第22話 後遺症(合コン編)

 大学にもだいぶ慣れてきた11月半ば。

 初めて「合コン」なるものに誘われた。



 朝、教室で駄弁っていると、いつもつるんでいるヤツが合流するなり、


「今度の金曜、女子大行った高校ん時の友達から『合コンしようや!男集めてきて!』っち頼まれてからくさ。お前ら、勿論来るやろ?」


 と、言ってきた


 合コン


 なんて甘美な響きなのだろう。


 自分には一生縁がないと思っていた素敵ワード。

 耳にしただけで爆発的に上がるテンション。


 反対する理由なんか、何一つ、これっぽっちも、微塵もあるワケが無い。


「行く行く!」


「大賛成!」


 と、歓声を上げる友達に便乗し、ニヤッと気持ち悪い笑顔でうなずく。

 その笑顔に対し、


「お前、その笑顔、危な過ぎ!モロ犯罪者やし!」


 ツッコみつつも、一撃で決まったため、


「おっしゃ!なら、そげなふうに伝えとくぞ!」


 張り切る友達。

 その日のうちに日時と店が決まり、連絡が入った。


 具体的なところが決まると、ますます現実味を帯びてくる。


 それにしても。


 中学生以来ぶりの女子との接近(満員電車は除く)だ。

 といったことを思い出し、いまだかつてない大きな喜びを感じ始めていた。

 改めて


 ―――オネイサンとお友達になれるかも!―――


 喜びを噛みしめたとき、早くもカウパーが滲んだ。

 一旦滲みだすと、とめどなく溢れ出てくる。

 満員電車で巨乳なオネイサンがくっついた時以来の激しい漏れっぷりだ。

 おかげさまで、歩くとカメの出入り口がヌルヌルになり、中途半端に頭を出したカメが毛を巻き込みまくる。

 痛くて変な歩き方になるため休み時間の度うんこ便所にこもり、皮を剥いて毛を解放し、チン先を拭きながら、


「女が絡むとここまで漏れるんやな。」


 こんな言葉がとってもナチュラルに口からこぼれ出た。


 新たに知った体の不思議。


 この日、皮剥き汁拭き作業は学校にいる間中続いた。

 チン●が勃起し過ぎて、タマ●ンが痛くなり、連鎖的に下腹部も痛くなってくる。

 先っぽがパンツに擦れる度快感が直撃し、腰が前後に数度痙攣する。


 我慢の限界も近いようなので、可及的速やかに家に帰る。


 帰宅したからといって漏えいの勢いは衰えるわけではない。

 それどころか増す一方だ。

 部屋に入るとズボンもパンツもソッコー脱ぎ捨てシゴキまくる。

 が、しかし。

 一度や二度ヌイたところでムラムラは収まらない。

 賢者タイムも異常なまでに短くてインターバルは5~10分といったトコロ。

 部屋にいる間中ヌイても収まらなくて、風呂場でもヌキまくる。風呂の時間が長過ぎた上に風呂場がイカ臭かったせいで、両親からオニのよーに怒られた。

 飯の時間はなんとか我慢したが、それすらも苦しかったため早めに切り上げ部屋に戻ってまたヌキまくる。

 この日、自分史上最大の発射回数を記録したのは言うまでもない。



 次の日。

 擦り過ぎて有り得ないほど肉棒が痛い。

 まるで筋肉痛のようだ。

 歩くのさえままならない。

 それからも異常なほどにヌキまくったせいで、カメがいつもよりはるかに小さくなってしまい、毛を巻き込む回数が極端に増える。

 汁は薄くなったため粘性が低く、透明に近い。とてもよく飛ぶが、少ししか出なくなってしまっていた。

 生まれて初めての経験だ。

 このセンズ●中毒状態は合コン当日まで続いた。




 当日。

 酒を飲む(警告!お酒は二十歳になってから!ちなみに二人は浪人しているから飲める)から、公共の交通機関を使用する…のだが。

 カウパーは依然漏れっぱで、パンツの中がエライことになっていた。

 店の最寄りの駅に着くと、すぐにうんこ便所へとダッシュして●ンポを剥き、毛を解放し、丁寧に拭き取った。が、いくら拭いても全く収まる気配がない。待ち合わせの時間が近づいてきたため、諦めて待ち合わせ場所へと向かうことにした。

