第26話 紹介。

 25歳を過ぎた頃。

 上司から女性を紹介してもらえることになった。

 もちろん断る理由なんかない。

 食い気味にOKする。


 ―――マングリ返して、くぱぁ!っちして、クリクリっちしてズポヌルッっちして…セ●クスができる!ついに童貞が捨てられる!!―――


 考えると喜びが隠せず自然と気持ち悪い笑顔になった。


 妄想が捗りだすと早くもチ●ポは半勃ちになり、カウパーが滲みだす。

 こうなってくると、もう誰にも止めることはできない!

 チン先がパンツに接触する部分はあっという間にヌルヌル。汁は外気にて冷却され、股間に不快な冷たさをもたらす。それからしばらくすると、少し頭を出したカメがやっぱり毛を巻き込む。おかげでカメの出入り口付近の皮は切れるように痛いし、●マキンの皮も引っ張られて激痛が走る。

 便所に行き●ンポの皮を剥くと、トイレットペーパーで汁を丁寧に拭き取る。そしてそのままうんこするふりをして一発抜いた。

 拭き取り時、カメや指にトイレットペーパーが付着するわけだが、そこはプロ。人差し指を一旦唾で湿らせて擦り取り、キチンと除去する。高校生ぶりだったから約10年経っていたが、腕は鈍っていなかったようだ。ただの一欠片すら残すことは無くパンツとズボンを上げた。


 会社から帰ると部屋で、風呂場で、便所で狂ったようにシゴキまくる。

 合コンの時陥ったセンズ●中毒再び!

 中毒は以前のように直前まで続くこととなった。


 当日。

 ワクワクし、チン先をぬめらせ、ニヤケながら(無意識)待ち合わせ場所で待つ…のだが、時間になってもそれらしき人は現れない。


 ―――あれ?時間とか日にち、間違ってないよね?―――


 ポケットから電話を取出しカレンダーを確認するけど、ちゃんと今日で合っている。


 ―――途中、事故に巻き込まれたとか?―――


 有り得ない話ではないから引き続き待つことに。


 が、しかし。


 いくら待ってもそれらしき人は現れない。

 三時間ほど過ぎた頃、電話が鳴った。

 画面を見ると、紹介してくれた上司の名前。

 何ごとかと思いつつ出てみると、


「相手の人、急きょ用事で来れんくなった。」


 だそうで。

 少しがっかりしつつも、帰ることにした。



 紹介された女性目線では以下のとおり。

 待ち合わせ場所に到着すると、それらしき人が立っている。


 ―――あ…あの人かな?―――


 近付きながら顔を確認すると、


 ―――え?えぇ~~~…気持ち悪っ!―――


 この世のモノとは思えないニヤケ顔だった。

 どう少なく見積もっても犯罪者にしか見えない。


 ―――この人間と今から二人っきりで食事?無理!無理無理無理!生理的に受け付けん!帰ろ。―――


「会う」という選択肢なんか一切ない。

 独断で帰ることに決めたのだった。

 帰り着いたものの、紹介してくれた人に対してのみ申し訳なさがハンパなくて電話できずにいた。しばらく悩み抜いた挙句、ようやく電話。案の定ものすごく怒られたけど、こればかりは生理的に受け付けないモノだからどうしようもない。意見を押し通し、納得してもらったのだった。


