第4章
第66話 東の大国
「うぉ~!この馬はぇ~な!」
僕は思わず叫ぶ。
「ハッハッハ!そうでしょう。そうでしょう。この馬はアルメリアの馬でね。他の国の馬とはわけが違うんでさぁ!」
馬車を操っているおやじが自信満々に言う。
僕達はアイリと別れ、近くの町でアルメリア行きの高速馬車に乗って北上していた。
高速馬車とうたっている通り、通常の馬車に比べてとても速い。聞くと、アルメリアの動物は他の国に比べると比較にならない位優秀なのだそうだ。
「さぁ~。もうつきまっせ!」
草原の小さな丘を越えると、そこは圧巻の風景が広がっていた。
目の前には大きな大河が流れている。そしてその川の先には辺り一面、森がひろがっていた。
『アルメリア』の国境には、ぐるっとこの国を囲むように大河が流れている。
その大河は急流で、更に凶暴な魔物が生息している為、泳いで渡ることが出来ない。
大昔に他国の侵入を防ぐ為に、人工的に作ったとされている。
シェリーさんが前に言っていたが、改めて見るとすごい迫力だな!
僕達は一つの大橋の入口で馬車を降りた。
『アルメリア』に行くにはこの大橋を渡って行くしか方法がない。
そしてこの大橋は3ヶ所あり、その入り口で検問が行われている。
馬車のおやじに別れを告げた僕達は、順番がくるまで並んで待っていた。
・・・・・しかし、ハイヒューマンかぁ~。
まさか上位種族になるとは思ってもみなかった。そういえば、ジョイルさんも光に包まれたって言ってたっけ。
ステータスを見ると僕達パーティ全員、頭にハイが付いていた。ついでに一緒にいたアイリもだ。
なにが変わったのかは分からないけど、少なくとも寿命は延びたと思う。たしか、ルネ師匠は500歳超えてたし、ジョイルさんも400歳代だもんなぁ。
まぁ~長生きできるのは人生いっぱい楽しめるって事でヨシとしとこう!・・・・・後はあまり深くは考えない様にした。
「はい。次の方!」
ぼ~と考え事をしていたら、僕達の番がきていた。
検問の人に【冒険者カード】を見せる。
冒険者カードを見せれば、アルク帝国以外は全て入国できる優れものだ。
「え~。・・・・・!!!・・・・・ホワイトフォックス?・・・・・あっあなた達がそうですか!どうぞお通り下さい!」
検問の人は急にかしこまって一礼した。
ん?何だ?・・・・・まぁ気にしてもしょうがないか。
僕達はそのまま『アルメリア』へと入国した。
橋を渡ると、そこには町があった。何と言うか、また他の国と違って綺麗な街並みだ。
レンガや石造りの建物は少なく、木がメインの建物が多い。
街並みをゆっくりと眺めながら中央広場まで歩いていくとそれはあった。
【ゲート】だ。
この国の移動は、【ゲート】で移動するのが基本だという。
『アルメリア』は大国というだけあって、とても広く、そして他の国に比べて圧倒的に自然が多い。
それは出来るだけ自然を残す為に、そして文明も栄えさせる為に、この【ゲート】が作られたのだという。
近くまで来るととても大きい。
この【ゲート】が首都や他の町全てに設置されている。
だから滅多な事でないと、馬車や他の乗り物を使う事がない。
僕達は、ゲートの入口で受付の人に、首都行きのお金を払うと、受付の人はそこに設置してある石碑を触る。
「さぁ。お通り下さい。よい旅を!」
僕達はおそるおそるその【ゲート】に入っていった。
【ゲート】を出ると、一瞬で首都『キルギス』に着いた。
すごいな!あっという間だ。
魔法でできてるのか?このゲートはこの国にしかないという。
凄い技術だと僕は思った。
☆☆☆
「・・・・・え~。とりあえず、目的地の首都『キルギス』に来ました!まずは、かんぱ~い!」
僕は帰還紙を使って『ナイージャ』にいるシェリーさんを連れて、皆で新しい国にきたのを祝って飲んでいた。
「いや~シェリーさん。この国はすごいですね!ゲートがあれば一瞬でちがう町へ行けるんだもの。」
「フフフ。そんな事より、レイさんの帰還紙の方がすごいわ。冒険者協会に勤めてて、こんなアイテム見たことないわ。これがあればどの国でも一瞬ね。」
あ~。たしかに。これは天界のアイテムだもんなぁ。目立たない様に使わんとな。
「・・・・・しかし、レイさん。派手にやったわね。あなた達パーティは今ではどこの冒険者協会でも有名人よ。」
「ハハハ。そうなんですか。まぁ~これからは堂々とかっこよく生きようと思ってるので、まだまだがんばりますよ!・・・・・所で、この『アルメリア』の事。教えてもらっていいですか?」
シェリーは美味しそうにお酒を飲みながら話はじめた。
東の大国『アルメリア』。
別名、水と緑の国。
自然を多く残すこの国は、とても緑豊かで資源がとても豊富だった。
その為、過去の歴史の中で、その資源を狙おうと他国から侵略を受けた事が多々あった。しかし、その都度、返り討ちにし、退けてきたのだ。
この国の武力はとても強い。
精霊人が将軍の『剣のアルメリア』。ヒューマンが将軍の『盾のアルメリア』。エルフが将軍の『弓のアルメリア』。ヒューマンが将軍の『杖のアルメリア』。
この4大部隊が世界でも有名で、この部隊がいる限り、攻め入る事が出来ないといわれている。
さらに、他の国が恐れているのが、『アルメリア』の王は、この国に住まう精霊を統べる王。精霊王と契約、同盟を結んでいる。
仮に4大部隊を撃破しても最後には精霊王が出てくるとなると、甚大な戦力を失う為、昔から他国は資源狙いだけで、本格的に攻め入る様なことはしなかった。
もし、最強と言われているアルク帝国と戦ったらいい勝負をするのではと酒のつまみによく話がでていた。
「・・・・・だからですねぇ。この国は、人もそうですけど、精霊人やエルフがとても多い国なんですよ。」
「へぇ~そうなんだ。」
だからか、この酒場に入った時に人より、他の種族が多いなぁって思ったのは。
あまり見なかったからとても新鮮だ。
ファンタジックでいいね!