 この時ばかりは、冗談抜きで成人用おむつを穿いてくればよかったと思った。


 友達と合流すると、


「お前…なしそのカッコなん?女の子と会うんぞ?なんぼなんでもそれは失礼やろ!」


 本気で呆れられた。というのも、またもや高校の時と同じ、いろんな染みが付いたスウェット+破れて綿の出たドテラで来てしまっているからだ。

 近寄ると唾を乾かしたような、イヤ~な匂いが漂っている。

 あの時幼馴染から散々ダメ出しされたのに、その意味が全く分かってなかった。


 今更服を買う時間なんかない。というか、そもそもそこまで金の余裕はないから諦めて、できるだけ他人のふりをしながら指定された居酒屋へと向かう。


 店に入ると、座敷に案内される。

 待っていると、


「ごめ~ん!遅くなった!」


 何分も待たずにかわいらしい声。


 女子登場!


 戸を開け合流した瞬間…あんまりな姿を目にして絶句する女の子たち。

 有り得ない汚さと匂いに女子全員が顔をしかめる。

 中には帰ろうとしている子もいる。

 それをなんとか引き止め宥めるオトコ友達。

 モーレツに女友達に謝っていた。

 どうにかその場は治まり、乾杯。そしておしゃべりタイムに突入するワケだが、案の定自分には誰も話しかけてこない。

 視線すら向けてこないからそこだけ誰もいないかのようである。


 酷く孤独を感じる。


 自分を除く全員はサイコーに盛り上がっているというのに。

 邪魔者扱いされ、いつの間にかテーブルの隅に追いやられて気付けばただただひたすら飲み食いに徹する羽目になっていた。

 

