第7話 変化-1
「冗談だろ……」
ミノタウロスは強化魔術がかけられた俺が突進した結果、身体の中心が吹き飛ばされるようなことになったようだった。
「強すぎる。こんな力を奴が……」
強化魔術は強度も高めるため考えられない結果ではない。だが余りにも桁違い過ぎる強化だ。こんな強化がメリットだとすれば、デメリットもとんでもないものだろう。
「感性を近づけるとか言ってたな」
身体の様子を確かめるも、強化魔術がかかっているせいか違和感などまるでない。仕方ないので少し時間をおいて魔術が自然に解けるのを待つことにした。
10分ほど経過し、溢れていた魔力が落ち着いてきた。これでようやく奴の言っていたデメリットが分かるだろう。
「……なんともないな」
身体の様子を再度確認するも特に変わった様子はない。しいて言うなら5cmほど髪が長くなったことくらいだろうか?。
だが強化魔術がかかっていたらあり得る話だ。再生能力や成長能力も強化していたのだろう。
しかし気になる変化ではあった。念のためと自分に言い聞かせて確認することにする。
短剣を髪に当て、スパッと切った。
「……?。あれ?」
髪は自然に落下して地面に落ちる、はずだった。しかし地面を見てもどこにも髪はない。
恐る恐る手を髪にあてると、そこにはさっきと変わらない長さの髪があった。思い込みからかまた髪が長くなったようにすら思えた。
「まさか」
もう一度短剣を使って髪を切る。だが結果は変わらない。長くなった髪はそのままに、地面に落ちるものはない。
思い込みだろうが、黒い髪がサラつくような感触すら感じた。
「再生する能力、それも恐ろしく強化されてる。これが感性を近づけるってやつの一端だな」
身体を弄り回すというのも間違っていない。少しずつ変えていくつもりなのだろう。それならば最初は気づいてもそこまで気にしないところを弄るというのはある意味正しい。
そして気にしない変わり方どころか有用な変わり方……例えば筋力が強くなるとかならもう一度やってみるかと思ってしまうだろう。
「これが罠か。魔術を縛り、魔術を使えば変わっていく。さらに変わっても問題ないと錯覚させる。厄介極まりない」
ヤギの罠に気づいたその時、ガラガラと広間の一部が崩れ、上り階段が現れた。まるで上がっていけと言わんばかりだ。
「上等だ。こんな罠食い破ってやる」
そう気合を入れなおし、俺は階段へと近づいていった。
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