのに気づく。



「・・・・・撤退している?」



カズキは思わず呟いた。










☆☆☆










「中々やるなぁ。」



エルビスは楽しそうに巨大スクリーンを見ている。



前の星で世界を統一した時や、この世界で島国を攻めた時も、我々は血を流さずにカルガラだけで制圧できた。



だが、この戦いでは、カルガラを一撃で倒す者が何人かいる。



それを見た時、久しぶりに高揚感を覚えた。



すぐに、兵士が乗る機械、我が国の強力な兵器の一つ。【レギア】を出撃させ、勢いを止めた。



空を縦横無尽に飛び回り、強力な武器を搭載している【レギア】だ。



いくら対応できる者が数人いたとしても、簡単に落とす事は出来ないだろう。



「フフフフフ。楽しいな。やはり戦いはこうでなくては面白くない。」



戦況を見ながら嬉しそうにエルビスは呟く。



「なっ!何だって?」



巨大戦艦の指令室、その機器類を操っている一人が突然大声をだす。そして通信に使うヘッドホンを取ると立ち上がり、エルビスに報告する。



「エルビス様!!!只今、【マジュカ】の中将アルファー様から報告がありました!・・・・・・要塞都市【マジュカ】が・・・・・・」





その者は唾を一度飲んでから言う。





「壊滅したとの事です。」










☆☆☆










目の前のロボット達が海に浮かんでいる巨大戦艦に戻っていく。



上空に飛んでいるロボットもだ。



撤退していくのを見て、前線にいる白雪達の所までヒッキが将軍達を連れて駆け寄る。




「白雪ちゃん!大丈夫?」



「ええ。問題ないわ。」



「全然へっちゃらさ!」



「・・・・・大したことない。・・・・・ヒッキ君は心配しすぎ。」



白雪達が、心配しているヒッキやへーリック、サイクスに答える。




助かった。彼女達のおかげだ。




この戦い。

彼女達【ホワイトフォックス】がいなかったら、撤退するしかなかっただろう。友達で良かったと心からヒッキは思った。




「しかし・・・・・何で撤退したんだ?あちらさんの方が優勢だったろうに。」



へーリックが言う。



すると、後からやってきたシュバインが言う。



「今、情報が入りました。あの者達に支配された『スコール国』の一つの都市が壊滅したそうです。」



「壊滅?・・・・・なぜ?」



ヒッキが聞く。



「おそらく我々と同じ様に、救援依頼に応じたのでしょう。・・・・・考えたものです。この国を守らないで直接叩くとはね。・・・・・しかもたった二人で。」



「二人??????」



数万のアルメリアの兵士と冒険者達。そしてホワイトフォックスがいて、何とかあの敵から守れていたのを・・・・・たった二人で都市ごと壊滅だと?・・・・・ありえない。



「ええ。」



「その二人はどんな方なのですか?」



シュバインは答える。



「傭兵です。

 ・・・・・・・名は【シルバーアイ。】」




バンッッッッッッッッッ!!!!!




その名前を言った瞬間。

キリアが凄い勢いで飛んでいった。




「キリア!!!・・・・・ラフィン!私が追いかけるから、アイリとカイトをよろしくね!」



そう言うと、白雪は美しい白い羽を広げて飛ぶと、キリアの後を追いかけた。










☆☆☆










ガガガガガガ!!!!!!!



ドドドドドド!!!!!!!



ワァー!!!ワァー!!!



要塞都市【マジュカ】の中央にある司令室がある近代的なビルの様な建物の一階。



入ってすぐの広いホールに、二人の男が向かい合っていた。



外では、銃声や怒号が聞こえる。




「・・・・・貴様。名は?」



向かい合っている二人の男の一人。

要塞都市【マジュカ】を任されているアルファー中将が言う。



「僕かい?僕の名はゼロ。・・・・・傭兵さ。」




・・・・・我々がこの星へと転移してきてから、暫くは『クリスタル帝国』の国の土台を築くのと同時に、この世界の情報収集に力を入れていた。


分かった事は、この世界の種族は我々より弱い、下等種族だという事だ。


しかし、その中でも強い者はいた。


冒険者でSSS級と呼ばれる者。世界一の殺し屋や武術家。犯罪ギルドなどだ。


この世界の強い者達を分析、解析し、その中でも一番強い者として表示されたのがSSS級冒険者【ホワイトフォックス】・・・・・そのリーダー、白雪。


その者が唯一、【7星】より少し下で、大将クラスと同格だと、全てを解析できる我が国の頭脳【マレ】が答えている。


他は、どんなに強くても中将、少将クラスだとも。



だからこそ、準備が終え、隣の島国を支配、占領し、そして大陸へと侵略した。



前の星と同様、我らが世界を支配する為に。



傭兵と言われる者で上位三人は調べたが、たいした実力の持ち主ではなかった。




しかし・・・・・何だ?この男は?




引き連れている黒と白の異形の者達に、我々は歯が立たなかった。兵器の【カルガラ】や空を自在に操る【レギア】でさえ倒されてしまったのだ。



そして、黒と白の者達を指揮している二人の女は、見た事のない力で都市を蹂躙している。



その中心にこの男がいた。銀の髪の青年が。



アルファーはゼロと名乗った傭兵に言う。



「私の名はアルファー。お前が引き連れている兵隊達は我が民まで虐殺するのか?」



「いや。僕はさっきも言った通り傭兵さ。ここの都市の破壊が目的だ。向かってくる者は遠慮なく倒すけど、抵抗しない人や降伏する人には手をあげるつもりはないよ。」



「そうか。安心した。・・・・・だが、私はこの【マジュカ】を預かる身。そう簡単に敗れるわけにはいかないのでね。・・・・・抵抗させてもらうか!」



そう言って、刃のない柄を取り出すと、そこから光線が出る。




えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!