 お友達になる以前の問題だ。


 この場はお開きにして店を出ると、ごく自然に「二次会行こーや」の流れになる。

 自分を除く全員は超絶いい雰囲気。一人余った女の子はいちばんのイケメンを奪いあっている。


 流石にこの集団の中で楽しむメンタルの強さは持ち合わせていないから、演技。

 ポケットから電話を取り出し、掛かってきてもないのにやり取りをするフリ。

 通話が終わったフリをしてポケットに電話をしまうと、


「今、家から電話があって。用事があるみたいやき、先帰るね。」


 ウソをついた。

 この言葉を聞いてあからさまに喜ぶ女子。


 集団から外れ、駅方向へと歩き始める。

 とはいえ女子がいるこの状況に未練が無いワケではない。というか、逆に未練タラッタラだ。

 引き留められるコトをモーレツに期待している、のだが…

 友達からかけられた言葉は、


「そう?んじゃ、バイバイ!」


「気を付けて。」


「また学校で。」


 まさかの肯定。

 しかも心なしか明るい声。

 女の子にいたっては声すらかけてくれない。というか見向きもしてくれない。

 完全にいない者扱いである。


 ―――オレの存在っち…―――


 酷く悲しい気分になってきた。

 明らかに自業自得であるにも関わらず、


 ―――なんで相手にしてもらえんっちゃろ?そっか!相性が悪かっただけやな。―――


 やっぱし相手のせいにしている。

 あれだけダメ出しされたのに、何が悪かったのか全く気づけない自分…致命的に重症だ。



 離脱したあと。

 合コンに誘った男は、


「ねぇっちゃ。アレ、何なん?あげなカッコしてきて。もしかして、ウチらバカにされちょーん?」


 女友達から責められていた。


「いや、女の子おるっちゃき、いつものカッコで来るとか思いもせんやった。」

 訳:女の子いるんだから~思いもしなかった。


 ありのままを伝えると、


「はぁ?アレ、大学にもあのカッコで行きよるっちコト?」


 マジで驚かれ呆れられた。


「そーばい。でも、女の子来るっち分かっちょーし、でったん喜びよったき、まさかあげなカッコで来るとか思わんやん?」


「マジでか…。」


 あまりの残念さに言葉を失ってしまっていた。


 これを機に、途中退場した気持ち悪い人間については誰も触れなくなった。そしてすぐに別の話題で盛り上がりだし、最終的には次回の約束までできたのだった。

 別れ際。


「次はアレ、ゼッテー連れて来んでね?もし連れて来たらその時点で即解散やきね?」


 キツく念を押された。

 勿論約束は守る。

 別の友達を連れて行ったおかげで一人余った女の子にも相方ができ、今では楽しい日々を送っている。




 といったこともあり、実験で仲良くなった集団からは二度と誘われなくなったワケだが、しばらくすると、


「合コンのメンバー足りてなくて。来ない?」


 別ルートからのお誘いが!

 勿論断る理由なんかこれっぽっちもない。

 ソッコーOKする。

 誘われた日から合コン当日までは、前回と同様激しくカウパーが漏えいし、しごく回数が極端に増え、やっぱし●ンポが痛くなった。


 当日。

 駅で合流する。

 男は5人。

 服装は前もってキツく言われていたので、ダサくはあるけどダメ出しは無かった。


 予約した居酒屋に入ると個室に案内された。

 待っていると、4人の女の子が入ってくる。

 あまりの嬉しさで本能が爆発。

 胸や股間やケツを舐め回すかの如く凝視してしまっていた。こういった不快な視線は自分じゃ気付かれてないと思っていてもソッコー気付かれる。

 あからさまに嫌な顔をする女の子たち。

 それでも他の4人の男は顔面のレベルが高いので我慢する。


 席に着き、自己紹介からの~、


「「「「乾杯!」」」」


 を合図に徐々に盛り上がってゆく。


 が、しかし。


 またもや孤立していた。

 原因は先ほどの気持ち悪い視線によるものなのだが、気付かれたことに気付いちゃいないから、


 ―――あっれ~…なんでオレだけ喋りかけてもらえんの?また相性悪いとか?―――


 超絶的外れな答えに辿り着き、納得していた。

 それでもこの日のお姉さま方はオトナだったようで。

 極々たま~に、


「これ、おいしいね。」


 とか、


「飲んでる?」


 とか、


「楽しんでる?」


 とか、お情けで声をかけてくれる。

 でも、それだけ。

 ここから会話を発展させるスキルなんか持ち合わせちゃいない。というか、たとえ持っていたとしても、第一印象が最悪だったため、会話を拒否られていたので発展とか有り得ないのだが。


 結局また黙々と飲み食いするだけで終わってしまった。


 人間はいるのに強烈な孤独感。

 なんだか涙が出そうになってきた。


 帰りがけ、女子と別れた後。

 イヤラシイ視線に気づいてない男友達は、


「お前、大人し過ぎ。次からはもうちょっと喋ろうね。」


 的なことを言ってくる。

 原因に気づけない哀れな自分はたしかにそうだと思った。

 だから、


 次こそは!


 オネイサンとお友達になりたい一心で、気合いを入れるのだが…このグループでも「次」が行われることは無かった。というのも、ヤラシイ視線に対しての苦情が女の子全員から出たからだ。

 当然このような「ホントの理由」は本人には伝えられるワケもなく。


 自分じゃ気づけないので、今なお(20代半ば)この悪癖は続行中。

 それが分かるようになるのは社会人になり、しばらく経ってからのお話。




 それからまた何か月か経ったある日。

 念願の「次」に誘われるコトとなる。

 誘ってくれたのはまたさらに別のグループ。


 ―――今度こそちゃんと会話してお友達にならなくては!―――


 意気込んで挑んだ三度目の合コン。

 服のダメ出しは今回もなかった。今のところ大成功だ!


 予約した居酒屋に入ると個室へと案内された。

 待っていると、女子が合流する。


 乾杯と自己紹介が終わり、時間の経過と共に打ち解けあっていく。

 自分はというと。

 しばらくは人見知りで大人しかったのだけど、それでもアルコールの力を借りて一生懸命頑張った。が、その努力は最悪な結果を招くことになる。

 正直、男子校の後遺症がここまで酷いとは思いもしなかった。


 というワケで、まずはゲップ。

 何か一口食う度、飲む度、


 あ゛~~~ッ!


