第57話  激闘

僕達は順調に駒を進めていた。


その後3戦ほど戦ったが、初戦と同じで、白雪一人で全てを倒してしまった。


僕を含む4人は動いてさえいなかった。





「さぁ~!各ブロックもそろそろ大詰めぇぇぇぇ!!次はDブロ~ックだ!これで勝った方がこのブロックの決勝へと行ける!快進撃の『ホワイトフォックス』!どこまで行けるか!はたまた止める事ができるか『魔術の杖』!」



今回の相手は、『魔術の杖』。10人パーティだ。表示をみると、現地人だな。



そして大会のルールとして、パーティ登録をされていれば何人でも参加は可能なのだ。




「リーダー。どうしますか?」




『魔術の杖』は全て魔法使いで構成されている。魔術を極め、冒険者としてその名前を広めるためだ。



・・・・・『ホワイトフォックス』。今までの戦いを見てきたが圧倒的に強かった。



4戦見たが、全て一人で倒しているのだ。リーダーを含めてまだ4人の実力が全然分からない状態だった。



・・・・・200オーバーというのは、間違いなさそうだな。



ならば、我々は魔法使い。武力では敵わないが広範囲の魔法をぶち込めばどんなに高いレベルの相手でもダメージを負わせる事ができる。



「予定通り、我々の最強魔法でまとめて叩く!!」




「始め!」


審判が声を上げる。




始まる前に詠唱を終えている10人の魔法使いが、同時にいっせいに叫ぶ。





「メテオ!!!」





空から大きな隕石が僕達めがけて落ちてきた。





ドドドンッ!!





大きな土煙が舞う。







「・・・・・殺してしまったか?」



リーダーが言う。






相手が相手だった。



勝つためには手加減など到底できない状況だった。



土煙が徐々におさまってくる。






「・・・・・何だと?」



見ると、『ホワイトフォックス』の周りにドームの様な防御壁が展開されていた。



「チッ!防御魔法を使える奴もいるのか!」



すると、真ん中にいるリーダーらしき仮面をかぶった男が言う。




「・・・・・カイト。」




後衛にいた一人の金髪の男が弓を引く。



すると、今まで何もなかった光の様な矢が、あたかもそこに最初からある様に現れる。



その男は楽しそうな声で言う。



「・・・・・ねぇ君達。100本の矢を今まで受けた事あるかな?・・・・・秘技、【100矢】。」





ブワァァァァ。





光の矢を放った瞬間、一気に分裂して無数の矢が現れた。



その無数の矢が、後ろから僕の体すれすれに、目にも止まらぬ速さで通り抜ける。正面から見ている相手は、僕の体から矢が大量に放たれた様な錯覚におちいっただろう。





ドドドドドドドドドドッ





10人いた魔法使いの両手両足に数本の矢が刺さっていた。



とてもではないが、痛みで動かすこともできない。




「グッ・・・・・。こっ降参だ。」





「勝者!ホワイトフォックス!」



歓声が響き渡った。








☆☆☆








「さぁ~!各ブロックの代表戦だぁ~!ここDブロックの代表戦は、一番の注目戦!『ホワイトフォックス』との相手は何とぉぉぉ!前回覇者『剛拳流手』だぁぁぁぁ!!」




午前、『魔術の杖』と戦って勝った僕達は、午後はDブロックの決勝戦だ。



相手は、この天武祭の前回優勝パーティ。



見ると6人組で、剣や甲冑などといった物は着けてなく、男女とわず皆軽装だ。手には全員【ナックル】をつけていて、闘着は中華を思わせる服を着ている。



これは・・・・・モンクか?





「ジュンダイ。今回も同じ戦い方でいいの?」



チャイナ服っぽい闘着を着た女性は、リーダーに問いかける。




『剛拳流手』


天武祭前回優勝パーティ。




その戦い方は、武器を使わず、己の体で戦う。


長い修行を経て鍛え上げられたその肉体は、気を使う事で魔法も効かず。斧を防ぎ、剣を折った。


そして、目で追えない程のスピードで相手を一撃でねじ伏せる。



そんな圧倒的な強さで前回は優勝したのだ。



たた、今回は状況が違う。相手は200オーバーだ。レベル差というのは、イコール身体能力の差になる。


我々のレベルが160前後。


普通なら勝機は薄いだろう。



だが、それを補える【技】があり【奥義】がある。


40,50位のレベル差ならうめられるだろう。今までもレベルが離れた強い魔物と戦ってきたのだ。





ジュンダイは言う。



「ああ。いつも通りだ。・・・・・ねじ伏せるぞ。」



「オオ!!!」






「始め!」


審判が声を上げる。






「闘気硬!」



全員、独特の呼吸法で、体を鋼の様に硬くする。



ジュンダイは、真ん中にいる仮面をしたリーダーを見る。相変わらず、両手はポケットに手を入れたままだ。今までの戦いもずっとその恰好だった。



ふん。その余裕・・・・・。すぐにその手を出させてやる。





「行くぞ!」



6人が駆けだした瞬間だった。





「・・・・・ラフィン。」





ファ。




リーダーの左にいたショートカットの女が、土煙と共に消える。






ドンッ!!






