第36話 頂上



「・・・・・いるね。とりあえずあそこまで行こうか。」


僕たちはその人のいる所まで歩いて行った。







その人は真ん中で佇んでいた。


僕より少し大きい。大柄で背は190前後位だろうか。金髪が肩までのびていて、真っ白い羽の模様の鎧を付けている。


そして右手には大きな矛が握られている。



何というか。まさしく『将』って感じだ。かっこいい。



その人は僕たちが近づくと話はじめた。






「なんだ。初めて天の塔の頂上へ到達する者が現れると聞き、来てみたらヒューマンとはな。」



その人は僕をまじまじと見てから他の2人を見る。





「あとは精霊人か。もう一人はおいといて・・・・・。しかも、貴様。ほとんど俺と同じレベルとは。ヒューマンでこんなレベルなど聞いたことがないぞ!」



おいといてってなんだよ!ってカイトがつっこんでいたが、まるきり無視だ。



「あぁ。俺はテイルという。天界人であり、3大天将の一人だ。」







えっ?天界人?!!なにそれ。







「僕たちは頂上を目指してきました。テイルさん・・・・・ですか?ここが頂上でいいんですか?」



「ああ。ここが『天の塔』の頂上だ。そして天界の玄関口でもある。」



「天界?」



「フフフ。まぁ知らないのも無理はない。色々とこの世界の事が知りたいのなら、天界で教えてやろう。この塔、最後の試練。この俺を倒すことができたらな。」



「へぇ~!ここは天界という所へ通じる道だったんですね。」



「はるか昔から今まで、ここまで来れる者など、現界で存在しなかったからな。天界では大騒ぎさ。そしてその者を受け入れるのには決まりがあってな。天界の最高実力者、3大天将の1人に認められるのが条件なのさ。だから俺が見極めにきた。」






せっかくここまで来たんだ。


天界という所にぜひ行ってみたい。


なんたって冒険者だからね。






「分かりました。では勝負して勝てば入れてくれますね?」



「ああ。約束しよう。」



このテイルという人は、僕とほぼ同じレベルだと言っていた。少ししか話してないが、感じで分かる。おそらくウソはついてないだろう。なら今までの腕を試すにはもってこいだ。





「二人とも。離れてて。」



「おっと。お前たちは近いと危険だからもっと遠くまで離れてろ。」





白雪が言う。


「レイ。剣にもどろうか?」



「大丈夫だよ。殺し合いじゃないから。まかせて。」



「ん。分かった。がんばってね。」




「レイ!あんな金髪ゴリラコテンパンにしてやれ!」


いやいやいや。お前も金髪だろ。




二人は言うと、遠くまで離れてこちらを見ていた。







「さて、準備はいいか?」


テイルが大きな矛を軽々と回しながら構える。





僕はゆっくりと剣を抜く。


「いいですよ。」





「では行くぞ!簡単に潰れてくれるなよ!」




そう言ってテイルの矛が僕めがけて振り下ろされた。









☆☆☆








ガガガガガガガガ!ギィン!ギィン!ギィン!ギィン!





矛がもの凄い速さで繰り返し打ち込まれてくる。



それを僕が受け止めていた。





ギィン!ギィン!ギィン!ギィィィィィン!





全て受け止めると、テイルが一歩下がり、驚いた顔をしていた





「お前・・・・・なんだその剣は。」






驚くのも無理はない。普通の細い剣なら、あんな大きな矛の剣圧を何発も受け止めていたら折れるだろう。


しかし、この剣は刃こぼれ一つしていない。





世界に7本しかないという伝説の剣の一本。


『WHITE SNOW』


その名に恥じぬ、すごい剣だ。


この剣と白雪がいなければ僕はここまで来れなかっただろうな。






「しかも、俺の動きに楽々とついてくるか。おもしろい。なら、本気をだしたらどうかな!!」


テイルの周りの空気が変わった。




「強体波動。」


体からオーラの様な物がでたかと思うと、一気に踏み込んできた。






速い!




キキキキキキキギィンギィンギィン!