「という事は、白雪も同じ精霊人だし、居心地がいいんじゃないの?」
「ん?私は別にここで生まれたわけじゃないし、同じ精霊人だからってあまり気にしないかな。・・・・・居心地がいいのはレイの隣だし。」
最後の方はよく聞き取れなかった。
シェリーが思い出した様に付け加える。
「そうそう。後は、この国とは関係ないけど、とうとうあの『アルク帝国』が戦争する為に進軍をはじめたって。」
「・・・・・そうですか。・・・・・まぁ~とりあえず、今日は皆いっぱい飲んで食べて、明日からまた本腰入れて冒険に出ようか!」
「さんせ~!」
・・・・・そうか。動いたか。エリアスさん。いつかはくるとは思ってたけど、遂に。
・・・・・まぁ~。今考えてもしょうがないか。
僕達は夜遅くまで楽しく飲んで食べた。
☆☆☆
シェリーさんを送って、僕達はシェリーおすすめの宿でゆっくりしていた。
この宿は何とログハウスを貸してくれる宿だった。木の香りが漂う、とても気持ちがいい家だった。
ピロン♪ ピロン♪
そこで皆でくつろいでいると、頭の中でアラームがなった。
ん?
ステータスを見てないのに、表示がでた。
【卵が孵化します。】
・・・・・?・・・・・あっ!!!
「すっかり忘れてた!なんか生まれるみたい。」
そう言うと僕はすぐに空間収納から黒い卵をとりだした。
完全に忘れてたわ。もう2年以上も拾ってからたっている。
すると、ラフィンがその卵を見て言う。
「あ~。これは【鳳凰の卵】だね。鳳凰は卵からかえるのに数年かかるといわれてるんだ!」
「へぇ~。そうなの?」
「うん。でも真っ黒い卵は珍しいね!初めて見たし聞いたことがないよ!」
そうなんだ。
「あっ。」
すると卵が割れ、中から真っ黒い小鳥がでてきた。
その毛や羽は全て漆黒だった。
僕は小鳥を見てとても綺麗だと思った。
「ピィー。ピィー。」
僕の方へ鳴きながらゆっくりと歩いてくる。
えっ。何この子。可愛い。
「あはは。レイを親と思ってるね。ずっと卵を持ってたんだから名前をつけてあげたら?」
う~ん。僕は今まで動物を飼ったことないから接し方が分からないんだけどなぁ~。でも拾った責任は取らないとね。
僕は小鳥を持ち上げて言う。
「よし!今日から君は【クロ】だ!よろしくね。」
他の仲間からはセンスがないと非難ごうごうだったのは言うまでもなかった。
☆☆☆
二日後。
僕達は首都『キルギス』にある冒険者協会に来ていた。
昨日は、どうしても、この国の魔法が知りたいと、キリアに魔法ショップや魔法図書館へ行くのに付き添って一日がつぶれてしまった。
まぁ~。それはしょうがないが、待ってる間が暇でしょうがなかったな。
・・・・・しかし、ここの冒険者協会の館はとても大きい。
やっぱり大国だとダンジョンやクエストも多そうだから、冒険者の数も多いのかな。
そんな事を考えながら、僕達は館へ入っていった。顔には天武祭からしている仮面を付けて。
これをパーティのトレードマークにしようと思っている。覚えやすいし、顔ばれしなくてすむもんね。
入ると、とても賑わっていた。ロビーや受付には冒険者達が大勢いる。
さすが大国。すごい数だ。
さて、まずは受付だね。
ここで活動する為に、受付で冒険者カードを渡して登録しないといけない。
「すみません。ここでクエストを受けたいので登録をお願いします。」
「はい。それでは、カードを・・・・・。えっ!『ホワイトフォックス』??」
ザワッ
パーティ名を受付の女性が言った途端、まわりの空気がかわった。
へっ?
