青い鳥は夜を駆ける4

「葵はさ、魔法少女って信じる…?」

恐る恐る要舞が葵へと問いかける。

唇や手は震えていた。

そんな震えた手で、強く葵の手を握りしめる。

否定されることが怖かった。

強く瞳を瞑る。

そんな要舞の姿に葵はそっか、と穏やかに笑う。

君も魔法少女だったんだね。

心の中で呟いた。

大丈夫だよと安心させようと、しっかりと彼の手を握りしめ返す。

コツン、と額と額を合わせた。

「うん、信じるよ。

大切な友達の事だもの。信用しないはずがないじゃない。

怖くないよ、安心して要舞くん。君の全部を受け止めるって約束したでしょう?

だからそんなに怖がらないで」

大丈夫だよと言うように空いた方の手で優しく彼の頭を撫でる。

頭を撫でられれば頬を緩めた。

「うん…ありがとう葵」

小さく頷けば撫でる手に安堵の息を吐いた。

撫でる手に擦り寄る。

「どういたしまして。それで、魔法少女がどうしたのかな」

葵が優しく問いかける。

その言葉に口をモゴモゴさせつつも言葉を紡いだ。

「え、とね…信じられないかもしれないけどさ、僕、その…魔法少女なんだよね」

やっぱり、と心の中で呟いた。

深呼吸すれば、再び優しく問いかける。

「そうなんだね。魔法少女なんだ」

知らなかったと葵は笑う。

その言葉に要舞がこくこく、と首を縦に頷いた。

「う、うん。魔法少女、なんだよね…今は訳あって変身できないんだけど、でも、確かに魔法少女なんだ」

心配そうに葵を見上げる。

大丈夫だよと言うように頭を撫で続けた。

そっか、と葵は知らないフリをして頷く。

「うんうん。なんで要舞君は魔法少女になったの?」

その言葉に要舞は強く葵の手を握りしめる。

先程まで逸らしていた視線を葵へと戻せば、強い眼差しで葵を見つめた。

そしてゆっくりと口を開く。

「『自分だけを見てくれる大切な人が欲しい』って願ったんだ」

葵の手を包み込むように握りしめる。

こちらへと引き寄せればそっと彼の指先へと唇を落とした。

「葵………君は僕を見てくれる……?」

今にも泣きそうなのか顔を歪ませる。

葵は要舞を見つめ返した。

急に、ぷつ、と音を立てて電気が消える。

月の光だけが二人を照らしていた。

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