【奨励賞】 田中カメレオン
田中カメレオン
著・秋冬遥夏
https://kakuyomu.jp/works/1177354054896745928
キメラ人間が混在する世界で小学校に通っている、擬態化できる田中カメレオンの物語。
人とかけ合わせた動物が名前になっているのが面白い。おかげで個々の動物の特性、性格がわかりやすい。作者がキャラ設定に時間をかけているのがよくわかる。
アンパンマンやしまじろうなどの作品みたく、キメラ人間の説明をなくしても成立しそうな感じがした。説明を省くと、動物の擬人化作品となり、ありふれてしまう。だから、この設定は必要なのだろう。
ただ、カメレオンが擬態化というのに首を傾げる。主人公は憧れているもの、他の動物になれるという。ここが作品の面白いところと思うのだけれども、実際のカメレオンはカモフラージュのために色を変えているわけではない。ムードを伝えたり体温調整したりするとき、カメレオンは色を変化させている。
そんなことを言ったら、実在しないドラゴンはどうなるのだとなってくる。
木や砂利に同化するフクロウや木の葉にまぎれるヒキガエルやヤモリではいけなかったのかと考えるも、やはりカメレオンの響きにはかなわない。
憧れている相手の真似をしてしまうカメレオンに、真似をされているドラゴンが「自分が嫌い」と打ち明けることで、主人公に変化がみられる。
この作品でいいたいところは、「いろんな悩みを持っていて、いろんなモノに感化されて人は成長していく」ところだろう。
主人公の体験からの気づき、それを社会の普遍性に結びつけている。この一文があることで、読者は自分のことのように考えることができる。
僅かな成長と希望、そしてその後のオチ。
このような読後のいい作品を書きたいと思う。
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