 このあまりにも激しい拒絶っぷりを直接電話口で聞いた上司は、


 ―――あの反応が正常やんね~。本人には言えんけどね。顔があんなんじゃ、な~…オレが彼女の立場やったとしても、やっぱ同じ行動を取るやろうしな。―――


 妙に納得してしまい、本人にホントの理由は伝えず闇の中に葬り去ったのだった。




 それからしばらくして別の上司から紹介される。

 セッティングされた場所で待っていると、


「すいません。○○さんですか?」


 名前を呼ばれた。

 弾かれたように顔を上げると…ごくごく普通で大人しそうな見た目の女性が立っていた。


「はい!そうです!!」


 いやらしい笑顔全開(無意識)で返事をすると、


 ―――うっわ~…コイツ気持ち悪っ!―――


 危なく声に出しそうになる。でも彼女は前回の人よりオトナの考えをできるらしく、その場で帰るようなことは無かった。


 適当な店に入り、酒ありの食事をするのだが…絶望的に低いコミュニケーション能力と、見た目通り大人しい相手の相乗効果で何一つ盛り上がらない。


 それだけならまだしも。


 彼女の胸の辺りを重点的に舐め回すようにしつこくしつこく凝視してしまっていた。

 もちろん無意識のうちに。

 あまりにも不快な視線に表情が歪む。

 その表情の意味が理解できない自分は、


 ―――なんでこの人イヤそうな顔するんやろ?―――


 尚も胸を凝視しつつ、とてもアホな疑問を抱いていた。

 通夜のように静まり返る場。

 無言の時間は過ぎてゆく。


 そして。


 ついに不快極まりない視線に耐えきれなくなった彼女はまだ20時にもなってない(店に入ったのは19:30)というのに、


「もう遅いし、門限があるからこの辺でお開きにしましょう。」


 苦笑しながら不自然な言い訳をすると、こちらの返事も聞かずに立ち上がる。


 ―――え?遅いっち…まだ店入って30分も経ってないよ?―――


 おかしいと思ったが、彼女はもう帰ることしか頭の中に無いらしく、


「払っときますね。」


 一方的に言い放つと、自分をその場に置き去りにし振り返ることもなく伝票を持って逃げるように去って行った。



 後日。

 上司がやってきて、やや厳しめの口調で、


「ちょー来てん!」


 呼び出された。

 ついて行くとそこは小会議室。

 一緒に中に入るとイラついた口調で


「そこに座れ。」


 真ん中に空間を開け四角に置かれた長テーブルの角のイスに座らせられる。

 角を挟み、隣に座った上司は、


 は~~~~~…


 特大のタメ息を一つ吐き、


「お前ねぇ…ホント、いい加減にしとけよ?」


 怒られている意味が分からない自分は、


「え…え?」


 オロオロするばかり。


「その反応を見る限り、なんで呼び出されたか分かってないみたいやの。」


「え…あ…はい。」


 正直に返事をすると、


「あんの…相手の人からちかっぱい文句言われたったいね。」 訳:あのね。相手の人からものすごく文句言われたんだよね


 だそうで。


 ―――え?文句っち何?オレ、ほとんどしゃべってないよ?―――


 意味不明なコトを言われ混乱していると、


「お前、ずっと相手の人の胸ばっかり見てニヤケよったらしいやんか!」


 ズバリその原因をおしえられた。

 が、しかし、そのようなことはした覚えがないので、


「そげなコトしてませんよ?」


 当然の如く反論。

 すると。


「それがしよるったい。今まで言う機会が無かったっちゃけど、会社の飲み会でお前んトコだけ事務員さん寄り付かんっち、気付かんやった?」


 そういえば!


