第14話 冒険者ジルク-10

全身から汗が吹き出し膝が折れる。身体の自由が効かない。何が起きたのか理解できない。

ぐぐぐと首を後ろに向けると這いずってきたような首のないオーガの姿。既に大剣に力が入ってないことからこと切れているのは分かった。


「が……」


大剣を抜いて、回復魔術を使えば生きれる。だが身体強化を切った状態では大剣を抜くのは不可能だ。

生命力を使って身体強化を……!?


そこで気づく。生命力が使えないことに。

生命力を扱うには腹に一度溜めて全身に回すのが基本だ。熟達した者ならそんな必要はないが、ジルクはまだ使いたてに近い。腹には大剣が刺さっており、阻害されているようなものだ。

当然、生命力による強化は使えない。


「…く…そ」


即座に魔術による身体強化を行使する判断を下し、実行に移す。強化された身体は簡単に大剣を抜き、オーガの死体から少し離れるほど歩くことすら可能にした。


「回復…魔術…ヒー…ル」


強化された状態で回復魔術を使ったことはない。だが今使わないと出血で死ぬだけだろう。リスクが高いとはいえ死だけは回避しなければならない。

回復魔術は効果を発し、死に瀕する俺の身体を癒していく。その回復速度は自分でも信じられない程であり、嫌な予想が当たったことを示していた。

だが身体の損傷が想像以上だったのか、あたしの意識は薄れていった。

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