「・・・・・はい。そうですけど・・・・・。何か?」
「いっいえ!何でもありません。それでは登録をさせて頂きます。でもその前に、『ホワイトフォックス』様はS級からSS級に昇格しております。そちらの登録を先に行いますね。」
えっ?そうなの?いつの間にあがったんだ?
「あの。SS級になると何が変わるんですか?」
「そうですね。SSS級と同じで、冒険者協会が発行しているクエスト関連は全て受ける事が出来ます。そして、国家関連や難解な依頼も全て引き受ける事が出来ます。」
すごいな。何でも自由に受けられるんだ。
「そうですか。何でも受けられるのなら、SS級とSSS級の違いはあるんですか?」
「はい。国家関連や難解な依頼料に差がでますね。」
あ~。そういう事ね。信用度や成功率も違うんだろう。SSS級は世界に9組しかいないと聞いた。だから依頼料も高いんだろう。
「なるほど。分かりました。ありがとうございます。」
「いえいえ。それでは、2つの登録を致しますので暫くお待ちください。」
「分かりました。」
待ってる間、時間がもったいないし、先にどんなクエストがあるか見てみるか。
僕達は、クエストや依頼が貼ってある大きなボードのビラを眺めていた。
久しぶりのクエストだ。
やりがいのあるクエストをやりたいな。
・・・・・あれ?
様々なクエストや依頼のビラを見ていたが、その中に1枚。とても古いビラがあった。
その内容を見てみると、
・・・・・行方不明5名の捜索。生存確認。救出。 場所:禁忌の森 報酬:10億G・秘宝【奇跡の薬】・・・・・
なんと、報酬に【奇跡の薬】があった。
まじか!これはほしいな。しかも10億Gって。こんな報酬なのに誰も手を付けてないのか?
「ホワイトフォックス様!お待たせしました。登録はこれで終了です。どうぞ。」
さっきの受付の女性が僕の方へと駆けてきて、冒険者カードを渡した。
ついでに聞いてみる。
「あの。このクエストは?」
僕は古いビラを指さして言う。
「ああ。このクエストですね。3年前に有力者の子供達が【禁忌の森】へ入ってしまって・・・・・国が軍まで出動して救出に向かったんですが結局見つける事ができなくて・・・・・なので、冒険者にそれを救出する為にこのクエストが発行されたんです。」
「へぇ~。そうなんですか。」
「でも、この【禁忌の森】はダンジョンではなくて未知の場所です。多くの冒険者たちが報酬目当てに挑みましたが戻ってくる冒険者はほとんどいませんでした。
国も困り、この国にいる唯一のSSS級パーティに頼んだのですが、入ってすぐに断念して帰ってきました。森にいる魔物があまりにも強すぎたそうです。」
なるほどね。SSS級が断念したとなると、魔物レベルが200以上は最低でもあるだろう。
やりがいはありそうだな。
「はぁ~。特に私の妹と行方不明になったサイクスさんの妹のミランちゃんが友達でよく遊んでいたから、3年経っても諦める事が出来なくて・・・・・。」
・・・・・ん???サイクス???
・・・・・まさかなぁ~。・・・・・でも気になるな。一応聞いた方がいいか。
「あの~。そのミランちゃんですけど、フルネームを教えてもらえないですか?」
「えっ?ミラン=クリウスちゃんですけど・・・・・。」
「ありがとうございます。」
僕はすぐに【心の腕輪】を鳴らした。
ピロン♪・・・・・ピロン♪
・・・・・これか?おっレイ?聞こえるか~!
ハハハ。聞こえるよヒッキ。元気にしてるか?
オウオウ!元気も元気!全開だぜ!!!
先に聞きたいんだけど、サイクスのフルネーム教えて。
ん?サイクス?名前はサイクス=クリウスだけど?
!!!
・・・・・分かった。サンキュー。
ちょ。ちょと待てよ!今どこにいるのか聞きたいか?聞きたいだろ!!聞けよ!!!今はカザミちゃんと・・・・・
プツッ。
ヒッキが何か言いかけていたが、なんかムカついたので切ってやった。
僕は、その古いビラを片手で剥がすと、受付の女性に渡す。
「このクエストを受注したいです。受理をお願いします。」
その女性は受け取ると暫くポカンとしていたが、我に返り声をあげた。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
しっかりとした目的が出来た。褒賞もいいけど、何といっても絶対に親友の妹を助けないとな!
僕は仮面ごしに皆を見て言う。
「さぁ。冒険が決まった。準備をしに行こう!」
「ああ!」「ええ!」「うん!」「・・・・・おっけ。」
久しぶりの冒険は【禁忌の森】だ!!!
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