第14話 帰らずの洞窟1

入ってゆっくりと、注意しながら進んでいる。


この洞窟は結構入り組んでいた。


しかし、まだ一体も魔物と遭遇していない。ただの虫の鳴き声がするだけだ。


すぐ襲いかかってくると思ったので、ちょっと拍子抜けしてしまった。



「中々出会わないね。」


「そうですね。ちょっとおかしいですね。」



うん。たしかにおかしい。もう結構進んでいる。この1階層の半分位は来たんじゃないだろうか。


何か気配はするんだが・・・・・。


このままだと魔物と遭遇せずに2階層へ進めてしまいそうだ。


「あっ!そうだ。」


そういえば、この前中レベルダンジョンでドロップしたすべての種族の言葉が話せる『言語の泉』を発動してなかった。


これはオンオフが出来るスキルだった。


試しに町で一回使った時は、人間だけじゃなく犬や猫、虫までも声が聞こえてしまって、ごちゃごちゃうるさくてオフにしたんだった。


なので必要な時だけオンにしようと思っていたのだ。


ここの魔物の言葉が分かれば戦いやすいだろう。一応オンにしてみた。するとすぐにどこからか声が聞こえてきた。


「クスクスクス・・・・・。」「クスクスクス・・・・・。」


「あの人間、罠だと知らずに進んでる。クスクスクス。」


「?」


なんだ?


「早く2階へ下りないかな。そしたら食べてあげるのに。クスクスクス。」


・・・・・しばらくすると気配が消えた。


誘わているのか?


1階で襲わずに、2階へ下りてから挟み撃ちにするつもりか。


立ち止まり、周囲を見渡す。1階層は真っすぐではなく左右に分かれて迂回する形の道だった。さっき聞こえたのは左から迂回している僕たちの右の壁から聞こえていた。


「たしか。この辺だったような・・・・・。」


手を壁に触れてみる。


すると手が壁の中にすり抜けたのだ。


「へっ?」


魔法か何かで作り出された映像なのだろうか、道がある所を壁の映像で見事に隠していた。


僕と白雪はゆっくりとその道へ進んでいき、突き当りにある大きな部屋をのぞいた。


そこには30匹位はいるだろうか、人間と同じくらいの大きさの蜘蛛がうごめいていた。


正解だったようだ。


僕たちを泳がせて2階へ行ったところで襲うつもりなのだろう。蜘蛛なのに知能あるなぁ。


さて、どうするか。


一気に速さで詰めて一体を攻撃をするのもいいが、相手の強さが分からない。しかも多数だ。せっかく先制を取れるのだからある程度混乱させてから攻撃をしかけたい所である。


そこでジョイルに売ってもらった攻撃用のポーションを使うことにした。


このポーションは投げて当たると広範囲に爆発する。簡単に言うと手榴弾みたいな物だ。まだ開発中という事もあり3本だけしかない物を売ってもらった。



白雪と目で合図をし、2本同時に投げる。


ドンッ!!ドンッ!!


そのポーションは蜘蛛にあたって爆発した。


シュン。


同時に、一気に詰めて一太刀。二太刀。三太刀。


ザザンッ!ザザンッ!ザザンッ!


3匹の頭に2撃づつ切り込んだ。


緑の血が飛び散り、3匹とも絶命した。


ヨシ!行ける!


すぐさま飛びかかってきた蜘蛛2匹をカウンターで攻撃。


ザンッ!ザンッ! 


