第2話 性癖暴露大会! しかし需要は満たせない
「だから、名前なんて大したことないですよ」
「そ、そうかよ……」
「ですが……御嶽殿がこのサークルに入るというのは」
藤十郎が手に持っていたフィギュアを机の上に置きながら、困ったような顔をしながら、御嶽さんを見ていた。
「藤十郎は反対?」
「音無殿……反対と言いますかな、お互いに難しいのでは?」
「そうかなぁ?」
「明らかに住む世界が違うといいますかな……御嶽殿はアニメを見たりするので?」
「いや、しねぇ」
「だ、そうですが?」
「藤十郎はあんまり御嶽さんに入ってほしくない?」
「そ、そうは言っておりませんぞ! そもそも、音無殿は声で決めたのでしょうが、拙者たちは……」
確かに。
この中で、声に惹かれるのは僕くらいだ。他の3人は、それぞれ性癖が違っている。
でも、そういう意味でも御嶽さんは逸材な可能性がある。
「御嶽さん」
「あ?」
「藤十郎ってフィギュア舐めるんですよ。一日2時間くらい」
「ちょ、それは盛り過ぎですぞ!」
「うっわぁ……」
狙い通りに御嶽さんが藤十郎の方を、ゴミを見るような目で見た。
「そ、その目は……現実でお目にかかれるとは思いませんでしたぞ……まるで二次元から出てきたようではありませんか! 御嶽殿…いえ、我らが姫! 我らはこれより忠実な僕となりましょう!」
「やりましたね、御嶽さん! 藤十郎も歓迎してくれましたよ!」
「いや、何があった!? いきなりへりくだっててキモいんだけど!」
「あぁ、藤十郎はドMなんですよ」
「さらっと言ったな! 知りたくもねえよ!」
ほら、もう藤十郎の御嶽さんを見る目もすっかり変わって……完全に女王様を見る目に。
そこまでは求めてなかったんだけど。
「バウム殿! 小杉殿! 拙者はマリモ姫の所属を賛成いたしますぞ!」
「へ、変な呼び方すんなよ、おい!」
「ふっ……」
銀色の髪をかき上げながら、バウムが声をあげた。
「我は
「御嶽さんの金髪って染めてるんですか?」
「あ゛? 地毛だけど?」
「尊い……」
倒れたバウムの顔は、好みの金髪ヒロインを見つけた時のように幸せそうだった。
「おい、あいつ倒れたぞ?」
「認めてくれましたね!」
「鼻血も出てんだが…」
「バウムは金髪が好きなので……」
「金髪? んなもん、いくらでもいんだろ」
その髪を一房つまんで、顔の前で確認している。
今日初めて会ったのでわからなかったけれど、つむじの近くが他の色だったりしなかったので、もしかしてとは思っていた。
顔もちょっと外国の血が入ってそうな感じだし。
「ハーフですか?」
「ん? いや、クオーターだけど」
「ブハッ!」
「お、おい! あいつ、両方の鼻の穴から血が!」
「バウムは外国人が好きなんですよ」
「はぁ?」
「ハーフやクオーターだったりは、中二病と相まってもっと好きらしいです」
「きっもいなぁ……ってか、さっきから気になってたんだけどよ」
「はい」
「なんであいつのことバウムって呼んでんだ?」
「なんでと言われましても……」
本名は呼ぶと拗ねるし、かといってクリンなんちゃらとか長いし。
「バウムって聞いたことありませんか?」
「ばうむ? ……? もしかして、バウムクーヘンか?」
「そうです。ぎりぎり聞いたことのあるバウムだけ覚えればいいって話になりまして」
「へー……よく考えればそこまで興味なかったわ」
「ですか」
「次は俺っちッスねー」
小杉はにこにこと笑っているが、一番の問題はここだ。
これはかなりの賭けになる。
「俺っちは簡単には認めないッスよ〜」
「いや、そもそも認めて欲しいとか思ってねぇよ?」
「3人の需要は満たしても、俺っちの理想には程遠いッス」
「でも、御嶽さん、貧乳だぞ?」
「はぁ!?」
どうだろう……?
小杉は一度目を閉じ、少し考えているようだ。
そして、大きく目を見開いた!
「YES! ロリータ!」
「やりましたね! 小杉も認めてくれましたよ!」
「いや、コイツいま何て言った!?」
御嶽さんが掴みかかってきた。
「大丈夫です。NOタッチの精神も持ち合わせているはずなので、実害はないです」
「いや、あるだろ! 今、精神的に実害受けてんぞ!?」
「小杉は大丈夫です」
「何が大丈夫なんだ……」
御嶽さんが頭をおさえながら、上を見上げていた。
「てなわけで、これから5人で頑張っていきましょうね!」
「いや、こんなサークル入りたくねぇよ!?」
「そ、そんな……みんな歓迎してますよ?」
「いや、うちは……」
なんだか迷っているようだけど、そこまで嫌がっている風でもない。
押せば何とかなりそう。
「じゃあ、まずは体験入会でどうですか?」
「体験、入会?」
「来週一週間、お試しで入ってみて、その後別に入ってもいいかなと思ったら改めて入ってください! おねがいします!」
「……わ、わかった。お試しでな」
「ほ、本当ですか!」
「だから、お前はちょくちょく近いんだよ!」
「喜びは行動で示しましょう! 今ならみんなで胴上げもプレゼントです!」
「マジでいらない」
「はい」
来週からも来てくれそうで一安心。
「てか、お前は?」
「はい?」
「いや、こいつらばっかり色々晒されてかわいそうっていうか……」
「そんなこといったら御嶽さんも……」
「まりもでいい」
「……ちょっと嫌がっていませんでしたか?」
「よく見てんな……でも、うん。いい。お前たちは馬鹿にしたりもしなかったし」
「それは、そうですね。オタクってのは結構馬鹿にされた経験があったりしますから、気持ちはわかるんですよ」
「……そうかよ」
「それで何でしょう?」
「あ?」
「まりもさんの性癖は?」
「さっきから思ってたけど、お前結構セクハラだからな!?」
「ちなみに僕はハスキーボイス。あ、女の人のですよ? 大人の女性のかすれた声が好きなんです!」
「お前も大概だよな……」
あれ、ちょっとマリモさんの僕を見る目が……
「これから、末永くよろしくお願いしますね?」
「なんだそれ」
それでも、マリモさんは呆れたように笑いながら、こちらの手を握ってくる。
「ま、これも体験か」
「初体験ですな」
「きっもいなぁ……」
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