第8話 一人祝勝会
『月光亭』
シェリーさんが教えてくれたおすすめの店である。
入ると、広いフロアにところせましとテーブルがあり、その上に並べられた酒や食べ物を、椅子に座った客が飲めや食いやで盛り上がっている。
「お~盛況だな。」
評判のいい店なのか、ほぼ満席だった。
僕は、カウンターが数席空いてたので、その席に座って注文をした。
「はい。どうぞ~!」
お酒に、食べ物。どんどんと軽快な定員が運んでくる。
まずは、ビールっぽい酒をグイっと一口・・・・・
「ツッ。かぁ~~サイコ~!!!」
そして、何の肉か分からない肉をガブリ。
うまい!
なんだろう、これはやっぱりアメリカの料理に近いのか?他にも魚料理やサラダ等々頼んだが全てがボリュームがある。でもおいしい!お酒もすすむすすむ!
いくら食べてもVRだからカロリーを気にせずにすむし、太らないからいいね!・・・・・あれ?もしかしたら調子に乗ってるとこのアバターは太るのか?
ビールっぽいお酒も飲み終え、次はワインを飲み始めている。
そんな感じで飲み食いしていると、僕の近くのテーブルで何か絡んでいる声が聞こえてきた。
「おいおい~。ヒック。そこの赤毛のお嬢ちゃん。随分と高そうな服を着てるなぁ~。他のあんちゃん達も強そうだ~。何者だぁ~?ヒック。」
酔っ払いの大柄な冒険者が絡んでいた。
絡まれている人達はおそらくパーティだろう。全部で6人。男が5人で女の子が1人。
男が言っている様に、女の子の服は一見地味だがいい素材を使っているのだろう。とてもデザインが良い。貴族の子だろうか。
他の男達5人は護衛だろうか、屈強そうな体をしている。その中で、一番細身で、一番オーラがある金髪の美青年が声をかける。
「すまないが今、食事中だ。ほおっておいてもらえないだろうか。」
「ああん?」
「エリアス。こんな輩は倒しちゃえばいいのよ。冒険者は野蛮でほんと大っ嫌い。」
と赤毛の女の子が声をかけた。
「あ~ん?何か言ったかお嬢ちゃん!」
うん。やばいな。
おそらく喧嘩がはじまれば間違いなくエリアスという人が勝つだろう。雰囲気でわかる。しかし、目立ちたくなさそうだ。
あの絡んでいる冒険者のおっちゃんは知っている。まだ何も知らない僕に冒険者協会の食堂で声をかけてくれて、いろいろと情報を教えてくれたおっちゃんだ。
たしか名前は、ガクさん。
パーティの人たちは・・・・・あぁいたいた。少し離れたテーブルで呆れたように見守っている。
酒は飲んでも飲まれるな。これはリアルの僕の格言の一つである。
しょうがない。
あの人達というよりは、世話になったガクさんを助ける為に、僕は動くことにした。
「ガクさん!今晩は!こんな所で奇遇ですね!」
「あぁ?今は立て込んでいる・・・・・って!おまえは!生きてたのか!」
ガクさんがこっちを振り返り、驚いて見ている。
「おまえ・・・・・。レベル1で中レベルダンジョンに行ったんだろう。せっかく色々と教えてやったのに行きやがって。絶対に帰ってこないと思ってたぞ!」
それを聞いていた、絡まれていたパーティや他の客が一斉に僕を驚いた顔で見ていた。
恥ずかしいな。
「ままま。ガクさんが情報を教えてくれたのが役に立ったんですよ。とりあえず酒おごりますから、元のテーブルへ戻りましょう。」
ニコニコしながら僕は話す。
「ったく。しょ~がね~な。まぁ最初の冒険で得た報酬でおごるたぁいい心がけだ!付き合ってやる!戻るぞ!おまえら命拾いしたな!」
機嫌がもどったのか、嬉しそうに口笛を吹きながら席に戻っていく。
僕は、絡まれたパーティに会釈すると、赤毛の女の子と目が合った。
すると僕を見るなり、「フンッ!」と横を向く・・・・・はぁぁ?なんだこの女。ちょっとイラっとしたが、文句を言ってもカッコ悪いのでガクさんに付いていった。
いや~飲んだ。食べた。
ガクさんや他のパーティの人たちも奢りだから飲む飲む。最後はフラフラになりながら帰ってったなぁ。でも、奢るときは遠慮なく飲み食いしてもらいたいものである。その点、ガクさん達は気にせずに飲んでたので気持ちよかった。そこで感じたのが、NPCの冒険者もほとんど僕と変わらない姿だった。見た目じゃ他のプレイヤーと見分けがつかないという事になる。
見分ける方法があれば便利だなぁ。
後で何かしら探ってみよう。
さて、食事に満足したので帰りますかね。
僕も酔ったのか、少しフラつきながら宿へ戻った。
☆☆☆
シャワーを浴びて服屋で買ったパジャマっぽい服をきて、ベッドの上に腰かけた。
まずは現状のステータスを確認する。
レイ=フォックス ヒューマン 年齢18歳 男 レベル59
基本能力値:攻撃力118 防御力118 体力177 魔力118
ふむ、体力はスキルの割り振りで+1にしたから、59あがったか。
スキル:愛情304 コミュニケーション180 速さ59 精神力7 料理5 魅力5 閃き3 ・・・・・等々、最初割り振ったスキル以外はほぼ1だったのだが少しづつ全体的に上がっている。
そこで僕は気づいてしまったのだ。モテたいが為に愛情を極振りしていたが、数あるスキルの中に似たようなスキルがあった事を。
魅力。
なにぃぃぃぃぃ!こんなものがぁぁぁぁぁ!