 入社してこの方、女性の事務員さんと会話を交わしたことが無かった。とても愛想が良く、部門とか年齢関係なく楽しげに会話している光景をよく見るのに、である。

 上司の言葉を聞いてこれまで疑問に思っていたことが一気に解決した。

 立て続けに、


「それが全く同じ理由。目線がちかっぱいキモいっち言われよるんぞ?マジ、セクハラで訴えられてもおかしくないレベルやきの?事務員さん、かなり怒っとるし。」


 ショッキングな事実を突き付けられた。


 ―――え?そこまで?―――


 一言もしゃべったことのない事務員さんの胸ばっかり凝視して怒らせ、訴えられる寸前にまでなっていたとは…。


 もし次があるのならば、意識して見ないようにしようと心に誓ったのだった。




 そして次の機会はやってくる。


 でも。


 一度、会話が無く盛り上がらなかったことを踏まえ、積極的に喋ることを意識したまではよかったが、この大事な場面でやっぱり男子校の後遺症が炸裂する。

 ウケを狙うために放った渾身の下ネタ&下品ネタが見事なまでに大滑りしたのだ。

 例えばゲップ。

 以前と同じく一口食う度、飲むたび、


「あ゛~~~っ!」


 ブチかます。

 唖然とする彼女。

 しかし、どうにか笑ってごまかした。

 これをウケているモノと盛大に勘違いした自分はさらなる高みへと昇ってゆく。


 ゲップの次は屁。

 静かになったタイミングで片ケツを上げ、


 ぷぅ~~~。


 なるべく長く音が続くように力を調節しつつ放出する。

 直後襲い来る強烈な硫化水素臭。

 あからさまに顔を歪める彼女。

 しかしこれも何とか笑ってごまかした。

 なのに、これもまたウケたと勘違いし、どんどんエスカレートしてゆく。


 パンツの中に手を突っ込み、肛門を人差し指でほじくって、


「こぉ!匂ってん?」


 彼女の鼻の方へと差し出した。

 反射的に後ずさり、顔を背け、


「もう!たいがいで止めて!」


 流石に怒られた。


「ごめんなさい。」


 謝ったものの、しばらくするとまたもや調子に乗ってしまう。

 今度は皮を剥いてカリ首部分に溜まった●ンカスを指につけ、無言で彼女の鼻へと差し出す。

 思わぬ行動に避けるのが遅れた彼女。まともに嗅いでしまい悪臭に顔を歪ませ、ついに堪忍袋の緒が切れて、


「おい、きさん!たいがいにせなぶち殺っしまうぞ!」 訳:おい、貴様!


 大激怒され、立ち去られてしまう。

 大声で怒鳴られたため、周囲からの視線が激痛だ。

 調子こいて頼んでいた料理がこの後一気に出来上がる。

 テーブルの上にはおびただしい量の皿が並ぶ。とてもじゃないが一人で食べきれる量じゃない。

 大半の料理に箸を付けることなく帰ることになった。


 後日、上司に苦情の電話が入る。

 当然のことながらこっ酷く怒られた。




 しばらくすると別の上司からも紹介されるものの…結果は同じ。


 こういった紹介は続くときには続くもの。

 しかしセックスしたさに会っていることが見え見えで、一向に進展する気配がない。

 10回目の紹介を断られた後、上司からまたもや帰りに呼び出され、


「お前ね、初めて会う人になんでそげん下ネタやら下品なネタぶちかますわけ?ものっすご苦情来よるんぞ?」


 二時間の説教。


 大ウケにウケたと思っていたのはどうやら自分だけだったようだ。



 今度こそは!


 と気合を入れ、次の紹介では下ネタや下品ネタを我慢して挑んだのだが、全く会話が続かない。聞かれたことに対して「はい」か「いいえ」の返事をするのみ。


 結果は当然の如く失敗。


 そのようなことが数回続いたとき、


「お前、胸と股とケツばっか見よろ?相手からものすご苦情来たぞ!」


 またもや以前のクセが再発して説教。

 あれだけ怒られたというのに全然直っていなかった。

 ここまでくるともはや病気である。

 我ながら呆れ果ててしまう。


 それからも意識して臨むのだけど、忘れるたびに凝視しているのでやはり同様の苦情ばかり上がってくる。

 こんなことが続き、ついには紹介されなくなってしまった。


 それでも心ある同僚というものがいて、心配して紹介してくれる。その人のためにも「是非ともどうにかしたい」と思い臨んでいるのだけど…結果はいつも同じ。

 ものすごく怒られ、愛想を尽かされた。


 会社に入ってまでもボッチとは…。


 ―――いったいオレ、何しよるっちゃろ?―――


 泣きたくなってきた。

 ようやく女性から嫌われる原因が分かったのに直すことができない。

 完全に手遅れである。




 ならば、金に頼るしかない!


 幸いなことに無駄遣いするクセはない。

 有料の結婚相談所に登録することにした。

 まではよかったのだがハナシが全く先に進まない。誰からも選んでもらえないし、選んでも拒否られるから進まないのだ。

 原因は写真。

 誰がどう見ても、幼女に性的悪戯をして逮捕された犯人である。

 結局一度も紹介されることは無く、金だけが減ってゆく。あまりにも勿体無かったため退会することにした。


 只今30歳を過ぎたトコロ。


 未だ、「彼女」と呼べる人は現れない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る