第38話 天空の城

3日目の朝。


僕たちは、宿屋にあるテラスで朝食をとっていた。


海が見えるこのテラスは、リゾートに来たかと錯覚するほど優雅だった。







この3日間はあっという間だった。







2人と一緒に町中を巡ってみたが、まだ回りきれずにいた。


見た目は密集していて、海に面した小さな町かと思ったが、ずっと奥まで店や家が続いていて、とても大きな町だと分かった。


すべての建物が白で統一されているから、とても綺麗な街並みにみえた。






「ねぇ。雪。これあげるから、それちょうだい。」



「ん・・・・・。」





白雪とラフィンはすっかり仲良くなったようだ。



ハハハ。すでに、あだ名で呼んでるし。



ラフィンは裏表のない、思った事を率直に言う素直な子だった。まじめな白雪と気が合ったのだろう。





よかよか。




さて、ラフィンにはこの世界の事を色々と聞きたかったが、自分の国から出たことがなく、他の国の事はほとんど知らないとの事。


だからあまり情報は聞けなかった。


ただ、分かった事は、この天界は3つの国で成り立っているという事だった。



その内の1つ。天竜が支配する国『テンペスト』から来たのだと言う。


じゃ~ラフィンは竜なの?と聞いたら



「竜じゃなくて天竜だよ。それで僕は天竜人なんだ。」



という答えで、よくわからなかった。



カイトかテイルさんなら色々と知っているだろうから、会った時に聞こう。






「おっ。これいただき~♪ へへ~♪」



僕がぼ~と、考え事をしていたら、デザートの1つをラフィンに取られた。


それを見て白雪が注意をしている所へ、店の入り口に白い騎士が現れた。




その白い騎士は僕を見ると真っすぐに向かってきた。



「レイ=フォックス様でしょうか。」



「はい。そうですけど。」



「話はテイル様からお聞きしたと思いますが、お迎えにあがりました。」



「あっ。そうですか。分かりました。・・・・・それじゃ白雪、ラフィン行こうか。」



僕は二人を促すと、白い騎士は僕たちを見て、



「お連れするのは2人と聞いていたのですが・・・・。」



「すみません。仲間が1人増えまして。一緒にいいですか?」



「そうですか・・・・えっ!貴方様は・・・・。」



白い騎士はラフィンを見て驚いている。





? 何だろうか?





「わっ分かりました。それでは行きましょう。」



動揺している白い騎士の後に僕たちは付いていくと、海辺に大きな鳥が数匹いた。



「これに乗って王城まで行きます。」





へぇ~。鳥に乗っていくんだ!さすがファンタジー。いいね!



僕たちは鳥に乗って空へと飛んでいく。






うぉ~!気持ちいい!





初体験だけど、これ、気持ちいいな!



感動しながら、空を飛ぶこと30分。



その城は、空中にあった。



鳥に乗って上空を旋回していると分かるが、城を中心に周りは城下町が広がっている。さらにその周りは森が囲んでいる。



小さな島がまるごと空中へ浮かんでいるみたいだ。





すごいな!





そのまま鳥は僕たちを乗せたまま城へと入っていった。










☆☆☆









「やぁ!」



城に着くと、カイトが出迎えてくれた。後ろにはテイルさんもいる。





「ここはすごいな。空中に島が浮かんでいるのは初めてだよ。どうやって浮いてるんだ?」



「ハハハハハ。まぁね。天界にある唯一の浮かぶ島なんだ。なぜ浮いているのかは僕にも分からないんだけどね!」



「分かんないのかよ。」



「・・・・・しかし君は、ほんとに毎回驚かされるね。誰を連れてきているか分かっているのかい?」



「ん?何が?」



「ハハハ。まぁ~いいか。後でわかることだし。」



カイトはラフィンを見ながらツッコミをいれる僕に話しかけていた。






城の中に入り案内されたのが、中央に大きな円卓がある広い部屋だった。


そこには数人座っているが、その中の一際豪華な椅子に腰かける男がいた。その男のもつ雰囲気には風格と威厳があった。


おそらくこの人が王だろう。その横にカイト。テイルが座っている。


僕たちはその対面に促され座った。





「よくぞ参られた。冒険者よ。私はこの『エデン』国の王。カイシス=ヘンギスという。」



「私はレイ=フォックスといいます。こちらは仲間の白雪とラフィンです。」



「現界から来たとテイルから報告をうけてな。驚かされたわ。この天界に足を踏み入れた初めての限界人だからな。・・・・・そして、我が息子。カイトをここまで導いてくれてありがとう。」






!! やっぱり。


結構いいとこの出だと思ったが、王子かよ!






