青い鳥は夜を駆ける3

談話室から、なるべくうるさくしないように要舞の部屋へと来た。

どうぞと要舞が部屋の扉を開ける。

葵は、彼の部屋へと足を踏み入れた。

薄暗い部屋。

部屋を見渡してみれば床に雑誌や本、楽譜などが山のように積まれている様に見える。

衣服らしいものが散乱していた。

要舞がパチ、と音を立てて電気を付ける。

部屋の散らかりようが顕になった。

思わずその場に硬直する葵に、要舞は苦笑いをする。

「ごめん、散らかってるね。今、少し片付けるから適当に座ってて」

そう言いながら、昨日着ていたであろう脱ぎ捨ててある洗濯物を拾う。

「う、うん」

葵が頷けばどこに座ろうかと辺りを見渡した。

少しだけ、床と床の間に空間を見つければ、ものを踏まないようにゆっくりと座り込む。

そんな葵を要舞は信じられないものを見るような瞳で見つめた。

「どこ座ってんの!?!?」

その言葉に葵が戸惑った様に要舞を見つめた。

「え…床…だよ…?」

何か変だったかなと首を傾げる葵。

すぐさま葵の腕を掴んで立たせれば勉強机の前にあった椅子を持ってくる。

寝台の傍へと置いた。

葵を椅子の上へと座らせる。

「ここにいて、床汚いから」

その言葉に葵がそうだねと苦笑いした。

いそいそと部屋のものを隅に寄せる要舞。

片付けが苦手な人の片付け方だなぁとぼんやりと見つめた。

思わず大丈夫か心配になる。

「う、うん。部屋片付けるの手伝わなくて大丈夫…?」

腰を上げて立とうとすれば、要舞にストップと止められた。

「いい、大丈夫。客人にそんなことはさせれないよ」

だから、ちょっと待ってて。

急いで脱ぎ捨てられた洗濯物をぐるぐると一つに丸めれば扉の前へと置いた。

明日洗濯物に出すのかなぁとぼんやりと葵は要舞を見つめる。

こちらの視線に気づいたのか、要舞が振り返った。

「その…部屋……き、汚くてごめんね……」

申し訳なさそうに要舞が眉を下げる。

そんな彼の姿に葵が首を横に振った。

「気にしないで。今度片付け手伝わせて欲しいかな。僕、片付け得意なんだ」

ふふん、と得意げに胸を張れば、そんな彼の姿に要舞が笑う。

「ふは、強いね葵。じゃあ、今度頼もうかな」

そう笑いつつも葵の隣。寝台へと座り込んではよろしくねと要舞は微笑む。

「勿論だよ。任せて」

葵はトントン、と己の胸を叩けば得意げに笑った。




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