第7話 友人、そして予言的中
「ありゃ、正体がばれたって?」
「それで、出ていけって町民から詰めかけられてな。なんとか追い返したところだ」
勇者と店主がぼそぼそと話している。
居酒屋のカウンターに座りながら項垂れていると、ぽんと肩を叩かれた。頭を上げると、勇者がにこやかに笑っていた。
「短い間だったけど、楽しかったぜ。お前なら、どこでだってやっていけるから自信を持てよ!」
「なぜ、別れの挨拶を? そちらがその気なら、俺だって最初の命令通りにお前を抹殺するぞ?」
「おいおい、上等じゃねぇか。とうとう本性を現しやがったな。やっぱり最初の善も悪もないってのは嘘だったんだろ!」
「お前が先に喧嘩を売ってきたんだ、落ち込んでる友人を慰めても罰は当たらないぞ!?」
「友人だああ?」
頓狂な声をあげて、勇者がのけ反った。
「対等な関係で悩み事などを相談できる相手のことだろう」
「俺とお前は対等なのか?」
「なに、対等ではないのか。困っていたら助けてくれたし、仕事が上手くいかないときだって励ましてくれたじゃないか。何が悪かったのかも指摘してくれただろう」
「機械人形と対等……? ううーん、釈然としないな」
「いいじゃないか、確かにお前たちは友人だよ。その友人がこんなに困ってるんだ、お前の力でなんとかならないか?」
店主が勇者を説得してくれている。誰かが自分の味方をしてくれるのはとても嬉しいものだ。
「俺の力で何ができるっていうんだ。俺はこいつをぶっぱなして魔物を消せるだけだぞ?」
勇者が背中に背負った剣を示す。
「お前のそれ、凄い威力だからな」
「魔物を研究した博士が作ったんだよ。この町には二本しかない、聖剣だ。威力がありすぎて、扱える者も少ないけどな」
「魔力を反転させて固有振動を狂わすっていう荒業の何が聖剣だ。技術の最先端か技術革命とでも言っておけ。全くもって聖なる力なんかないぞ」
「なんだ人形には、これが何かわかるのか」
「初めて見た時に解析したからな。見る者が見れば対策もたてられるんじゃないか?」
「ほらみろ、こいつ、一応は人類の敵なんだよ。聖剣の原理を初見で対策たてるなよ。考え方が魔物寄りで、驚くんだからな」
「え、魔物なのか?」
「お前が俺を魔物じゃないって言ったんだろ!」
店主の顔が瞬時にひきつったので、慌てて弁解するが勇者はそうだったかなぁと首を傾げている。
頼りにならない友人である。
「た、大変だ、勇者っ!」
居酒屋に駆け込んできたのは、3ヶ月と4日ぶりに会う町の入り口に立っていた見張りの男だった。
「どうした、そんなに慌てて!」
「魔王軍が攻めてきやがったんだ。しかも、聖剣の攻撃が効かねぇんだよっ」
機械人形は思った。
それ、自分がさっき勇者に忠告したんだ、と。
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