僕は黙ってカイトを睨みつけたが、カイトは申し訳なさそうに頭をかいている。





「不肖な子だが、私の息子でな。限界に行ったと聞いて心配したものだ。我々は一度下界へ下りると戻ってくることは厳しいのでな。」




たしかに。



天の塔を攻略しないと行けないなら、1人で戻るにはまず無理だろう。




「この子は人を見る目は優れているのでね。君と一緒に天界へ入っていったと報告を受けた時はもしやと思ったが、ほんとに良かった。息子を導いてくれた褒美をあげようと思うが、先に聞きたい事はあるかな?」




「カイシス王。まずはお会い頂き、ありがとうございます。私達はまだ3日しか滞在してないので、この国の事。この天界の事が全然分かってません。詳しく教えていただけると助かります。そして、もし他にも知らない世界があるのなら教えてください。」




「父さん。僕からもお願いします。レイとは辿り着いたら全て話すと約束をしてたんだ。」


カイトがフォローを入れてくれている。




「ふむ。たしかに分からない事だらけだろう。・・・・・分かった。ポーロよ。説明を。」



「はっ。」



円卓に座っている文官らしき人が話始めた。










☆☆☆









天界。





この天界には3つの種族。3つの国がある。






天竜王が治める天竜の国『テンペスト』



鳳凰が治める国『サクシアリ』



そして天王が治める天界人の国『エデン』






それぞれの王が絶対的な力を持ち治めている。



この3国、特にエデンとテンペストは友好関係にあり、サクシアリも敵対する事もなく、長い歴史で争う事は一度もなかった。



力の均衡も常に保たれてあり、平和な世界である。



そして、この全ての世界には3つの世界が存在していると教えてもらった。






僕たちの住む世界、現界。今いる世界、天界。・・・・・そして、魔界。





お~!魔界があるんだ!さすがファンタジー。


ぜひ行ってみたいね。テンプレの魔王とかいるのだろうか。





そしてなぜ、カイトが現界で旅をしていたのかというと、


半年前、現界へとお供をつれて降りた妹。王女が魔族に攫われてしまい、今は魔界で幽閉されているとの事。


カイトは何とかして妹を助けるために、現界のどこかにあると言われている唯一魔界へと通じる扉を開けるカギを探しに来ていたが、


一向に手掛かりがなく、とりあえず一度天界へ戻って文献等調べてから来ようと思い立ったが、戻れない事に気づいて僕に依頼したのだという。







・・・・・うん。アホだ。







ほかにも必要な情報は色々と教えてもらった。



そして最後にカイトを連れてきてくれたお礼にと褒賞をもらった。



1つは、『天眼のスキル』。これは念じれば全てのレベルが見れるという物。


今までは魔法を唱えれば自分より下のレベルは見れたが、これからは上下関係なく全てが見れるのだ。これはいい。すぐに使わせてもらった。




そして、もう1つ。『偽りの指輪』。


これは、カイトがしていた物だが、自分のレベルを偽れる指輪だ。自分より下のレベルの者は本当のレベルではなく設定したレベルしか見れないという物。




これもいいね。


あまり目立ちたくない僕にとっては助かる。





天界の事を教えてもらい、更には役に立つ褒賞をもらい、カイトを連れて行ったといっても僕もかなりのレベルをアップできた。



王女を助けるのに何か役に立つ事は出来ないかと思っていると・・・・・あれ?・・・・・もしかして・・・・・。




「カイト。カイトが探していた魔界へ行くカギってもしかしてこれ?」


僕は、未踏破ダンジョン『名もなき孤高の城』へ行ったときに、主のケイトさんからもらった『魔のカギ』を取り出しカイトに渡した。






「なっ?」


カイトが驚く。






テイルが受け取るとまじまじと見て


「これは・・・・・。間違いない。魔界の扉を開く魔のカギだ。」





王を含む全員がどよめいている。





「レイ殿このカギをどこで・・・・・いや、冒険者に場所を聞くのも不躾だな。ふむ・・・・・。」


カイシス王が何やら考えこんでいる。そして口をゆっくりと開いた。




「レイ殿。私の依頼を聞き入れてはくれないだろうか。もし、この依頼を達成した暁にはそれに見合った最高の褒賞を授けよう。」



「依頼というのは何ですか?」



「このカギを使って魔界へ行って娘を救出してほしい。」






そうきたか。






う~ん。天界へ来たばかりだし、もっと色々と見ておきたいが・・・・・。





でも魔界かぁ~。行ってみたいなぁ。





悩みながら、チラリと白雪を見ると、ため息をついた後、笑顔で



「レイ。貴方が悩むのはらしくないよ。思った通りにしなよ。私はどこまでも付いていくから。」



「ありがとう。白雪。」



よし。決まった。まずは王女を救出してから、天界をゆっくり探索しよう。





「分かりました。引き受けます。」





「引き受けてくれるか!ありがとう。」






カイシス王のその顔は、娘を心配する一人の父親だった。


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