第59話 女神の祝福デー
「いゃ~。ホワイトフォックス。カッコよかったよなぁ~。」
ヒッキが思い出したかのように喋りかける。
「しかも!あの仮面が謎を呼んでいいよな!」
へーリックが相槌をうっている。
「トウェンティエンジェルのお姉様達と遊びたい・・・・・。」
年上好みのサイクスが窓の外を眺めながら呟いていた。
天武祭が終わって一ヶ月が経った。
この学園都市『カラリナ』も、天武祭期間は休みだった為、多くの学生が見に行っていたらしい。
天武祭が終わり、学園に戻ってみると、しばらくはその話題でもちきりだった。
まぁ~、僕達パーティの事がよく話にでるので、聞いていて気分が良かった。
今は広い休憩室でお茶をしながらくつろいでいた。
「ふぅぅぅぅぅぅぅ。さ~て皆さん。来週はとうとうメインイベントがやってきますよぉぉぉぉぉぉぉおほっう!!」
ヒッキが楽しそうに言う。
「へっ?何かあるの?」
僕が尋ねるとヒッキは驚いた顔で僕の頭を軽く叩きながら言う。
「オイオイオイオイ!レイくぅんんんんんんんん?大丈夫ですかぁぁぁぁぁぁぁ?知らないのかい?こんなビックイベントを!!!」
「たしかにビックだな!!!!」
へーリックが追従する。
「ビック!ビビック!ビビビっクゥゥゥゥゥゥ!」
サイクス。お前はただ言いたかっただけだろ。
年に一度の特別な日。
『女神の祝福デー』
この日は、男性、女性関係なく、好きな相手や意中の相手にプレゼントをする日なのだとか。
へぇ~。バレンタインデーとホワイトデーがくっついた感じといった所か。
ヒッキが話を続ける。
「俺たちもぉぉぉぉぉ。17歳だぁぁぁぁぁぁ。ボチボチ一人目の妻がいてもおかしくない年齢なのだよ!!君達!!!」
「一人目?」
僕がポカンとしている。
「なぁぁぁぁぁにをポカンとしているのかねレイ君!僕達は4人の妻をめとれるのだよ!!まぁ~一人だけでもいいけど、せっかく4人認められてるんだから勿体ないっしょ!!!」
「だな!」
「だ~な!!だ~な!!」
二人が追従する。
あ~。そうだった。この世界は、4夫4妻制。最大4人と結婚できるんだっけ。
しかも、地球の時と違って恋愛や付き合うという概念がなく、お互い了解したらそのまますぐ結婚という流れになるんだったな。
ある意味すごいな。失敗ができないもんね。まぁ~その為に4回チャンスがあるのかも。
「・・・・・でも、僕達は学生でしょ。もう結婚する人いるの?」
「何を言っているのかねレイ君!この学生の時期にフィアンセを作るんだよ!同学年や先輩達は、すでに一人や二人結婚の約束をしている奴は沢山いるんだよ!!だから、この特別な日がチャンスなんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!分かるかね!君は!」
「分かれや!!」
「分からんしゃい!!!」
「・・・・・なるほどねぇ。」
そんな日があるんなら、日頃から助けてもらっている仲間や友達にはお礼として何かプレゼントしようかな。
「・・・・・という事で!今度の休みはプレゼントを買いに行きます!どうでしょう!」
ヒッキが提案する。
「おお~!!いいね!!」
「いいね!!!いいね!!!」
「ハハハ。賛成~。」
三人に便乗した。
☆☆☆
学園生活では週に一回休日がある。
その休日の日。
僕達4人は学園都市『カラリナ』にあるショッピング街に来ていた。
その通りは休日でしかも『女神の祝福デー』が近いとあって、かなりの人で賑わっていた。どこを歩いても学生ばかりだ。
そゃそうか。学生と先生しかいない都市だもんな。
これだけの人。この都市にどんだけいるんだろうか。改めて『カラリナ』のすごさを実感した。
