第20話 大学生

 辛うじて大学生になることができたというワケで、今日は入学式。


 学校に到着すると体育館へ。

 入口には受付があり、そこで出欠の確認をする。

 ドアを開け、中に入るとステージ側に学科名の書かれたボードが立ててある。

 自分の学科の列の折りたたみパイプ椅子に座る。


 そして、まず女子の人数を確認した!


 少し、否、モーレツに期待して、舐め回すように変態的に同じ列を何度も何度も見る、ものの…


 ―――あれ?全然おらんくない?―――


 オトコだけしかいない…ように見える。


 ―――まだ到着してないだけよね?―――


 良い方に考えようとしている自分がいる。

 がしかし、いくら待ってもこの列に女子は現れない。


 ―――既に座っちょーとか?―――


 認めたくない。

 必死にいる方向で考えているのだが…キッチリ人数分用意されているイスは、式の開始時間が近づくにつれ、無情にもオトコによって埋め尽くされていく。

 そして。

 式が始まる頃にはすべての席が満たされていた。が、この列に女の子っぽい髪型の人間は一人もいない。

 それでも、


 ―――ボーイッシュな髪型かもしれんし!―――


 意地で認めようとしない。

 身体が本能的に現実を拒絶している。


 ―――この後、教室に入ったら名前呼ばれるやろーき、そん時にわかるよね?絶対におるはず!―――


 認めない!

 何が何でも認めない。




 よその科の女子も気になるトコロなので、しっかりとチェックする。

 体育館全体を舐め回すように見てみると…


 ―――おった!―――


 建築科デザインコースに3人と、電気科電子情報コースと土木科に1人ずつ。

 劇的に上がるテンション。

 存在だけで自動的にカウパーが滲み出る。

 チン先がヌルッとして、パンツがヒヤッとした。

 そして、皮が毛を巻き込んだ。

 満員電車以来、久しぶりの痛みを我慢しながら、


 ―――他には?―――


 さらによく探す。

 穴がホゲる(=穴が開く)ほどに。

 しかし。

 いくら頑張って悪い目を凝らしてみても、この5人だけしか確認できなかった。

 もう少しいると思っていたのに、かなりガッカリだ。


 ガッカリ気分の中、式が始まる。

 中学や高校の時と大差ない流れ。

 退屈な時間を乗り切ると、各科、指定された教室へと向かう。


 教室に入ると、五人掛けの長机。

 背もたれが後ろの長机に固定され、座面が跳ねあげられるタイプのイス。


 ―――おー、なんか大学っぽい!―――


 ま、大学なのだけど。



 次々と埋まってゆく席。

 でも。

 どう見てもオトコしかいない。間違いようがないくらいに。

 それでも、


 ―――スーツ、スカートじゃない女子おるかもやし。―――


 意地で認めない。

 しばらく待つと、学科長が入ってきて出欠を取る。


 ―――これでホントに女の子おらんのかどうかが分かる!―――


 超猛烈に期待する、が。

 どう転んでも間違えようのないくらい、オトコらしい名前の人間しかいない。

 滞りなく出欠の確認完了。


 ―――完全に終わった…。いちばん女子が多い学科選んだはずなのに、なんで?―――


 納得いかない。

 金返せ!と叫びそうになる。

 直後、自然と涙が溢れそうになった。


 心の底からガッカリした。またもや男子校である。


 気分を切り替え…たくは無かったけど、切り替え、よその科と上級生、これから入学してくるであろう下級生に期待することにした。


 …のだが。


 入学して一カ月が過ぎた頃。

 大学での生活にも慣れてくると、いろんなことが見えてきだす。

 すると、知りたくもないことまで知ってしまうコトになる。

 具体的には…

 他の学年や他の学科は、クラブ活動でもしてない限りキャンパス内では遭遇しないということ。

 クラスの人間以外はハッキリ言って別の学校と同じなのだ。

 小規模な単科大学だから敷地は狭く、学生数もその辺の県立高校程度しかいないクセに、この有り様である。


 こんなんじゃ、女子とお知り合いになんかなれるワケがないやんか!


 気が狂いそうになる。


 ここまでくると、もはや呪われているといってもおかしくないレベルだ。

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