何あれ?



ライト〇ーバー?



カッコイイな!!!!!!!




「シッ!!!」



アルファーがまだ距離がある僕に向かって振ると、刃となった光線が伸びながら横一線に斬りこんでくる。



「オワッ!!!!」



ジッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!



ギリギリにしゃがんでその一刀を躱す。



伸びた光線は柱をいとも簡単に斬る。



「危なっ!!!伸びるのかぃ!!!」



思わずツッコむ。



僕が立ち上がると同時に、そのまま距離をつめてきたアルファーが連撃を入れる。




ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!



ギィン!ギィン!ギィン!ギィン!ギィン!ギィン!ギィン!ギィン!




独特の音を出しながら斬りこんでくるアルファーの剣を僕は防ぎながら思う。




これは・・・・・かなり強い。



SSS級冒険者よりも上かもしれないな。



だが・・・・・。



アルファーの剣速がどんどん上がっていく。




ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!



ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!



ギギギギギギギギギギギギィィィィン!ザンッ!




それをギリギリで防ぎながら、わずかなスキをついて右手に持っている愛刀【WHITE SNOW】を左下から右上へと一刀を入れる。




アルファーは躱すように後ろへと飛んだが、特殊な防護服がいとも簡単に斬られていた。



ゼロは剣を振り切ったまま暫く止まっていたが、アルファーが動かないのを見るとゆっくりと剣を下へと降ろす。




・・・・・何だ?この男は?



私の連撃を防いだだけでなく、攻撃を入れるだと?



しかも、一刀で私の防具が斬られるとは・・・・・あの刀は何なのだ?




クソッッッッ!!!!




アルファーは、もう片方の手に、同じ様に刃のない柄を取り出すと、光線を出す。



そして一気にゼロへ向かって飛び込んだ。




「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」




ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!



ギィン!ギィン!ギィン!ギィン!ギィン!ギィン!ギィン!ギィン!



ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!



ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!



ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!ヴゥン!




二刀で更にギヤを上げて、斬りこむが、最初は剣で防いでいたゼロは、徐々に体だけで躱していく。




・・・・・ここまでの相手と戦うのは本当に久しぶりだ。・・・・・やっぱり楽しいな。



もっと・・・・もっと相手の動きに合わせて予測して避けよう。



ゼロは自然と笑顔になっていた。




ギリギリに、剣を使わずアルファーの攻撃を躱す。




ふざけるな!何だこいつは!!!!




屈辱だった。




クリスタル帝国でも、上位の実力の私がもてあそばれている。



ここまで実力の差を感じたのは、あの方と試合をした時以来だ。・・・・・7星のエルビス様と。




「ならばっ!!!!」



あの方に対抗する為にあみだした技を貴様に!!!




ヴゥヴゥン!!!!!




両手の剣を下からクロスしながらゼロに斬りこむ。



それをバックステップでゼロは躱す。



剣で防がないのを後悔するんだな!!!!




ズッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!




そのままアルファーは両の剣を逆手に持ち替えると地面へ二本の剣を突き刺す。




・・・・・何かヤバいな!!!!




そう思った瞬間。



地面や壁や柱から、無数の光線がゼロに向かって飛びだした。




ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!!!!!!




これは多すぎる!!!!




一気に高速で走りながら避けていくが、無数に出てくる光線がその道をふさぐ。




「もらった!!!!」




ザザザンッッッッッッッ!!!!!!




避け切れなかったゼロの体は串刺しにされる。・・・・・が、串刺しにされたゼロの姿は幻の様に消えていった。




なっ?????




ザンッッッッッッッッ!!!!




気づくと、右腕が宙に飛んでいた。




「ガァァァァァァァ!!!!!」



左手の剣を離し、右腕をおさえる。




「奥義【まどろみ】・・・・・勝負あったかな?」



背後に立っているゼロは、片膝を地につけ、腕をおさえているアルファーに言う。



「・・・・・私の負けだ。・・・・・殺せ。」



まさかこの星に、ここまで強い者がいるとは。




この戦いは記録されている。




大将や7星様達が仇をとってくださるだろう。



アルファーは目を閉じた。




チンッ。




後ろから剣を鞘におさめる音が聞こえる。



「僕達の目的はもう達成したから行くよ。貴方達の技術なら、君の腕も治るだろう?」



「・・・・・私を見逃すのか?」



「前にも言った様に、僕は傭兵だ。この都市の破壊が目的で、殺しが目的じゃないからね。・・・・・でも、そうだな。上の人に言っておいてくれ。僕は、この世界を救うなんて事はこれっぽっちも思ってないけど、もし、僕の知り合いや友達が住んでいる国を攻撃したら、その時は遠慮なく徹底的に叩くとね。」



「・・・・・分かった。・・・・・伝えておこう。」



僕は言うと、アルファーを残し、ビルから立ち去る。






「終わったのか?」




ビルから出ると、そこには、エメとシャインがいた。




そしてその後ろには、黒の一族と白の兵隊が片膝をついて頭を垂れている。




周りを見ると、いつの間にか争う音もなく、静寂に包まれていた。




それを見た僕は二人に答えた。








「うん。」












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