第67話 禁忌の森



さて。




今までのダンジョンだったら1日か2日で攻略できたが、今回はどの位かかるか見当もつかない。



とりあえず僕は、首都キルギスで出来るだけ食材を買って、必要な道具を補充した。



流石、自然が沢山あるこの国。キャンプ用品はとても充実していた。目新しい物ばかりだ。






準備が終わると僕達は【ゲート】を使い、目的の場所から一番近い町へと来ていた。






【禁忌の森】は馬車を使って、ここから半日位かかる所にあるらしい。



この町で一泊して朝早くに馬車を借りて、今は目的の場所へ向かっている。






「しっかし、この馬はほんとはやいな!」



乗っていて、このアルメリアの馬車は本当に速い。他の国の馬車と比べるまでもなかった。



精霊と共存している国と何か関係があるのかな?あのおっさんが自信満々に言っていたのも頷けるなぁ。




「ところでレイ。クロはどうするの?」



カイトが馬車を操りながら隣の僕に話しかける。



「そこなんだよなぁ。」



クロは、生まれた時は小鳥だったが、数日であっという間に僕位に大きくなってしまった。




成長速度が早すぎるだろ。




「う~ん。やっぱり馬車と一緒に留守番をしてもらうしかないよなぁ。」



すると馬車の中にいるラフィンが言う。



「たしか、鳳凰はね!神と同等の力があるっていわれてるんだ!だから何とかなるんじゃないかな!」




何とかなるって・・・・・随分とアバウトだな。




僕は馬車の中にいるクロを見ながら言う。



「クロ!僕達はこれから暫く出かけるけど、留守番でいいかな?」



するとクロは僕の後ろに来てつつきながら異をとなえる。



「クー!クー!」



「はぁ~。いやみたいだな。でもなぁ。この大きさだと危険だから連れていけないんだよ。分かるか?」



すると、クロが一瞬光るとボールペン位の大きさになって僕のポケットの中へと入り顔を出した。



「クー!」




まじか。そんな事できるの?




「ハハハ。小さくなって服に入れるんならいいんじゃないかな。連れて行っても。」



「・・・・・そうだな。それじゃクロ。移動や戦闘の時は大人しくしているんだぞ。」



「クー!」




クロも連れていく事が決まり、暫く草原を走っているとそれは見えてきた。






今は晴れて、空も周りの景色がよく見えているが、目の前の森だけは霧?なのか雲?なのか白い何かに覆われていた。



僕達はその白い何かの前で馬車を止めて降りる。



これが昔から何人たりとも人を寄せ付けず、入ったら帰ってくるのが困難な場所。



【禁忌の森】



しっかし、よくこんな所に子供5人が入っていったな。



まぁ、行っちゃいけないって所に行きたがるのは子供心としては分かるけどね。




僕は仲間を見て言う。




「さぁ。行こうか!」






皆が頷き、僕達は白く覆われている森へと入っていった。










☆☆☆










入ると辺り一面真っ白で何も見えない。






「皆!手をつないで行くよ!」






はぐれたら大変なので全員で手をつなぎながら歩いていく。



しばらく歩いていくと、徐々にモヤが晴れていった。



そして、その白い何かを抜けると、そこには美しい森が広がっていた。



するとキリアが言う。



「・・・・・さっきの白い空間。・・・・・状態異常の魔法がかけられてた。・・・・・吸ったら危険。・・・・・でも、皆・・・・・その防具で無事。」




げっ。そうだったんだ。




たしか僕達が装備している【天の衣】やキリアの【黒の法衣】は【状態異常完全無効】が備わっている。



だから何も感じなかったのか。





この優れた防具に感謝しながら僕達は森の中へと入っていく。





周りを注意しながら歩いている僕は、隣にいる白雪に話しかける。



「なんか・・・・・とても綺麗な森だね。」



「ん。そうね。入る前に白かったから、森の中も霧の様に見えにくいのかと思ってたけど、スッキリしていて何か神秘的な物を感じるね。」




そうなのだ。




空は雲一つなく、光を一心に浴びているこの森の木々は、一本一本がとても太く大きい。



そして空気がとても綺麗だ。



アルメリアは自然の宝庫だとシェリーさんが言っていたが、何か、この森だけはさらに特殊な物を感じる。




「・・・・・何かくるよ。」


白雪が隣で呟く。




すると白と黒の塊が木々を飛び回りながら僕達の方へと近づいてくる。




ズンッ。




それは、目の前に着地した。



大きな猿だ。



その2体の猿は2mはあろうか。目は赤く、体を覆う毛は白いのと黒いので分かれている。



白い方の爪はとても鋭利で長い。




すぐに僕は2体の猿を【天眼】で見る。




キモン レベル240  サモン レベル240




240だって?! 




僕は鞘から剣を抜く。




「くるぞ!」




言った瞬間、白い猿が飛びかかって鋭い爪を振り下ろす。




ギィィィィィィィィン。




僕が剣で防ぐと同時に、隣にいる白雪が二刀の剣で切りかかる。




ザザンッ




「ギャッ!!」




十字に切り裂いた胸は赤く鮮血がほとばしる。



と同時に、弱った白い猿の懐に入ったラフィンが掌底をあびせる。




「ハァッ!」




ドンッ!!




白い猿がくの字に曲がり、そのまま前のめりに倒れた。






ピシャァァァァァァァァ




後ろにいた黒の猿が何かを喋ると、僕と白雪に雷が落ちた。・・・・・が、僕は【剣神の指輪】で効かないし、白雪はキリアが魔法防壁で防いでいる。




シュン。




白い猿のとどめは二人に任せ、そのまま黒の猿に瞬時に移動する。



また何か喋ろうとしたが、カイトが光る矢を射ると、喋るのを止めてそれを避ける。



避けた先にはすでに僕が剣を構えていた。



黒い猿は呪文を唱えながら右腕を振り下ろそうとした瞬間。




「・・・・・居合。光。」




その場所には僕は消えていて、同時に黒い猿の首が飛んでいた。




白雪達を見ると、すでにとどめをさして、白い猿は息絶えていた。



ゆっくりと鞘に剣を戻して、僕は皆に言う。




「みんな。おつかれ!」




久しぶりの戦いだったけど、問題なかったな。



これだよ!これ!



この緊張感!そしてこの先何があるのか分からないワクワク感!!やっぱり冒険はいいね!!!




僕は猿のドロップ品を集めながら、改めて、今ある装備があるのとないのとではこんなに違うのかと思い知らされた。



学園都市『カラリナ』の時の学生服や一本の普通の剣と、今の装備だとやっぱり安心感が全然違う。



冒険者はいかに準備が大事なんだとあらためて思い知った一戦だった。




ドロップ品を回収し、先に進もうとした時、遠くから動く音が聞こえてきた。






シャッ。シャッ。シャッ。シャッ。シャッ。シャッ。






「オイオイオイオイオイ。」




見ると、先ほど倒した白と黒の猿が数十匹現れた。



簡単には先に行かせてくれないみたいね。




ならば・・・・・。




久しぶりの実戦だ。パーティの連携も色々と試してみたい。・・・・・実験になってもらうよ。




「白雪、ラフィンは白い猿を。カイトは黒の猿を弓で。キリアは黒の猿の魔法を防御しつつ攻撃魔法を。・・・・・それじゃ行くよ。」



僕は剣の柄を触るか触らないかの位置に手をおき、呟く。




「居合。光。」




フッと消えたその先に2匹の黒い猿の首が飛んだ。




切った僕は後ろを振り向き叫んだ。










「さぁ!かかってこいゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」










僕達は一斉に戦闘を開始した。

















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