『剛拳流手』の一人が、観覧席の壁まで吹き飛ばされた。



「なっ?」





ドドンッ!!!





すかさず、その女の回し蹴りでもう一人宙に飛び、流れの2連蹴りで更にもう一人宙に飛んだ。





「ハッ!」





ドドドンッ!!!!





すかさずチャイナ服を着た女性がその女の仮面めがけてハイキックをしたが、ギリギリで躱し、掌底を腹に当てる。



「ガハッ!」




「くらえぃ!奥義『破壊拳』!」 「奥義『剛蹴り』!」





ドドドドドン!!!!!





ジュンダイと、もう一人の仲間が同時に奥義を女にくりだした。






シュ~・・・・・。






あまりの激しさに、空気が震え、土煙が舞う。






「なっ・・・・ばっ馬鹿な!」



土煙が晴れると、その仮面の女は両手で、ジュンダイの拳と仲間の足を掴んでいた。





・・・・・うそだろ?我々の攻撃を手で防いだだと?しかも奥義を!!!



掴んでいた拳と足を離したと同時に、両手を使い二人に掌底を叩きこんだ。






ズズンッ!!!!






「ハッ・・・・・。ふっふざけんなよ・・・・。なんだよ。この強さは。」



ジュンダイは攻撃を受け倒れた。・・・・・我々は『闘気硬』をつかっているんだ。そんな攻撃。普通なら効かない。



倒れたジュンダイを見ながら、その仮面の女が喋る。



「ああ!そういえば、どんなに硬くしようが、防具をつけようが、僕の攻撃は効くからね!なぜなら僕の攻撃は内側を破壊するんだ。エヘンッ!」



その女は自信満々に倒れているジュンダイに話す。



・・・・・内側からだと・・・・・勝てないわけだ。まだまだ知らない体術があるのか・・・・・。



ジュンダイはそう思いながら気を失った。






「勝者。『ホワイトフォックス』!」



地鳴りの様な歓声が響き渡った・・・・・。








☆☆☆








天武祭。残り2日。




僕達はとうとう準決勝まで勝ち上がった。




「さぁ~。各ブロックの代表が決まって、とうとう準決勝だぁぁぁぁ!!まずはBブロック代表!こちらも最近有名になったSS級パーティ~!倒した魔物は骨も残らない!『トウェンティーエンジェル』!」



見ると、様々な武器や防具を着ている。魔術師もいるな。・・・・・っていうか、人数多すぎだろ!



その名の通り20人のパーティだった。



いやいや。クランにしなさい。パーティじゃないだろ。



「そして!とうとう前回王者をも倒してしまった大注目のS級パーティ。SS級をも倒すか!『ホワイトフォックス』!」




すごい歓声が響いている。




あれ?




最初の挨拶で並んでいると、分かった。



この人達、プレイヤーだ。




「あら。お仲間ね。貴方お名前は?」



「僕ですか?レイ=フォックスと言います。」



「レイ=フォックス・・・・・。VRMMOの時にその名前を聞いたことがないわね。しかも、お仲間は現地人でレベル200オーバーって。どんなプレイをしていたのよ。」



「ハハハ。多分皆さんが知らない国で遊んでただけですよ。」



「そう。あまり語らず・・・・か。私達プレイヤーは情報が命ですものね。それじゃ。PVP。楽しみましょう。悪いけど勝ちにいくわよ。」



「分かりました。お互い頑張りましょう。」





話した後、お互い礼をし、離れた。





「始め!!!」






「・・・・・キリア。」






「ほい。」







ドォォォォォォォォォォォン!!!!!!!







「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ・・・・・。」








Dブロックで戦った『魔術の杖』10人が唱えた【メテオ】なんて可愛いものだった。



一瞬にして全てを吹き飛ばす大爆発だった。



『トウェンテイエンジェル』20人全員が吹き飛ばされ、もの凄い勢いで壁へと激突した。



奇声をあげながら吹き飛ばされたリーダーがよろよろと、起き上がる。




「はぁぁぁぁぁ?・・・・・貴方達、強すぎ。レベル200なんてもんじゃないでしょう。・・・・・そっちのレベル100のリーダーもね。」



「負けよ負け。降参だわ。」





「勝者。『ホワイトフォックス』!!!」





ワァァァァァァァァァ!



歓声が響く。





・・・・・何もできなかった。私達もそこそこ上位のプレイヤーだと自負していたのに、あまりにも違いすぎた。何よ「ほい。」って。無詠唱もいいとこよ!