その一角にある大きな店に僕達はいた。その店はとても大きく、地球の時のショッピングモール並みに大きかった。
「おいレイ!これなんかどうだ?」
ヒッキが変な人形をもって見せてくる。
「いやいやいや。それ可愛いか?貰って喜ぶ物を選んだ方がいいと思うよ。」
「う~ん。だめかぁ~。」
そう言ってまた違う物を探しに消えていく。
「おいおいレイ!!これ可愛くね?」
へーリックがブラを持ってきた。花柄の可愛いブラだ。毎回思うがへーリックは確かにセンスはある。あるが・・・・・。
「うん。可愛いと思うよ。だけどさ、女の子これ貰って喜ぶか?むしろ引くわ!!」
「うう~ん。。だめかぁぁ~。。」
そう言ってまた違う物を探しに消えていく。
「おいおいおいレイ!!!これサイコ~じゃね???」
サイクスがマッチョポーズしている裸の彫像を持ってきた。
「サイクス。お前絶対わざとやってるだろ。喜ぶわけねぇぇぇぇぇぇぇぇだろ!!!」
「ううう~ん。。。。だめかぁぁぁ~。。。」
そう言ってまた違う物を探しに消えていく。
アホどもに付き合ってられん。
僕も見てまわろう。
僕は店内を端からゆっくりとまわってプレゼントを探し始めた。
「あっ可愛いな。」
手に取ったのは、白いブレスレットだ。珍しい。しかもとても細かい花柄が彫られている。白雪にとても合いそうだ。
これにしよう。
「あっこれもいいな。」
見るとこれまた花柄の髪留めだった。数種類ある内の2つを手に取る。ラフィンとキリアにとても合いそうだ。
うん。二人にはこれがいいかな。
・・・・・あとは、アイリと、妹のカザミ。その友達のココちゃんかな。
人にあげるプレゼントを選ぶのは、ほんとに久しぶりだった。
転移前の学生の時はお金がなく、バイトに明け暮れていたけど、それでも唯一、妹には誕生日にプレゼントを買って毎年あげてたっけ。
それ以来だ。
まぁ~。僕自身は今までプレゼントなんて貰った事はないんだけどね。
こういったイベントデーみたいな事は初めてだから、結構選ぶのも楽しいな。
その後も結構悩みながら、残りのプレゼント買った。
「いゃ~。久しぶりの買い物も楽しかったな!フフフ。これで準備万端だ!絶対にフィアンセをゲットしてやるぅぅぅぅぅ!」
ヒッキが雄叫びをあげる。
「ハッハッハ!!ヒッキには負けないぜ!!俺の方が先にゲットしてやるぅぅぅぅぅぅぅ!!」
へーリックが雄叫びをあげる。
「ガッハッハッ!!!俺だ俺だ俺だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
サイクスが雄叫びをあげる。・・・・・何が?
「ハハハ。まぁ~とりあえずは皆よさそうなプレゼント買えた事だし、頑張ってね。」
あの後、三人も色々と買ったが、へーリック以外はセンスが絶望的だったので、出来るだけ友達としてアドバイスはしたつもりだ。
僕は、お世話になっている仲間や友達にあげる程度だ。
三人とは熱量が違う。
気合が入っている仲間達にはぜひ頑張ってほしいものだ。
僕達は、プレゼントを買った大きな袋を持ちながら意気揚々と寮へと帰っていった。
☆☆☆
『女神の祝福デー』当日。
その日は朝から空気が違っていた。
「・・・・・はぁぁぁぁぁぁ。ドキドキするぜ。」
講義中。隣でヒッキが小声でつぶやく。
「・・・・・はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。緊張しまくりだぜ!」
へーリックが追従する。
「・・・・・はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。ヤバいぜ。ヤバいぜ。ヤバいぜぇぇぇぇ!!」
サイクスが合わせる。・・・・・何が?
