第22話 未踏破ダンジョン4


気づいたのは、技を出した瞬間だった。


知らぬ間に意識を失っていたのだ。


真っすぐ魔物の首めがけて剣を繰り出していた。




止まれぇぇぇぇぇぇ!!




右腕に思いっきり力を入れる。と同時に右足で地を付き踏ん張る。



ギリギリだった。


魔物の首1cm位手前で剣が止まった。




「・・・・・なぜ止めた?」




魔物が声をかける。



「だって・・・・・。ロイージェさん?これは殺し合いじゃなくて、試練でしょ?」


と答えたのと同時に崩れ落ちた。



今までずっと息をほとんどしてなかったのだ。完全な酸欠状態だった。



「ガハッ!ヒュー・・・ヒュー・・・ハァァ~!ゴホッゴホッ!」



落ち着いて・・・・・。ゆっくりゆっくり息をしていく。


暫くは動くことが出来なかった。




それを見下ろしていた魔物はいつの間にか執事のロイージェに戻っていた。


ロイージェは振り返り、主と呼んでいる女性に声をかけた。


「ケイト様。私はこの青年に敗れました。完敗です。」


それをずっと眺めていたケイトと呼ばれる女性は高い声で答えた。


「ア~ッハッハッハッハ!!!これはすごいわ!とても予想できなかったわ!あなた名前は?」


僕は両手を床について深呼吸しながら返事をした。


「レイ=フォックス。」


「レイね。あなた気に入ったわ!こんなに楽しめたのはほんと久しぶりよ!そして我が執事を殺さないでくれてありがとう。」



ケイトと呼ばれる女性は立ち上がり、嬉しそうにほほ笑む。



「約束は守るわ。あなた達を無事に麓まで返しましょう。それと聞きたい事は何かしら?」


エリアスが答える。


「どんな呪い、病気も直すと言われている薬があると古文書にありました。それを探しています。知っていますか?」


「ふむ・・・・・。ごめんなさい。それはたしかに見たことはあります。ただ、それは昔の事。今はその薬があるのか分かりません。すごく貴重な薬ですからね。ただ、特徴としては、真っ黒な液体が入った瓶だった様な気がします。」



「そうですか・・・・・。ありがとうございます。」



「他には無いですか?・・・・・それでは、ロイージェと勝負して勝ったあなたには何か報酬をあげないとね。」


というと、ある鍵を僕に渡した。



「これは”魔のカギ”です。あなたが冒険者ならきっと役に立つでしょう。」



何に使うか分からないが、とりあえずくれるものは貰っておこう。


今度はロイージェが僕の前に来て、


「レイ様。とても楽しい戦いでした。ありがとうございます。」


「僕は正直きつかったですけど、ありがとうございます。」


笑顔で握手する。


ケイトと呼ばれる女性は右手を掲げると大きな黒い空間を作り上げる。


「さて、それではあなた達を麓まで帰すわ。ここから入ればすぐ麓よ。」


エリアス達が会釈をしてその空間に入っていく。


そして白雪が入り、最後に僕が入ろうとした時に、ケイトが言う。



「レイ。もっと強くなりなさい。そしてまた尋ねにきて。今の貴方はまだまだ未熟。貴方が、私が思う様な強さを手に入れて訪ねて来た時、真実を話しましょう。。。。。期待してるわよ。」



そのまま、僕は振りかえようとしたが空間に吸い込まれた。



☆☆☆



「フフフ。」


「ケイト様。楽しそうですね。」


「そうねぇ。あんな冒険者初めて見たわ。彼が今後どんな成長をするのか楽しみね。」


「わたしも同感です。」


「さて、簡単に侵入を許してしまったこの山を立て直さないとね。レベルが低かったかしら。もっと強い魔物を配置しましょう。」


そう言って、窓から外を見ながら話す。


その女性は徐々に姿が変わり、老婆へと変わる。


「フフフ。この姿で町に居たかいがあったさね。」


そう言って、老婆は奥にある部屋へと入っていった。




☆☆☆




空間の外にでると、そこは鳥居の様な門の前にいた。


眩しい。外は午前中だろうか太陽が昇っている。


入口に帰ってきたのだ。



「お~!戻れた!」



僕はホッと胸をなでおろした。


良かった。


まじで良かった。


「レイ君。ほんとにありがとう。君が助けに来てくれなかったら私達は生きていなかっただろう。」


「いえ。友達が窮地に陥ってたら助けるのは当たり前ですよ。だろ?アイリ。」


「・・・・・バカ。」


アイリが嬉しそうに答える。


何故、白雪が頬を膨らませているのか分からないが、まぁ結果よければ全てヨシだ!



「あと、マイクさん達は・・・・・。」



「あの爆発の時にね。」



「そうですか。」



僕は山に向かって両手を重ね、瞳を閉じた。




麓で簡単な治療と休息をとり、今後の話をする。


「エリアスさん達はこれからどうするんですか?」


エリアスは負傷した腕を見ながら


「腕の治療に本国に戻らないといけないね。」


傷が相当深いのだろう。中程度の傷なら、ハイポーションを使って時間がたてばある程度は治る。しかし、重症だとポーションなどは効果がなく、ちゃんとした所で時間をかけて治療をしないと治らないのだ。


ゲームなのに魔法や薬を使ってすぐ治らないなんて、リアルすぎるだろ。


「あの山の中腹辺りに広い場所があってね。そこで待ち合わせしているんだ。3時間程あるけば着くだろう。」


エリアスは隣の切り立った山を指さした。


「そうですか。ならそこまで一緒に行きますね。送りますよ。」


もう大丈夫だろうが、ケガを負っているエリアスさんとアイリでは何かあったら大変だ。


一緒に行こう。



「そう言ってくれて助かるよ。ありがとう。」




僕たち4人はゆっくりと山を登っている。この切り立った山は道は広いが左は崖である。右側を皆で話しながら歩いている。


「レイは冒険者なの?白雪ちゃんはなんで一緒に?」


アイリが尋ねる。


「うん。この世界を旅してみたいんだ。なら冒険者が一番いいと思ってね。白雪とはは・・・・・最近仲間になったんだ。」


「そう。レイとは一心同体。私が離れる事はない。」


「ハハハ。ありがとう。白雪。」


変な言い方はやめようね。誤解を受けるから。


「最初に会った時から思ってたんだけど、アイリは冒険者が嫌いなの?」


「そうね。私の国では冒険者に対して良い印象はないわね。そう教えられてきたし。」


「そうなんだ。」


それぞれ国によっては冒険者に対する対応も違うのだろう。


「・・・・・まぁ~あなたは別だけどね。」


小声でアイリは呟く。


「ん?なんか言った?」


「なんでもないわよ!さっさと行くわよ!」


何故か頬を赤くしているアイリ。


アイリの後を付いていき、少し登った時だった。


正面を塞ぐようにして人が立っていた。見ると全員フードを被っている。全部で7人。


そのフードを被った格好。見覚えがある。


そう、町に居た時にアイリに絡んでいた連中だ。


その時は4人だったが、3人増えている。



「この先に行きたいんだけど、通してくれないかな。」



僕はアイリの前に出て話す。



「フフフ。的中でしたね。エッジ様。」


中心にいる者がフードを取ると、後に従い全員フードを取った。


「えっ!」


アイリが驚いている。


中心に立っているその男は、ゆっくりと会釈をしながら話す。



「ご無沙汰しております。アイリ様。」



「エッジ・・・・・。」


















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