 ぶっ放す。

 最初の何発かは笑ってくれていたのだが、それが苦笑であることには全く気付けず、調子に乗り過ぎてしまう。


 タダのゲップじゃイマイチインパクトが弱いと判断し、ゲップで「アイウエオ」を披露。

 ビールを飲んで、


「あ゛、い゛、う゛、え゛、お゛」


 大満足かつ得意げな顔。

 あからさまに女子の表情からは嫌悪が読み取れるのに、それには全く気付けない。


 痛々しさは治っちゃいない。

 むしろ悪化している!


 その後もウケているものと盛大に勘違いし、ゲップ芸を続けていると、見かねた友達からついに、


「キタネーちゃ!いい加減それ止めれ!」


 絶対零度の表情でダメ出しされてしまう。

 ビックリして一瞬で大人しくなる。


 が。


 しばらく大人しくしていたものの、やっぱしあの時(=幼馴染と絶交された時)と同じことを繰り返す。


 ほとぼりが冷めた頃。


 今度は屁。


 一瞬静かになったタイミングで片ケツを上げ、


 ぷぅ~~~。


 出来るだけ長めに放出する。

 突然の出来事に唖然とする女の子たち。

 表情には明らかな嫌悪が読み取れる。

 数秒のタイムラグの後、襲い来る激しい硫化水素臭。

 隣の個室から、


「コンロ、ガス漏れてない?店員に聞いてみようや。」


 そんな声が聞こえてくるほどに、酷い。

 自分らの個室は卵の腐ったような匂いで満たされてしまっていた。

 これを何度も何度も繰り返していると。

 我慢できなくなったヤツからついに、


「お前、今、飯食いよるの分からんのか?」


 キツイ口調でダメ出し。

 思わずビビり上がって


「ご…ゴメン。」


 謝り、黙ってしまう。



 しかし、やっぱり時間が経つにつれ、調子に乗ってくる。そして、やっぱりはしゃぎ過ぎる。


 茶褐色した料理の汁を口拭き用に置いてあったティッシュで拭き取り、


「ケツ拭いた後のちり紙!」


 テーブルの上に置き、ドヤ顔。

 すると、


「うわっ!もぉ~…やめてよ。てゆーか、そーゆーこと食事中にやる?」


 苦笑された。

 注意されているのに、やっぱしウケているのと勘違い。


 さらにウケを狙うため、噛んでドロドロになったものを、


「こー!見てん?あ~。」


 口を開け、見せる。

 すると、


「うわ!もぉ~…。」


 この個室にいる全員の表情が凍りついた。

 続けざまに。

 口を締め、唇だけ開いて歯をむき出しにすると、その隙間から、


 ヂュル…ヂュル…ヂュル…


 ドロドロを出す。

 出した瞬間、誘ってくれたオトコからは、


「おい!いい加減にしろよ!」


 ものすごく怒られ、別のオトコからは、


「お前、いらん。今すぐ帰れ!」


 ネコのように首根っこを掴まれ、強制的に部屋の外へと追い出された。

 呆然と立ち竦む自分。

 そんなヤツには目もくれず、個室の中にいる者だけで楽しい時間が始まった。

 戻ろうとすると、


「くんな!」


「帰れ!」


 激しい拒絶。

 戻れない。

 どうしようもなくなって帰ろうとすると、


「おい!タダ食いすんな!金だけは置いて行け!」


 強引にむしりとられた。


 後から聞いた話によると、この合コンは大失敗に終わったらしく、モーレツな恨みを買った。

 以来、そのグループからも二度と誘われなくなった。というか、また絶交されてしまった。


 やらかしたハナシはクラス中にソッコー回ったらしく、この後も合コンは頻繁に行われているのだが、自分だけ二度と声が掛からなくなってしまったのだった。


 男子校の後遺症がこんなところで関わってくるとは。


 とか、男子校のせいにしているが、純粋に自業自得なのだけど。

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