ラストの部活

おっさん

ラストの部活

「ねえ、スズ」


横から顔を出してハナが話しかけてくる。


「何?」


「終わったね…音楽部」


そう私たちの部活はこれで終わりだ。この学校では部員が6人以上でないと存続できない。幸い、部員が全員卒業するまでは大丈夫なんだけど。

もともと2年生は二人しかいなかったんだ。わかってた。いつかこうなるのは。

それで掃除していたのだ。

…でも一つだけ。

私達に自ら掃除させるって随分な仕打ちだと思うんだけど!!!


「ねぇ二人とも、そっちのが終わったんだったらこっち手伝ってよ。」


震えた声で呼ばれた。

見るとコナツが足元に大量の譜面を散らかして泣きそうになっていた。


「わかったわかった」


動きたくはないが、そうも言ってられない。

今にも泣き出しそうだし…



しばらくかかってやっと先輩方の譜面が半分になる。

にしても古い順でやっていってるから知らないやつばっかりだな…


「スズ…これ…」


これは…確か悪ふざけで文化祭のときに即興やったら顧問の金剛に怒られたときのだ。


「できないならやるな!」


金剛先生のマネか、野太い声でコナツが言う。


「似ってる〜!」


鈴がケラケラと笑った。


「ちょっと間違っただけなのにね」


「「ね〜」」


二人がここぞとばかりに声を合わせる。


「そういえば合宿もしたよね!」


ハッと思い出したように声をはずませハナが言う。

たしかにやった、そのときはたしか


「夜中まで起きてて先輩二人に怒られた………」


「そうそう、でも最後には全員で恋バナしたんだっけ」


笑いながらコナツが言う。


「みんなでプロになる!!……っていう約束もしたよね」


「先輩たちは無理無理って半分呆れてたけどね」


私の言葉に若干遅れてコナツがかえした


そういえばハナが黙ってるような………って、泣いてる?!


「どうしたの?!」


「先輩の手紙見つけた…」


らしくなく塩らしい様子でハナが言う。

私はひったくるようにしてそれを掴み取った。


『もっとみんなとやりたかった。先輩たちともスズたちとも。戻ってきたら誰かの楽器が鳴っていて誰かが歌ってる。そんな日をもっと重ねたかった。スズ達にも重ねさせてあげたかった。』


たったこれだけの文章。たけども心がキュッと閉まる。

私達も…もっと…

3人だけはやっぱり寂しいよ…


「楽しかったね…」


うん


「もっとやりたかったね」


…うん


「…ごめんちょっと無理…」


涙がとめどなく出てくる。

先輩たちが卒業したときにもう泣かないって決めたのにな…

なんで、泣いちゃんだろ。


「卒業…したくないね…」

もう言えているかもわからないくらい鼻声になってしまった。


桜はもう散ってしまった。

早く片付けないとまた先生に怒られる。


涙がこぼれないようにそっと残りの大切な大切な私達の譜面を片付けた。

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ラストの部活 おっさん @ossannnotabi

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