★読売新聞社賞★ ひすい

ひすい

著・月ノ瀬

https://kakuyomu.jp/works/1177354054918580669

 

 半透明緑色の瞳に惹かれた男性と半透明緑色の瞳を引け目に思う女性、それぞれの視点の恋物語。


 前半は男性の、彼女との出会いから付き合ってプロポーズするも、その後は連絡が取れず一年が経過、かつて訪れた湖に足を運び、再会するまでの独白が書かれている。

 後半は女性の、瞳の色で嫌な思いをして声が出なくなった彼女が彼と出会って付き合い、プロポーズされるも幸せになることにためらい逃げてしまい、一年後にまだ間に合うのならば返事をしようと、リハビリに励んで再会するまでの独白で綴られている。

 三点リーダーや漢数字の使い方等は、脇に置く。

 人の目の色は二十四種類あるといわれ、それ以外は珍しい目の色とされている。紫やミックスカラー、そして緑色。ハリーポッターを読んだことがある人なら御存知のとおり、主人公のハリーポッターはアーモンドのような形の鮮やかな緑色の目をしている。強調されるのは、緑色の目がとても珍しいからだ。

 この作品で彼女の瞳が強調されているのは、とても珍しいからだろう。西の国の血が混ざっているという設定だ。

 日本人のほとんどは濃い茶色の目を持っているが、中には明るい茶色や青、緑やグレーの瞳を持つ人もいる。珍しいながら、とくに九州や東北地方に明るい色彩の人が多い。青と茶色の目が合わさって緑色っぽくみえることもあるそうだ。

 偏見や差別は、見た目よりも見る側に問題がある。主人公の青年のように素敵だと惹かれる見方もあれば、外国風できれいだから誘拐しようとする輩もいる。

 この事件のショックで彼女は声を失う。そんな彼女とどうやって付き合っていたのだろう。中学から目立つタイプではなく、自分から女の子に話しかけることはほぼなかった主人公なのに。手話や筆談でやりとりしたのだろうか。目で意思疎通していたとあるけれど、限度がある。

 アイコンタクトのみで意思疎通を測るには、常に相手を見ていなくてはならない。一長一短で身につく技術ではないので、彼女と出会う前から男性は、周囲の人々を観察していたのだろう。この辺りが引っかかった。

 男性が一年前のことを未練たらしく思っているのは、わからなくもない。女性はどうなんだろう。年上女性が年下男性のために身を引くならわかる。お話の女性は同い年かさほど離れていない。嫌な思いをさせるかもしれない、引け目に感じて身を引いたあと、一年後にまた会いたいとなるのだろうか。この辺りであれこれ考えてしまった。

 とはいえ、メデタシメデタシで終わる物語は読後がいい。

 読み終えて「よかった」と思えるようなお話を書きたい。

 

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