第37話 天界

しばらくテイルさんの後について歩いていくと、同じ大きさの扉に行き当たった。


テイルはその扉を開ける。







「・・・・・神殿の中?」







中に入るとそこは広い空間で無数の柱に囲まれ、装飾された彫刻などが置かれていた。


テイルはそのまま真っすぐに神殿の出口に向かっていく。





「わぁ~!」



僕はこの圧倒的な作りに目を奪われながらついていく。







丘の上に建てられていた神殿の外にでると、左には真っ青な青い海がひろがり、右には島々があり、真っ白な家が建ち並んでいた。


そして、とても空気が澄んでいて、この世界そのものがとても神聖な様に思われた。








「すげ~!」



思わず声がでた。


こんなに綺麗な場所を見たのは初めてだ。






「それでは、レイ殿。三日後、迎えをよこすので、その間はゆっくりと休んでいてくれ。」


そう言うとテイルは魔法を唱え、掌から小さな青い鳥の様な物が現れた。




「この鳥が宿を案内するから、ついていけばいい。初めての土地だ。まぁ~途中寄り道しても問題ない。」




今はまだ昼頃だろう。


色々と見たくてしょうがない。




「分かりました。お言葉に甘えて今日はゆっくり見てまわりますね。」



「了解した。・・・・・カイト様は私と先に行きますよ。」



「え~!何でよ!」



「うるさい!毎回迷惑をかけてからに!」


テイルは嫌がるカイトを引きずって連れて行ってしまった。






カイト・・・・・。だんだん何者なのか見えてきたなぁ。まぁ後でいきさつも含めてゆっくりと聞こう。






「それじゃ白雪。行こうか。」



「うん。」



僕たちはゆっくりと美しい町に向かって歩いて行った。









☆☆☆









町に入ると、さらに綺麗さが際立ってみえた。


ゴミ一つない道。建てられている家々や店は白く統一されている。


そして、人々も多く行きかっていた。白いローブやシャツなどの服装を着ている人が多い。




ふむ。見た目は僕たちと同じ感じだなぁ。




キョロキョロ見ながら路面店を進んでいくと、美味しそうな果物を売っている店があったので立ち寄ってみた。


ここはテイルさんが言っていた僕たちの住んでいる現界?の通貨は使えるのだろうか。




「すみません。」



「はい。いらっしゃい。 !! あなた達・・・・・。」



優しそうなおばちゃんは僕を見るなり驚いていた。



「あなた達ね。噂の冒険者は。」



「えっ。分かるんですか?」



見た目は同じだ。



「ええ。私達天界人にない物が見えるからね。でも私の所に立ち寄ってくれるなんて感激よ!さぁ。欲しい物選んでちょうだい。安くするよ。」



何が見えるのだろうか。オーラみたいな物か?



「ところで、ここの通貨は同じGで使えるんですか?」



ゴールドを店主に見せると



「ええ。この世界も同じゴールドよ。遠慮なく買ってちょうだい。」




よかった。




僕たちは見たことのない果物を買って食べながら歩く。・・・・・この果物ちょ~うめぇな!




ニコニコしながら白雪と歩いて、ふと海辺の方を見ると、






ん?






誰か倒れてないか?






店と店の間に見える海辺にうつぶせになっている人がいた。



ちょうど死角で誰も気づいてない様だ。



僕たちはすぐに駆け寄った。







「あの~・・・・・大丈夫ですか?」


肩を優しく触って仰向けにする。






見ると小柄な可愛い女の子だった。


身長は150前後だろうか。髪は短く、ボーイッシュな感じだけど、とても可愛いらしい顔をしていた。





しばらく返答を待っていると、女の子が一言。



「・・・・・ご飯。」









☆☆☆









「ん~!!うみゃい。うみゃい!」


ステーキやら魚やら色々と口にかっ込みながら、言葉にならない感想を言っている。





近くの飲食店で食事中だ。





女の子の前にある皿がとんどんとなくなって積み上げられていく。



気持ちいいほどよく食べるな。



余程お腹が空いていたのだろう。倒れるくらいだ。



うん。でもたしかにうまいな。



僕たちも長いダンジョン後の食事だ。とてもおいしい。



しばらく飲み食いした後、やっと落ち着いてお茶を飲んでいた。






「助けてくれてありがとう!」


すっかり元気になった女の子がお礼を言う。




「自己紹介がまだだったね。僕はレイ。彼女は白雪。よろしくね。」



「レイに、白雪・・・・・。うん。覚えた。僕はラフィン。よろしく!」




ん?僕?女の子なのに僕よびか。



何か萌えるな。




聞くと、遠い国から旅してやってきたのだという。海を渡っている途中に、荷物を全部海に落としてしまったとの事。



「へぇ~。一人で旅なんてすごいね。」


女の子一人での旅なんて大変だろう。




すると楽しそうに彼女は話す。



「僕はね、ずっと冒険をするのが夢だったんだ。色んな所へ行って色んな物が見たいんだ。だから僕の国から早く出たくて出たくて。約束で16歳になったから出られたんだ!」




ふぅ~ん。色々と決まりがあるんだろう。よかったよかった。




「あと出られたのには一つ条件があるんだけどね。」



「条件って?」



「ん~・・・・・。ごめん!助けた人でもそれは言えない秘密!」



「そうか。」



僕は笑顔で返答した。



という事は、旅をしていて今彼女は無一文という事なんだろう。






・・・・・助けられないだろうか。






僕は提案をしてみた。



「ねぇ。ラフィン。どうだろう。僕たちと一緒にしばらくは行動しないかい?僕たちは今日初めてこの世界に来たんだ。この世界の分からない事を教えてくれる代わりに食事や宿、必要な物は面倒見るよ。」



「ほんとに!」



「・・・・・まったく。レイはいつもそうね。」



ラフィンはとても喜び、白雪は微笑みながら、しょうがない顔をしている。




「レイと白雪は冒険者?」



「うん。ここにも冒険で来たんだ。」



「!! なんでヒューマンがいるんだろうって最初見た時に思ったんだ。という事は『現界』から来たんだね!わぁ~!初めて見た!僕も分かることは教えるからレイの冒険も教えてね!」





純粋な目をキラキラさせている。



ほんとに冒険をしたかったんだろうな。



「そうだね。とりあえずは次の用事まで3日あるから、おもしろいか分からないけど、現界であった冒険を教えるよ。」



「やった~!」






Tシャツっぽい服に、指が出るグローブ。短パンに靴というほんとにカジュアルな服装が良く似合う可愛らしい女の子とこの世界でしばらくは仲間になった。



しかしよくこの格好で海を渡ったな。



ある意味感心しながらも、僕たち3人は夜になるまで話をしていた。



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