矛が5本同時に振り下ろされるほどの残像を残す速さでテイルは切り込んでいた。






ギギギギギギギギィン!






「はっ!これも受けるか!!!」




僕はそれさえも、受けたり、流したり。





ギギギギギギギギィン!ギィン!





・・・・・ザンッ!





そして、繰り出される矛の一瞬の合間にカウンターを入れた。


見るとテイルのライフが減っている。効いたようだ。






「ぐっ!」




「お前・・・・・この速さを防ぎながら攻撃をいれるか!本気の攻撃をこんな簡単に防がれたのは初めてだ。」





テイルは数歩下がり、矛を上段に構える。






「爆炎斬!!!」





ゴォォォォッ!!





振り下ろすと、扇状にもの凄い爆炎と剣戟が飛んだ。









「ふぅ~・・・・・。やったか?」





テイルの目の前には床が焦げ、無数の剣後が残っていた。






チャキッ。






後ろで音が聞こえた。


テイルがすぐに後ろを向くと同時だった。








「奥義。17閃。」





・・・・・


・・・・・


・・・・・






バッ!! 





テイルの体のいたる所から血が飛び散った。





片膝をつく。





何をされた?


ライフを半分以上もっていかれた!






レイが剣を鞘にしまいながら静かに話す。



「この技は敵の急所を同時に切り込む必殺の技なんだ。普通ならこの一撃で多分倒れてたよ。でも、全部急所を外した。はい。ポーションどうぞ。」



テイルにハイポーションをあげる。






テイルはポカンとあっけにとられている。




「フフフフフ。ハーハッハッハッ!参った参った。これは完敗だ。俺よりレベルが5つ低いのに技術が全然かなわなかったわ!もっと色々と技をだしたかったんだけどな!」




「全部受けてたら僕もやばいからね。最初の大技がくるタイミングを見計らってたんだ。」




「そうか!久々に悔しいな!」


テイルはドカッと座り、天を見上げた。




「ふぅ。約束は約束だ。天界の門を開こう。」




テイルは座りながら、片手を掲げた。



すると、一部の空間がねじ曲がり、目の前にとても大きな扉が現れた。







気づくと、白雪とカイトが隣にいた。



「お疲れ様。レイ。」



「やったな!レイ!」



「うん。ありがとう。これで目標は達成したね。テイルさん。一つお願いがあります。」



「なんだ?お前は勝者だ。出来るだけ聞こう。」





僕はルネの剣を取り出した。





「この剣を、この場所に残しておきたいんですがいいですか?」



「ああ。そんな事か。好きにしろ。」



「ありがとうございます。」



僕たちは外側へ向かい、雲を突き抜けた真っ青な空が見渡せる所へルネの剣を刺した。









「師匠・・・・・着いたよ。」









僕たちは暫く黙祷をささげた。









「さて、後はカイト。依頼を達成したぞ。これでいいのか?」



「ああ!達成だ。後で報酬は渡すよ!それと事情もね。」



「そうだな。後でゆっくり聞かせてくれ。」



僕たちは中央の巨大な扉に戻りながらカイトに話をしていた。





「終わったか?」


テイルが聞く。



「はい。用事は済ませました。」



「そうか。では、後に付いてきてくれ。」



テイルが何か呪文を唱えると、その巨大な扉が開いた。






するとまた無機質な声が聞こえてきた。



・・・・・初の『天の塔』攻略とヒューマンが初の『天界』へと踏み入れる。を達成しました。ボーナスとしてレベル20進呈します・・・・・






オイオイオイ。まじか。


通常上がらないのに、一気に20上がったよ。





ふむ。やはり何か特別なイベントだったり、挑戦だったりが上がるポイントなのかもな。





僕たちは、テイルの後に付いていき、光る巨大な扉の中へと入っていった。


振り返ると、遠くにみえる一本の刺さった剣は優しく、嬉しそうに佇んでいる様に見えた。













レイ・・・・・ありがとう。













なんでだろう。







何故か聞こえた様な気がしたんだ。











巨大な扉は静かに僕たちを入れて閉じていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る