ヒッキ曰く、この日の休憩時間や昼休みは戦場になるという。
男女とわず、我先にと告白や求婚の申し出がはじまるのだ。
こんな面白い日は初めてだ。
僕はワクワクしながら友達に話す。
「で?誰にアタックするの?」
「ん~?ハッハッハ。我は決めているぞ!・・・・・だが、親友とて、それは内緒だ!」
講義を全然聞いてないヒッキは覚悟を決めている顔で言う。
「・・・・・俺とサイクスは悩んでるんだよなぁ~。」
へーリックが頭を抱えながら言う。
へーリックとサイクスは平民の可愛い子にアタックしようと思っていたらしい。
しかし、今年は女子人気ランキングトップ10内に入った平民が3人もいた。
トップ10内の女子達に求婚できるチャンスなのだ。
「はぁ~。キリアちゃんは年下で可愛いし・・・・・。ラフィンちゃんはショートカットで好みだし・・・・・。スノーちゃんは・・・・・別格すぎるかぁぁぁぁぁぁぁ。」
へーリックが独り言のようにつぶやいている。
その3人の誰にアタックしようか悩んでいるらしい。
「でもな。あの三人は平民の出だからさ。俺達と同じようにアタックする奴はいっぱいいるだろうし、もちろん貴族や王族達も狙っているだろうな。」
サイクスが真剣な眼差しで分析する。
・・・・・なるほどねぇ。僕の仲間達はそんなに人気なんだ。なんか誇らしいな。でも、もし好きな子が出来ちゃったら仲間として一緒に行けなくなるからそれはそれで少し寂しいな。
そんな事を考えながら、まるで講義の話を聞いてない僕達4人だった。
☆☆☆
決戦の時。昼休み。
僕達は数ある食堂の館へと向かうと、皆、その館へ入らずに外で意中の人へアタックしていた。
僕達4人は意中の人にアタックしようと人の塊ができている方へと向かって行くと、数ある人の塊の中で特別大きな人だかりが2つあった。
その中心には、アイリと白雪が居た。
ハハハ。たしか人気ナンバー1,2だったっけ。すごいな。
アイリの方には貴族や王族が大勢押し寄せている。そしてもっと凄いのが白雪だ。貴族や王族だけでなく、多くの平民の学生までいる。すごい数だ。
見ているとその中の一人が前に出た。
ヒッキが小声で言う。「・・・・・あいつは5年生、北の大国『ギリア』の第2王子。ロマン=ガーイッシュだ。」
ちなみに、男子人気ナンバー1だそうだ。たしかに、顔も背も、生い立ちも文句なしなハンサムボーイって感じだな。
「スノー=ホワイトさん。君の為に、特別な物を用意したんだ。受け取ってくれるかい?」
ロマンはそう言うと、大きなプレゼント箱を自信満々に白雪の前にだす。
「今年で僕は卒業だ。君が良ければ僕と一緒に国に来てほしい。」
オオ~!
ロマン様~!いや~!
男性からはどよめきが、女性からは悲鳴の声が聞こえる。
すると白雪は笑顔を見せながら答えた。
「・・・・・私は心に決めている人がいるの。その人以外には、はっきり言って興味がないわ。ごめんなさい。」
ロマンは箱を持ったまま固まっていた。
ハハハ。きついな。こういった感じが他にも起こっているのだろう。・・・・・でも、なぜかホッとしている僕がいた。ん~なぜだ?
そんな感じで眺めていたら、仲間達の心の準備が終わった様だ。
トップバッターはへーリックだ。
「よし!行ってくるわ!レイ!一発頼む!」
へーリックの顔を軽くひっぱたいた。
「がんばれよ。へーリック!」
気合注入だ。
へーリックは沢山人だかりが出来ている方へと向かって行った。順番待ちとなるであろう最後尾へと。・・・・・ラフィンの元へ。
う~ん。ラフィンかぁ~。たしかラフィンは自分より弱い相手には見向きもしない子だからなぁ~。大丈夫だろうか。
僕達はしばらく待っていると、へーリックが戻ってきた。
「へーリック!どうだった?」
「・・・・・俺の前の貴族や王族、平民の出の奴らも皆、即断られてプレゼントを渡せなかったんだけどな。俺だけプレゼントを受け取ってくれたんだ。」
「ほんとか!」
僕は喜ぶ。
「・・・・・でもな。言われたのが『レイの友達だよね!これからもレイをお願いね!』・・・・・みたいなこと言われて終わった・・・・・。」
・・・・・。
僕が黙っていると、へーリックが突撃した人だかりから一人の女の子がこっちへと駆けてきた。
ラフィンだ。
「レイ!」
ラフィンは真っすぐに僕の胸へと抱きつく。
「この日は特別な日みたいなんだ!だから僕はね!レイにこれをあげる!」
ラフィンは、はしゃぎながらリボンの付いた箱を僕に渡した。
「ハハハ。ありがとう。じゃ~僕からもいつも助けてもらっているお返しにこれどうぞ。」
同じようにプレゼントをラフィンに渡した。
「いいかい。僕達は今は仲間じゃないんだからね。・・・・・抱き着かない様に。」
小声でラフィンに言う。
「は~い!」
ラフィンは僕のプレゼントをもらうと、とても喜びながら食堂へと入っていった。
「・・・・・レイ君?」
僕の肩にへーリックの手が置かれた。
「・・・・・はい。なんでございましょうか。へーリックさん。」
「なんでございましょうかじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ。なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
・・・・・その後、へーリックを納得させるのが大変だったのは言うまでもなかった。
「よっし!行ってくるわ!レイ!一発頼む!」
サイクスの顔を軽くひっぱたいた。
次はサイクスだ。
「がんばれよ。サイクス!」
気合注入だ。
サイクスはまた違った沢山人だかりが出来ている方へと向かって行った。順番待ちとなるであろう最後尾へと。・・・・・キリアの元へ。
う~ん。キリアかぁ~。キリアは黒の一族。ずっと女の人達と過ごしていたから男に免疫があまりないからなぁ~。かなりハードル高いだろうな。大丈夫だろうか。
僕達はしばらく待っていると、サイクスが戻ってきた。
「サイクス!どうだった?」
「・・・・・俺の前の並んでいた奴らは皆一言。『いらない。』って言われて断られてたよ。でもな。俺だけプレゼントを受け取ってくれたんだ。」
「ほっほんとか!」
僕は喜ぶ。
「・・・・・でもな。言われたのが『レイの友達。・・・・・よろしく。・・・・・。』って二言言われて終わった。」
・・・・・。
僕が黙っていると、僕を見つけたのか、人だかりから一人の女の子がこっちに駆けてくる。キリアだ。
「ゴフッ!」
キリアはそのまま僕の胸へとダイビングしてきた。
「・・・・・レイ。・・・・・今日は特別な日。・・・・・これあげる。」
キリアは僕の胸に顔をうずめながらリボンの付いた箱を僕に渡した。
「ありがとう。じゃ~僕からもいつも助けてもらっているお返しにこれどうぞ。」
同じようにプレゼントをキリアに渡した。
「いいかい。僕達は今は仲間じゃないんだからね。・・・・・抱き着かない様に。」
小声でキリアに言う。
「・・・・・分かった。」
キリアは僕のプレゼントをもらうと、とても喜びながら食堂へと入っていった。
「・・・・・レイ君?」
僕の肩にサイクスの手が置かれた。
「・・・・・はい。なんでございましょうか。サイクスさん。」
「なんでございましょうかじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ。なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
・・・・・その後、サイクスを納得させるのが大変だったのは言うまでもなかった。
食事が終わってヒッキは意中の子が出てくるのを待っていた。
ラストバッターはヒッキだ。
ヒッキだけは成就してもらいたいものだ。
すると後ろから声をかけられた。
「お兄ちゃん!」
見るとカザミとココちゃん。あとアイリと白雪もいた。その後ろに見計らって二人にアタックしようと大勢の貴族や王族、平民の男どもが見ている。
「おお!どうした?」
僕が驚いていると、カザミはリボンの付いた箱を僕に手渡した。
「・・・・・いつも貰ってばかりだったから。これはね、ちゃんとアルバイトしたお金だからね。いつもありがとうお兄ちゃん。そしてこれからもよろしく!」
ハハハ。まさか妹から貰える日がくるとはね。ちょっと涙がでそうだ。
「あの・・・・。レイさん。いやじゃなければこれを貰ってください。」
隣にいたココちゃんが赤い顔をして僕に渡す。
「・・・・・ねぇ。今日は弟もいないし、あげる人がいないからこれあげるわ。」
そう言うとアイリは真っ赤な顔をしながら僕にプレゼントを渡した。
まったく。素直じゃないなぁ。
「レイ?・・・・・私もこれ・・・・・。」
赤い顔をした白雪が僕にリボンの付いた箱を渡す。
「ハハハ。白雪。アイリ。カザミ。ココちゃん。ありがとう。とてもうれしいよ。じゃ~これは僕からだ。」
僕も選んだプレゼントを皆に渡すことができた。
お互いちょっと照れながらプレゼント交換をする。
なんかいいな。こういうのも。
ちょっと離れた所からもの凄い殺気が男どもからしているが、それはごめんなさい。
あっ!そうだ!ヒッキだ!
カザミ達が来たから完全に忘れていた。
僕の隣にずっといたヒッキを見た。
ヒッキはずっと硬直していた。
「・・・・・あれ?ヒッキさん?」
「・・・・・すぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。・・・・・はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
ヒッキは大きく深呼吸すると、一歩前へでて自分が買ったプレゼントをその人の前にだした。
「・・・・・カザミちゃん!僕と付き合ってください!!!」
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?????????
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