☆大賞☆ 毒を食らわば来世まで 

毒を食らわば来世まで

著・小粋な馬鹿 

https://kakuyomu.jp/works/1177354054921497172 



 自堕落な物書きの喇叭八録と古山茶の妖怪・乙女、人間と妖怪の愛の物語。


 女を愛して生涯を終えようと決意した自堕落な物書きの喇叭八録は愛を求める古山茶の妖怪・乙女と結婚するも、頭だけしかない彼女相手では満たされず、女遊びをくり返す。愛人が奇妙な死に方をしてから花が女の顔に見えるようになり、怪異に詳しい幼馴染から古山茶の霊の話を聞く。そんな幼馴染も変死を遂げてようやく乙女の仕業だと悟り、ハサミを突き刺す。だが、彼を愛してくれるのは乙女しかいなかった。薬指からこぼれる花弁から「来世で結ばれてくれるのでしょう」と声を聞いた八録は安堵し永眠する怪異譚。

 

 冒頭の「ふる山茶の精怪しき形と化して、人をたぶらかす事ありとぞ。すべて古木を妖をなす事多し……」とは、一七七九年(安永八年)に刊行された鳥山石燕の妖怪画集『今昔画図続百鬼』にある「古山茶の霊」に書かれた一節。

 書かれてある訳は「老いたツバキの木に精霊が宿り、怪木と化して人をたぶらかすとある。古木であれば妖をなす可能性はあるようなのですが……」である。

 そんな古山茶の霊の独白から始まるこの作品。

 作者は、これからこういう話をしますよと説明してくれている。なんと親切なのだろう。

 鶴瓶井戸で水を汲み上げたり喫茶店や女給がでてくるなどから、時代背景は明治後半から昭和初期頃と推測される。

 文体は怪異ものらしく出来上がっていて、うまい。「乙女には頭から上までしかない」とあるけれど、首から上だと思った。

 文頭の一文字下げや疑問符と感嘆符のあとの一文字あけ云々は脇においておく。

 音声ソフトで聞いて内容を把握したけれど、読むとなると漢字表記の割合が多い気もする。行変えも少なく、文章の塊が続く。怪異ものの文体としては悪くないとは思うけれど、実際のところはどうだろう。読むとなると、いささか大変かもしれない。

「お前は……! 消えろ……消えてくれ……!」

 三点リーダー後の感嘆符はどういう表現なのだろう。

「お前は!」と語気を強めて言い切るのではなく、「お前は……」と声も弱々しく呆れながらも言い切る感じなのかわからない。

 話し方の描写はないので、もっとセリフの表現に拘れる気がした。

 乙女にはさみを刺して「鮮血が雪に広がっていた」とあるけれど、裏庭に出たとき、あるいは玄関を開ける前から雪の描写がないのでもやっとした。

 細部の描写にこだわるともっと良くなる気がした。

 怪異やホラーものは好きではなく、得意でもないけれど、このような作品ジャンルも書いてみたいなと思った。 

 

 

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