レイ=フォックスと言ったか。あのプレイヤーはうまくレベルを偽装しているに違いない。後で捕まえて色々と聞きたいものだ。



「・・・・・まだまだ遥か上がいるということね。」



面白い。そうでなくては。



せっかくこの世界へ転移したんだものね。楽しまないと。



『トウェンティエンジェル』のリーダーは、勝利して控室へと戻って行くパーティを見ながら、再戦を誓った。








☆☆☆








天武祭最終日。




この日は、午前中に個人戦の決勝戦。そして、午後はパーティ戦の決勝戦だ。




個人戦は、定評通り、エリアスが順当に決勝へと進んだ。



エリアスさんの戦いを見たが、今だから分かる。



剣を極めた達人だと。



僕は【剣神】ルネ師匠に教えてもらったが、短期間だ。後は、戦いながら教えてもらった事を完成へと近づけるしかなかった。



圧倒的にその時間と経験が足りていない。



しかし、エリアスさんは違う。



小さな頃から剣の頂点を求め、長い年月と経験でここまできている。



習ってなくても、師匠のルネと同じ様な動きだった。エリアスの完成形がルネと同じ剣術だったのだろうと、見て思った。



個人戦の決勝の相手は、僕と同じプレイヤーだ。



名はリフォード。剣士でレベル240と表示されてあった。シュバインさんが言うトッププレイヤーの一人だろう。



僕と同じソロプレイヤーなのだろうか。



結果は、エリアスとそんなにレベル差はなかったが、実力があまりにも違いすぎた。



開始の合図と同時にリフォードはスキルを使った必殺技を繰り出すが、エリアスは相手の動きを見て何事もなかったかのように躱していく。



そして、慌てたリフォードが大技をだそうとした瞬間に目にも止まらぬ一刀で倒してしまった。





圧倒的だった。





・・・・・僕とエリアスさんのレベル差は50以上あるけど、もしエリアスさんと戦ったら勝てるかどうか。いくらステータスが高くても実力に差があれば負ける。



僕も低い時はスキルのおかげで強い魔物に勝てていたのだ。



つくづくそんな事を考えさせられる個人戦の決勝戦だった。



個人戦はエリアスの9連覇で幕がおりた。







次は団体戦だ。



最終日。しかも夕方とあって、観客席はもちろん満席。



全世界の冒険者協会にある魔法鏡で市民も注目していた。






「さぁ~いよいよやってきましたぁぁぁ!この天武祭最後の戦い!!パーティ戦決勝だぁぁぁぁぁぁ!」




歓声が地鳴りの様に響き渡る。




「まずは、順当に勝ち上がってきた優勝候補!世界に9組しかいないSSS級パーティの一つ!そして世界5大クラン、HEAT(ヒート)の一角のパーティ『7剣星』!!!」



入場口から7人全員が腰にレア物であろう特徴のある剣を携えながら現れた。



「・・・・・そして!全てのパーティをメンバーの1人で倒してしまった圧倒的な強さを見せている台風の目!『ホワイトフォックス』!!!」



紹介されながら闘技場の中央へと僕達は向かった。





決勝を戦う『7剣星』の7人と相対する。・・・・やはり、全員がプレイヤーだ。そのリーダーらしき男が言う。





「・・・・・君がレイ=フォックス君だね。『トウェンティエンジェル』のリーダーから聞いたよ。僕はこのパーティのリーダー、ライン=ジョイだ。よろしく。」



「ラインさんですね。よろしくお願いします。」



「君みたいな人がVRMMOの時に名前が上がらなかったなんてね。とても不思議だよ。」



「ハハハ。あまりプレイヤーの人と接触がなかったからですかね。」



「でも、NPC・・・・・いや、現地人でこんなにも強力な仲間を連れているなんてね。こういった進め方もあったんだね。・・・・それではお互い正々堂々PVPを楽しもう!」



「ええ!」





周りはボルテージが最高潮だ。





お互い50m程離れて開始の合図を待つ。





「・・・・・げっ!!!」





僕は、ふと観客席を見ると特別席の方に目がいった。そこには各国の要人が見ている。もちろんアルク帝国の皇帝もだ。



その近くのサブの特別席にはなんと、アイリと妹、その友達のココちゃん。更に飛び跳ねながら見ている悪友3人組がいた。






まじか・・・・・。





本当は、最後まで僕はリーダーとして真ん中で何もしないで終わりにするつもりだったのだが、状況が変わった。



妹が見ているのなら兄としてカッコイイ所を見せないといけない。



これは『兄道』として必須である。



しかたないか・・・・・。





「皆。この決勝戦は僕が出るよ。皆は下がっててくれ。」



「あれ。私達に最後まで任せるんじゃなかったの?」



白雪が問いかける。



「うん。そう思ってたんだけど、あそこで妹が見てるんだ。」



「・・・・・あれ。・・・・・カザミだ。・・・・・じゃしょうがない。・・・・・・レイ任せる。」



キリアは同じ一年生で、いつのまにか妹とも仲良くやっているらしい。



「僕のお兄ちゃん達も僕の前だとカッコよく見せたがるんだ!レイの気持ちは分かるよ!」



ラフィンが楽しそうに言う。



「ハッハッハ!それはしょうがないね。」



カイトも同意している。






皆、納得してくれたみたいだ。







それじゃぁぁぁぁぁ・・・・・僕がいきますか!!!











「天武祭パーティ戦、決勝戦~!!開始ぃぃぃぃ!!!」





審判の声が高らかに響き渡った。

















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