しまった。どう考えてもモテるならこっちだろ。
・・・・・はぁ。まぁ~別にいいか。振ってしまったものはしょうがない。
次に、ドロップアイテムだ。
一回目に戦ったボス。炎鬼からドロップしたアイテム。
『炎糸』 と 『身代わりの指輪』。
炎糸は明日、店に行って聞いてみよう。身代わりの指輪は、指につけておくことにした。これで窮地の時には助けてくれるだろう。
次いでもう一つのダンジョンで戦ったボス。このボスは目がなく口が5つある不気味な魔物だった。戦い終わった後、アイズで唱えた時に表示されたのが
モイト レベル63 だった。
このモイト、おそらくは魔法系を得意とした魔物だったのだろうが、まだうまく魔法を対処する戦い方が出来てないので相手が様子をみている最中に先手必勝で速さを使って瞬時に切り込んで倒してしまった。
レベルもその時は55以上いっていたので、攻撃力にものをいわせて反撃の時間を与えず速攻で倒した。なのでどういう能力だったのかは分からずじまいだったのだ。そこでモイトからドロップしたアイテム。
『言語の泉』という小瓶に入ったアイテムだった。
掲げてみると、
【言語の泉】飲むと全ての種族の言葉が理解、会話ができる。
へぇ~。これはいいな。
鬼との戦いの時は、ガァーしか言ってなかったもんな。言葉が通じ合えるのはいいものである。この薬を一口で飲んだ。体が一瞬光って消える。
後は、最初に手に入れた綺麗な虹色の液体が入っている瓶。
『神の雫』だ。
ランダム要素のあるアイテムだったので、どんな効果かわかるまで取っておこうと思っていたけど、いつ分かるかも知れないので使うことにした。どんな効果がでてくるのか楽しみである。
これも一口でグビッと飲む。体がしばらく虹色に輝く。しばらくすると消えたので、空いた瓶を掲げてみた。
【神の雫】数ある神の恩恵の中から選ばれた効果 <自身の基本能力値以外の一番高いスキルを×10倍とする。これはずっと継続する。>
・・・・・えっ?いやいやいやいや・・・・・ちょっとまって。ちょっとまって。一番高いスキルって・・・・・
急いでステータスを確認する。
愛情:304⇒3,040
・・・・・やってしまった~~~!!!
愛情3,000超えってなに?これはないわぁ~!
もし魅力だったらモテモテだったろう。もし速さだったら消えるどころではなくて瞬間移動くらいできただろう。料理だったら行列の店で商売繁盛だったろうに。もし運なら死んだりしなくなるかも。
・・・・・しょうがない。もうこのまま絶対に他のプレイヤーに越えられない所までいってほしいわ。っていってるか。
愛情たっぷりなスキルになったので、今まで割り振りは、
愛情+5 コミュニケーション+3 速さ+1 体力+1 だったのを、
攻撃力+1 防御力+1 体力+1 愛情+1 コミュニケーション+2 速さ+2 精神力+1 魅力+1 に変更した。
精神力は、戦ってておそらく高い方がいいんだろうと思ったからだ。魅力は言わずもがな。ただ、せっかく愛情をここまで高くしたので+1だけは維持する事にし、このまま一番高くしてやろうと思った。ノリは大切である。
気を取り直して、最後に愛剣のステータスを見たが、能力に変化があった。
白雪 WHITE SNOW
攻撃力+418 速さ+159 スキル <カウンター><カウンター調整>
世界に7本しかない伝説の武器の1本。この剣は主と共に成長する。
まず、攻撃力+と速さ+が増えているのだ。その増え方は僕のレベルが増加した値と同じだった。表示にある主と共に成長する。とはこの事だったのか。又、スキルでカウンター調整なるものが増えたのだ。
これは柄を握って待ち姿勢だと、どんな攻撃も自動的にカウンターを発動していたが、僕の意思でカウンターを出さずにすむスキルみたいだ。これでフェイントだとか色々と攻撃に幅ができる。
2日半におよぶ、ぶっ続けの戦闘だったが成果があって良かった。とりあえず数日は町で情報収集と次の冒険の補充や防具の強化をしようと思っている。特に防具は必要だ。今着ているのはただのカッコ良さそうな服で、防御力+1である。これはやっぱり厳しかった。
まぁ~ゆっくり散策しましょ。
今までの整理をすると、僕はゆっくりベッドに横になり、ログアウト&眠りについた。
☆☆☆
その約3時間後、眠っている僕のベッドの壁際に立てかけてある剣がゆっくりと白く輝きはじめ、最後に一瞬大きく輝くと、また元の暗闇に戻っていった・・・・・
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