第17話 来るもの拒まず去るもの追わず 拒むもの来ず去らぬもの追わず
どこの班にも入れてもらえずに、色々考えて、班に入れてもらえる想像をしていたからか、とうとう幻聴が聞こえてきたのか。
「聞いてる......?」
幻聴がさらに訴えかけてきた。
幻聴を振り払うために現実を見ようとして、俺は顔を上げる。
そこには可愛らしい女の子がこちらを覗きこみながら見ていた。
「大丈夫?顔色悪いよ?」
とても優しく話しかけてくれているのは、同じクラスの
去年も同じクラスであり、遠足では同じ班でもあった。
そしてーー何を隠そういかにも、彼女こそが当日、俺から仕事を奪い、何も仕事をさせてもらえなかった張本人である。
「あっ、いや、大丈夫です」
嫌なやつに絡まれたと思い、平然を装いながら受け流す。
「そう、ならよかった。」
と笑顔でこっちを向いている。
何故、宇治島が俺に話しかけてきたんだ。
どういうつもりなのだろうと考えていた。
彼女とは去年も同じクラスであったが、遠足以外では一度も話したことはない。声こそはクラス内で聞いたことはあったが、聞き覚えのある程度の声だ。声だけ聞いて宇治島だとは気付けない。
そんな顔見知り以下の関係なはずだったが、何故か急に話しかけられた。
そんな意図を考えているうちにーー
「高山くんはもう班は決まった?」
何を言ってるのだ、こいつは。
そう思いながら、見たら分かるだろという気持ちは置いておいて、
「いや、まだ」
と、敬語を忘れるくらいに少し不機嫌な態度で返す。
正直、馬鹿にしてるのかと思って少し腹が立った。
班決めの最中に、誰とも話さずに一人で席に座ったままで動かずに居る人間に、『もう班は決まった?』だなんて、馬鹿にしてるのもいいとこだ。
やはり、宇治島は俺のことを徹底的に嫌っているのだろう。身に染みてわかった。
「そっか。じゃあ、私と一緒の班にならない?」
ほんとにいい迷惑だ。人の気持ちなんか全然考えずに平気で人を傷つける。
何が『もう班は決まった?』だ。
何が『私と一緒の班にならない?』だ。
だいたい俺は一人でも良いくらいだ。班なんて無理に入らなくてもーー
って、今何て言った??
宇治島への負の先入観が邪魔して、正確に聞き取ることが出来なかったーー
「へっ?」
と、だけ言って後は相手の返答に任せた。
「もし、良かったら私と一緒の班になってよ!」
と、今度は
どういうつもりかーー
こればかりは全く考えが及ばなかったが、どうせ俺は余りものだし、余った班に行くことになるのだから、誘われた分だけまだマシだ。
行く宛もないのだから、もちろん俺の答えはこうである。
「うん、わかった。いいよ」
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