カウンターだと一撃だ。どんだけの攻撃力だよ。



爆発音のせいで蜘蛛が混乱しているのが分かる。



正解だった。



すぐ近くの蜘蛛を3匹すかさず切り、同時に襲ってくる蜘蛛をカウンターにて切り伏せる。


中レベルダンジョンの経験が生きている。


そして驚いたのは白雪だった。


僕の剣の半分くらいの長さだろうか、白雪の両手にその剣は現れた。二刀だ。この剣も刀身が白くとても綺麗だった。


シュン。


消えるように動いたかと思うと、蜘蛛の頭上へと現れ、上から2本の剣を刺した。


「キィー!」


絶叫を上げた蜘蛛が絶命する。


と、すかさず別の蜘蛛からの攻撃を回転しながら回避して切りかかっていった。


まるで舞の様な動きだった。


綺麗で無駄のない動きをしていた。


何か習っていたのだろうか、素人目でみても動きが洗練されていた。はぁ~僕も時間があったら師匠みつけて教えてもらおう。


白雪の活躍もあって残りの蜘蛛を2人で倒すのに、たいして時間はかからなかった。


無機質なレベルアップの音が響き渡っていた。



全て倒した後に、魔物を調べる。「アイズ。」


アライズ  レベル86



「86~?!」


思わず声がでた。


高レベルダンジョンの平均値は70じゃなかったんかい!しかも、ボスのレベルが、である。1階層でゆうに10以上超えてるよ。


なるほど。戻ってこれないわけだ。


いきなりレベル90近い魔物に2階層へ誘い込まれて前後に襲われたら相当実力がなければ厳しかっただろう。


僕たちは魔光石とドロップ品を回収して、2階層へと進んでいく。やはり1階はこの蜘蛛だけだったようだ。他の魔物に遭遇する事はなかった。



そして2階層。



予想通り、アライズという名の蜘蛛がどんどん襲ってくる。それを正面からバッタバッタと切り倒していく。何匹倒しただろうか、2階層の奥の部屋についた時にはかなりの数を倒していた。


そこにはさらに大きい、3mはあろう蜘蛛が一匹、後ろの階段を塞いでいる。


「まさか1階の隠し住処を探し当てるとは。計画が狂ったわ。」


大蜘蛛が喋った。


「残念だったね。」


「!!貴様!我らの言葉が話せるのか!・・・・・そういう事か。筒抜けだったというわけね。」


「ならば、ここで我がおまえの全てを食い尽くすのみ!」


巨体が飛んで頭上から落ちてくる・・・・・カウンター。



落ちる瞬間に横に避けながら一太刀。


ザンッ!


足を2本切り落とす。すかさず、白雪がまわりこんで後ろから二刀流で攻撃を浴びせる。大蜘蛛は奇声をあげ、口から糸を僕めがけて吐く。


「!!」


剣を当て流しながら近づき更に一太刀。


ザンッ!


「キィー!」 


ヨシ!


あと少しで倒せそうというその時だった。


3階層からの階段からこれまた人間の子供位の大きさはあろうスズメバチの様な蜂が数10匹現れた。


「ちっ!」


剣並みに大きい針を向けて一直線に攻撃してくる。


当たる瞬間に避けながら一刀。


ザンッ! 胴が真っ二つになり、すぐ飛びかかってくる3匹を連続にカウンターで切った。


ザンッ!ザンッ!ザンッ!


倒したと同時に階段の方をみると大蜘蛛と蜂が消えていた。



「ふぅ~。びっくりした。何だったんだ?」


「大蜘蛛を運んでました。どうするかは分かりませんが・・・・。」




「アイズ。」


ビーク レベル85



蜘蛛の次は蜂か。



「蜂は飛んでるから結構厳しいな。」


基本待ち姿勢のカンター狙いしかないか。



「マスター。蜂は私に任せてください。」


と白雪は笑顔で言ってくる。何かあるのだろう。



「オッケー。それじゃ最初は任せるね。」



3階に降りると、お~いるいる。大きい通路の天井の隅に大きな丸い巣が点在している。そこに蜂が回っている。


これは魔物の数が多すぎる。巣を破壊したいが届く距離ではない。


う~ん。考えていると白雪が僕の前に立つ。



白雪が何か唱えると。赤いビー玉位の大きさの玉が無数に彼女の周りに浮かんでいく。そして、



「精火。」



その赤い玉が一斉に蜂や巣めがけて飛んでった。


当たった瞬間に大きな火が蜂や巣を包み、燃える。



「キー!!!」



蜂は燃えながらポトポトと地面に落ちていく。



すごい。



一瞬で数十匹を倒してしまった。こんな魔法も使えるのか。



「蜂は火が弱点なのは知っていたので、私の魔法で倒していきましょう。」


「分かった。無理はしないでね。」



そう言って、白雪の後に付いていくことにした。




白雪の背中がほんと頼もしい。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る